TOP > 研究成果情報 > 研究情報データベース > 詳細

研究情報データベース

キーワード検索
例)研究発表 生命科学科
[2006/11/07]
◇高齢化社会における脳卒中の予防

戦後長く日本人の死因の第1位を続けた脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血など)。厚生労働省によると、ピーク時には年間死亡者は約18万人を越えたが、昭和56年にがんに次ぐ2位、同60年からは心臓病に次ぐ3位に低下した。しかしいまだ年間15万人以上が亡くなり、最新のデータでは約270万人の患者がいると推定されている。死亡者数は減っても、逆に運動麻痺や知覚障害、長嶋名誉監督のような失語症などの後遺症に苦しむ人は増えている。医学研究院の井林雪郎助教授(病態機能内科学:脳血管内科)は「寝たきり老人の4割、認知症の約半分は脳卒中が原因」だという。高齢化社会がさらに進む中で、私たちはどう予防していけばいいのか。同助教授に登場願った。
脳出血の最大原因は今も昔も高血圧。日本人の高血圧症患者は約3500万人、その予備軍の高血圧前症が約4000万人で合わせて約7500万人。日本人の2人に1人だ。塩分摂取を控え、新規の降圧薬開発や普及により死亡率こそ低下したが、患者の絶対数はそれほど減ってはいない。130/80㎜Hg前後の血圧管理を守ることがこれからますます重要。脳梗塞は頸部や脳の動脈硬化が進んだ成れの果てで、脳卒中全体の8割を占める。糖尿病では頸動脈硬化や脳卒中になる危険性が男性で3倍、女性で2倍ともいわれ、とくに脳梗塞になりやすい(図参照)。脳血管性痴呆は、脳卒中の発作からだけでなく、高齢化に伴うアルツハイマー病(発見後100年経つ)との合併が原因になることも少なくない。運動(1日1万歩)に加えて、塩分(1日10g未満)や脂質(1g摂取で9kcalに相当、内臓脂肪の原因)の制限、肥満防止(ウエスト男性85cm、女性90cm以下)など、個々人が目標設定値を目指した生活により、肥満・高血圧・糖尿病・高脂血症などの動脈硬化に基づくメタボリックシンドロームを予防することが、脳卒中を防ぐことにつながる。
最近、一番のリスクである高血圧症に対する降圧治療で注目されているのはARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)という降圧薬。私たちの体内で、アンジオテンシンⅡというホルモンが血管を収縮させ血圧が上がる。ARBはその受容体の働きを抑えて血圧を下げる。ところがそれだけでなく、脳血流の増加・血管壁の構築や弾力性を回復させる作用、心臓の不整脈(とくに心房細動)や糖尿病の新規発症予防効果など、“生活習慣病の治療薬”としての新たな効能が次々に解明されつつある。
(ホームページ:http://www.med.kyushu-u.ac.jp/stroke/)

〈図表説明〉
糖尿病患者の脳梗塞発症率は、正常者に比べて男性が3倍、女性が2倍になっている。(福岡県久山町研究、1988-1996年の調査から)
〈参考論文〉藤島正敏:高齢者の心血管病 - 久山町研究から. 日老会誌36: 16-21, 1999 〉。
熊井康敬,井林雪郎:脳血管障害の発症危険因子-糖尿病の関与について-COMPLICATION-糖尿病と血管5:69-74, 2000。

ページの先頭へ戻る