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例)研究発表 生命科学科
[2012/10/30]
移植された神経幹細胞の機能が、生着した環境に大きく依存することを証明 先端医学部門 岡田准教授
移植された神経幹細胞の機能が、生着した環境に大きく依存することを証明
〜より安全で効果的な細胞移植治療のための解析方法の確立〜

概 要
 九州大学大学院医学研究院の岡田誠司准教授と熊丸浩仁医師らのグループは、損傷脊髄に移植された神経幹細胞を選択的に回収し網羅的な発現遺伝子の解析を行うことで、移植された細胞の機能は生着した環境によって大きく異なることを証明しました。本成果は、安全で効果的な細胞移植治療のためには、生着環境に於ける細胞機能を解析することが重要であることを示すものです。この研究成果は、英国科学雑誌『Nature Communications』の平成24年10月16日(英国現地時間)付オンライン版で発表されました。


 ■背 景
 近年、iPS細胞(※1)や神経幹細胞(※2)などの幹細胞(※3)を応用した再生医療研究が世界的に注目されています。特に、これらの幹細胞から分化させた心筋細胞や神経細胞を、心筋梗塞、脊髄損傷、アルツハイマー病などの患者に移植して病態を改善させる細胞移植治療への期待が高まっています。しかし、従来の解析法では、移植後に生着した細胞がどこに存在してどのような細胞に分化しているか、といった情報は得られるものの、どのような遺伝子をどの程度発現しているのかといった網羅的な定量解析は不可能でした。そのため、生着環境が細胞機能に与える影響や、移植後の細胞腫瘍化のリスクなど、基本的な疑問が未解決のままであり、臨床応用へ大きな障害となっていました。
■内 容
 岡田准教授らは、セルソーター(※4)という装置を用いて脊髄に移植され生着した神経幹細胞を選択的に回収し、細胞中に発現している遺伝子を網羅的に解析することに成功しました。その結果、脊髄に移植された神経幹細胞の機能は、試験管内で予測された結果とは大きく異なることが明らかとなりました。また、正常な脊髄に移植された場合と損傷脊髄に移植された場合でも、細胞の分化や働きが大きく異なることを見いだしました。特に、損傷された脊髄中では、細胞の全体的な遺伝子発現が抑制され、神経細胞への分化や外部刺激に対する反応性も著しく低下している一方で、生存に関する遺伝子発現は活性化されていることが分かりました。これは、過酷な環境では移植された細胞自身が反応性を落として身を守ろうとした結果であろうと考えられました。また、がん関連遺伝子に関しても移植された環境により発現の程度が異なることも判明しました。
■効果・今後の展開

 今回明らかとなった結果により、同じ病気でも損傷の程度や病期の違いが、移植された細胞の機能に大きく影響することが示唆されました。より安全で効果的な細胞移植治療の臨床応用に向けては、移植された部位での細胞機能を明らかにする研究が必須であると考えられます。



【用語解説】

(※1) iPS細胞
 2006年に誕生した人工の多能性幹細胞。皮膚などの体細胞へ数種類の遺伝子を導入することにより、非常に多くの種類の細胞に分化できる分化万能性を保ちつつ、ほぼ無限に増殖させることができる。従来の受精卵由来の万能細胞と異なり、患者自身の細胞から作ることができるため、拒絶反応や倫理的問題を回避できる。

(※2) 神経幹細胞
 神経系を構成するニューロンやグリア細胞などの複数の細胞へ分化できる多分化能と、自己複製能を併せ持つ細胞。

(※3) 幹細胞
 複数の細胞に分化できる多分化能と、自分自身を複製して増殖できる自己複製能を併せ持つ細胞と定義される。分化可能な細胞によって様々な種類があり、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞などが存在する。

(※4) セルソーター
 細胞生物学などの分野に用いられる実験装置で、蛍光抗体で染色した細胞一つ一つを液流に乗せて流しレーザー光の焦点を通過させ、個々の細胞が発する蛍光を測定することによって、目的細胞の特性解析や仕分けを行う目的で主に使用される。

【お問い合わせ】
 大学院医学研究院 准教授 岡田 誠司
 電話:092-642-6120
 FAX:092-642-6099
Mail:seokada(a)ortho.med.kyushu-u.ac.jp ※(a)を@に置き替え


※九州大学プレスリリースから転載 

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