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例)研究発表 生命科学科
[2006/09/27]
◇装用基準が見直された小児への人工内耳

 補聴器を使っても全く聞こえない高度難聴者の患者さんには、人工内耳の手術が施されている。電気信号に変換した音を、内耳に埋め込んだ電極が直接聴神経を刺激することで聴覚を取り戻す方法である。日本ではまだ装用者は4-5千人程度といわれる中で最近、小児への装用についての関心が高まっている。
 日本耳鼻咽喉科学会は、今年2月に小児への人工内耳の適応基準を見直した。従来は2歳以上18歳未満だったのを、1歳半以上とした。同時に術前、術後の「療育関係者の協力体制」を装用手術の前提条件に加えたのが特徴的。これについて医学部耳鼻咽喉科(小宗静男教授)の賀数康弘医師は、「これまでは小児に人工内耳を装用しても、成長に合わせた療育環境が十分ではない場合が見られたという反省に立つ」と説明する。
 外国では装用者の半数は小児が占めている。「日本ではまだ約30%と少ないが最近増えている」と賀数医師。人工内耳からは単純な電気刺激しか入ヘされない。小児がこれを音として認識し、言葉として理解するためには、医師、家族、言語聴覚士、教育関係者などのチームワークによる支援体制が左右する。早い時期の手術は言葉を習得させるだけでなく、潜在的に持つ能力を大きく育てていくことにつながる、とするのが積極派。言語習得期前の早い時期に装用することで、聴覚だけでなく視覚的な脳機能の発達が期待されるという研究報告もある。これに対して機能回復度合いや後遺症など手術自体への疑問、判断力のない子に親が代理決定する是非、将来MRI(磁気共鳴画像診断)を受けられない、などから消極的な考えもある。賀数医師によると、2000-2004年に九大病院で人工内耳の手術をした言語習得期前の小児は11人。1-2歳児、2-3歳児、3-4歳児にグループ分けした追跡研究では、1-2歳児の言語発達の伸びが一番良く、5年ほどの訓練で健聴児に近づいた例も。賀数医師は「手術決定はご両親の自律的な判断に委ねられる」と語る。

<イラスト説明>
人工内耳の仕組み=体外器のマイクが音を拾い、電気信号をスピーチプロセッサーに送る。音声信号となって、側頭部に植え込んだインプレッサに伝達され、内耳の電極から聴神経に伝わる。

<参考論文>
賀数康弘ほか.当科における小児人工内耳.耳鼻と臨床.2005年5月

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