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例)研究発表 生命科学科
[2006/11/30]
◇動物の臓器をヒトに移植する研究――九州大が開発した薬剤誘導性免疫寛容法

 提供される移植臓器の絶対不足が、昨今の臓器売買や無断臓器転用といった倫理問題を引き起こしている。臓器不足の根本的な解決策として、1960年代から他の動物の臓器を人間に移植可能とする研究の促進が期待されてきた。外国では人に近いチンパンジーやヒヒを使った臨床例もすでにあるが、臓器のサイズや生理機能が人間に近いこと、確保数などから現在は、ブタから人への臓器移植の研究が中心だ。医学研究院の富田幸裕助教授(循環器外科)は、マウスを使った異種移植を20年間に渡って研究している。
 一般に臓器移植では必ず拒絶反応が起きる。これを防ぐ優れた免疫抑制剤が開発されてきた。ところが富田助教授によると、異種移植の場合は免疫抑制剤が効かず、超急性拒絶反応が起きて短時間で移植した臓器が死んでしまう。ブタやマウスなどが持つアルファガラクトース抗原に、人に備わっている自然抗体が反応するからだ。そこで富田助教授らは、薬剤誘導性免疫寛容という方法で、自然抗体の働きを抑えることにした。
 方法は、この抗原を持たないマウスを遺伝子組み換えによって作り、自然抗体を備えさせる。つまり人の代わりである。これに同抗原を持つマウスの脾臓細胞を移入して2日後、シクロフォスファミドという抗がん剤を注入した。超急性拒絶反応を引き起こす自然抗体を消失させることに見事に成功した。このことは、理論的にはブタの臓器移植に対して、人の自然抗体が超急性拒絶反応を起こさないことになる。今後は、さらに大きな動物で実験を積み重ねていく。実際の臨床までには、後から起きる慢性拒絶反応や感染症対応など、まだまだ多くの克服する課題がある。

<写真説明>
突然変異で産まれた免疫不全のマウスの背に、ブタの皮膚片を移植したが、マウスには免疫能をつかさどるT細胞・B細胞がないので異種移植片を拒絶しない。(1992年、富田助教授がハーバード大付属マサチューセッツ総合病院留学時代に、自ら移植した写真)

<参考論文〉
Shimizu I, Tomita Y, Iwai T, Kajiwara T, Okano S, Nomoto K, Tominaga R. 2006. Sequential analysis of anti-αGal natural antibody-producing B cells in αGalactosyltransferase knockout mice in cyclophosphamide-induced tolerance. Scand. J Immunol. 63: 435-43.

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