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例)研究発表 生命科学科
[2011/02/04]
◇ 抗がん剤S-1の腎細胞がんへの有効性を”確認”
[発表論文] S-1 in Cytokine-Refractory Metastatic Renal Cell Carcinoma

Multicenter Phase II Trial of S-1 in Patients with Cytokine-Refractory
Metastatic Renal Cell Carcinoma
Seiji Naito, Masatoshi Eto, Nobuo Shinohara, Yoshihiko Tomita, Masato Fujisawa,
Mikio Namiki, Masaharu Nishikido, Michiyuki Usami, Taiji Tsukamoto, and Hideyuki Akaza
J Clin Oncol 28(34): 5022-5029, 2010

 胃がんなどを対象疾患として日本で保険承認されている国産の抗がん剤S-1が、サイトカイン療法無効の転移のある腎細胞がんの治療において、有効で、かつ副作用も少ないことが、九州大学泌尿器科の内藤誠二教授を中心とした多施設研究で明らかとなった。
 この研究では、転移のある腎細胞がん患者に対して、S-1を第Ⅱ相試験として4週投与、2週休薬のサイクルで、体表面積に応じ毎日80-120mg、病気が進行するまで内服投与したものである。その結果、42人のうち、11人(24.4%)に腫瘍の縮小がみられ、28人(62.2%)では、がんが増大しない状態を維持することができた。副作用は比較的軽く、主な副作用として、グレード3/4の好中球減少と食欲低下がともに8.9%に見られただけであった。
 また、S-1の薬物代謝に関わる酵素のがん組織での発現量と治療効果との関連を検討したところ、チミジル酸合成酵素の発現量が少ないほど効果が高いことがわかり、治療効果や予後を予測する因子として有用であることが明らかとなった。
 近年、転移性腎細胞がんに対する薬物療法は従来の IFN や IL2 などによる免疫療法から血管新生を標的とした分子標的療法に大きく変わってきた。これらの分子標的薬は有効ではあるが、特有な有害事象が高頻度に現れるため、治療を中止せざるを得ないこともしばしばである。有効性と安全性、さらにはチミジル酸合成酵素の発現量に基づく個別化医療の可能性が示されたS1 は転移性腎細胞がんの新たな治療薬として大いに期待される。この研究結果は、2010年12月のJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。



関連キーワード
腎細胞がん、抗がん剤、S-1、サイトカイン療法、分子標的治療
関連URL:http://jco.ascopubs.org/content/28/34/5022.long

Fig1

Fig2

Fig3

【図の説明】
Fig 1
A:RECIST基準による最大の腫瘍径変化率:腫瘍が増大した患者は4名のみで、多くの患者で腫瘍径が減少する傾向であった。
B:無増悪生存率
C:全生存率
Fig.2
治療が奏功した患者と奏功しなかった患者における関連遺伝子の発現。チミジル酸合成酵素(TS)の発現量が少ないほど治療効果が高いことが明らかとなった。
TS, thymidylate synthase; DPD, dihydropyrimidine dehydrogenase; OPRT,
orotate phosphoribosyltransferase; TP, thymidine phosphorylase; TK1,
thymidine kinase 1.
Fig.3
各関連酵素の発現量と無増悪生存率の関係。チミジル酸合成酵素(TS)の発現量が少ないほど無増悪生存期間が有意に長いことが判明した。

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