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例)研究発表 生命科学科
[2006/08/07]
◇肺がん治療薬イレッサの臨床研究―分ってきた極めて有効な適用法

 がんの治療法は、手術して摘出する、抗がん剤を使う、放射線を照射する、という方法に加えて最近、分子レベルでがん細胞の性質を解明する研究が進み、「分子標的治療」が始まった。従来の治療法では悪い細胞だけでなく、正常細胞にも悪影響を及ぼしてきた。そこで悪いがん細胞だけを、選択的に攻撃する。それが分子標的治療だ。
 肺がん治療で、分子標的治療薬として開発されたイレッサがある。がん細胞の増殖過程はテレビにたとえるとわかりやすい。電波にあたる「細胞増殖因子」、アンテナにあたる「受容体」、スイッチにあたる「キナーゼ」、ブラウン管に映し出される映像ががんの増殖や転移に相当する。アンテナの下にあるスイッチを切ると映像は消える―つまりがんが消えることが期待される。このスイッテをオフにする薬が、イレッサだ。
 ところが、発売当初から不幸な副作用により大きな社会問題になった。しかしその後の研究で、条件を選べばより安全により効果的に使えることがわかってきた。現在日本では、手術が出来なかったり、抗がん剤が効かなかったり、再発生した人にだけ認められている。
 医学研究院の中西洋一教授(呼吸器内科)によると、これまで新たに分ってきたのは①アジア人②タバコを吸わない③女性④腺がん―という条件がそろった患者さんの場合は、有効率が約8割だそうだ。欧米人に比べてなぜ日本などアジア人に良く効くのか。アジア人での安全性はどうなのか。アジア各国が加盟する臨床試験IPASS(IRESSA Pan-Asian Study)に中西教授らも参加、さらに検証を始めている。
 中西教授が代表者のLOGIK(九州肺がん研究機構、66施設加盟)でも、独自の臨床試験を続けている。受容体に異常があって、スイッチがいつもオンの状態の人ががんになる。それなら受容体の遺伝子に変異がある人だけを見つけ、イレッサを投与すれば薬害を防げるのではないか―。既存の薬であっても、こうしたより安全で適切な使い方を見出す努力が、研究室では日夜続いている。

<イラスト説明>
分子標的治療のイメージ図。

<参考論文>
高山浩一、中西洋一 EGFR変異診断と個別化医療の可能性:臨床試験とその意義 分子呼吸器病、9:177-179,2005

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