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例)研究発表 生命科学科
[2006/04/04]
◇大腸発ガンは胆汁酸の生成量とかかわる―ゲノム疫学研究で初めて論証

 わが国では大腸ガンの増加傾向が脂肪摂取量の増加と相関しているとして、高脂肪食が大腸ガンの危険因子と考えられている。脂肪の消化・吸収に必要な胆汁酸は、肝臓で生成されて胆のうに一時的に蓄えられる。食物摂取の際に胆のうから排出され、腸管で腸内細菌によって二次胆汁酸に変換される。動物実験では二次胆汁酸に大腸ガン発生を促進する作用があることが知られている。だから脂肪の取りすぎは大腸ガンになりやすいのだ、とも言われる(図1)。
 しかし世界各地の疫学研究の結果は、脂肪と大腸ガンの関係に否定的だ。大学院医学研究院の古野純典教授(予防医学分野)は「世界の大腸ガンの疫学研究で脂肪との関係がはっきりしないのは、個人単位での脂肪摂取量を正確に調査できていないから」という。そこで古野教授らは、肝臓で胆汁酸を生成する重要な酵素(CYP7A1)の遺伝子多型に注目して、大腸発ガンにおける脂肪摂取の役割を明らかにした。
 福岡市とその周辺地域で協力の得られた20~74歳の大腸ガン患者685人と一般住民778人の症例対照研究で、この遺伝子多型との関係が調べられた。大腸ガン全体としてはこの遺伝子多型との関係ははっきりしなかったが、胆汁酸生成が少ないホモ変異型(CC型)の人には右側結腸ガンの危険度が低いことが、世界で初めて突き止められた(図2)。つまり、胆汁酸生成が少ない遺伝子型の人は大腸ガン(右側結腸ガン)になりにくいことが分かったのである。
 次いで古野教授らは、従来から進めている自衛官の退職前健康診断で、大腸の前ガン病変である大腸線腫とCYP7A1遺伝子多型との関係を調べた。大腸内視鏡検査にもとづく大腸腺腫(組織診断)446例と正常者914例との症例対照研究である。大腸腺腫全体としては、CYP7A1遺伝子多型との明らかな関係は見られなかったが、ホモ変異型(CC型)にはやはり右側結腸腺腫の危険度が著しく低いことが観察された。2つの別々の研究で「大腸発ガンは脂肪摂取に伴う胆汁酸の生成量と関わる」という同じような結果が得られたわけだ。「ゲノム疫学研究は、遺伝的に病気になりやすい人を見つけるだけでなく、生活習慣要因の影響を明確にする上で重要である」と古野教授は話している。

<イラスト説明> 図1)「胆汁酸代謝の概略」=コレステロールから生成され、2次胆汁酸に変換の後はまた肝臓に戻る。図2)「CYP7A1遺伝子型と部位別大腸がん調整オッズ比」=直腸がんと左側結腸ガンではCC型での危険度の低下は見られないが、右側結腸ガン危険度の低下が観察された。

<参考論文>
1.Hagiwara T, Kono S, Yin G et al. Genetic polymorphism in cytochrome P450 (CYP) 7A1 and risk of colorectal cancer: The Fukuoka Colorectal Cancer Study. Cancer Res 2005; 65: 2979-82.
2.Tabata S, Yin G, Ogawa S, Yamaguchi K, Mineshita M, Kono S. Genetic polymorphism of cholesterol 7α-hydroxylase (CYP7A1) and colorectal adenomas: The Self Defense Forces Health Study. Cancer Sci 2006 (in press).

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