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例)研究発表 生命科学科
[2007/02/08]
◇脳梗塞発症の遺伝子を世界で初めて発見―久山町研究班が快挙

生活習慣病の一つ脳梗塞を発症させる遺伝子が、九大の久山町研究斑を中心にした研究チームによって発見され、このほどアメリカの専門誌ネイチャー・ジェネティックス電子版に掲載された。
約3万個あるといわれるヒトの遺伝子は、いずれも4つの塩基の配列からなるが、人によって配列が異なっているところがある。研究チームは脳梗塞の患者さん1126人と同数の久山町の健常人を比較して、違いの見られる遺伝子を12個絞り込んだ。そのうちの一つPRKCHを調べて、塩基のグアニン(G)がアデニン(A)と入れ替わっている部分(一塩基多型、SNP)に注目した。この多型によってヒトはAA、GG、GAの3タイプに分けられるが、脳梗塞の患者さんにはAを持つ人が健常人に比べて1.7倍多かった。さらにこの遺伝子タイプが脳梗塞発症の危険因子になるのか否かを検討するために、1988年の久山町の住民健診で脳卒中のなかった1642人について、その後14年間にわたって脳梗塞発症率とこの遺伝子との関係を調べた。するとAAタイプの遺伝子の人は、GGの人よりも2.8倍も発症率が高かった。PRKCH遺伝子はプロテインキナーゼCエータ(PKCη)というたんぱく質を作るが、その働きはこれまで不明であった。しかし今回の研究で、AAの人は他よりもPKCηの活性が1.6倍高く、活性化されると動脈硬化がより進むことが明らかとなった。以上のことからPRKCH遺伝子が脳梗塞の発症に関わっており、とりわけAAタイプの関与が大きい事が判明した。
久山町研究は、1961年から脳卒中(脳出血、脳梗塞など)の実態解明と予防を目的として始まった疫学調査である。現在は生活習慣病全般にテーマが広がり、健診率や追跡率の高さ、研究の精度などから世界に誇る疫学調査となっている。主任研究員の清原裕教授(環境医学)は「生活習慣病の発症に関連する遺伝子が、疫学研究を基盤に発見できたことは大変意義が大きい」と話す。今後、PKCηの遺伝子多型が脳梗塞を起こすメカニズムを解明するとともに他の11個の関連遺伝子を分析し、さらに環境因子との関係について研究を進めて予防や治療法につなげたい、という。

<イラスト説明>PRKCH遺伝子が作るたんぱく質(PKCη)のタイプが異なると、脳梗塞の発症率が違っていた。
<参考論文>Michiaki Kubo, Jun Hata, Toshiharu Ninomiya, Koichi Matsuda, Koji Yonemoto, Toshiaki Nakano, Tomonaga Matsushita, Keiko Yamazaki, Yozo Ohnishi, Susumu Saito, Takanari Kitazono, Setsuro Ibayashi, Katsuo Sueishi, Mitsuo Iida, Yusuke Nakamura & Yutaka Kiyohara: A nonsynonymous SNP in PRKCH (protein kinase Cη) increases the risk of cerebral infarction  Nature Genetics 2007.1

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