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例)研究発表 生命科学科
[2013/04/01]
活性酸素などから遺伝物質を守る仕組みを解明  細胞工学講座 関口助教
活性酸素などから遺伝物質を守る仕組みを解明

概 要
 九州大学大学院医学研究院の関口猛助教は、福岡歯科大学先端科学研究センターの関口睦夫教授、早川浩教授、伊東理世子講師との共同研究によって、活性酸素などによる酸化から遺伝物質を守る仕組みを明らかにしました。この仕組みの解明は、遺伝物質の酸化によって引き起こされる人間のがん化や老化の仕組みを明らかにするために重要であると考えています。
本研究成果は、米国学術誌『The Journal of Biological Chemistry』電子版に2013年2月3日付けで公開され、2013年3月22日号の印刷版に掲載されました。
 ■背 景
 活性酸素などにより人間の細胞の中の遺伝物質であるDNAやRNA、そしてそれらの材料となる物質(ヌクレオチド)が酸化されます。鉄が酸化されると、錆びることにより劣化するように、DNAやRNAなどの遺伝物質が酸化されると、働きが異常になることにより、がん化したり老化が早くなったりすることが判明しています。これまでに、酸化されたDNAやRNA、ヌクレオチドを取り除く特殊な仕組みが解明されてきました。
本研究では、そのような特殊な仕組みではなく、本来DNAやRNAの原料であるヌクレオチドを作る働きをしていたタンパク質(GMK)が、遺伝物質を守る働きをしていることを明らかにしました。その仕組みは、GMKが酸化された悪い材料を使わず酸化されていない良い材料だけを使うことで、良いヌクレオチドを作るという簡単な仕組みでした。
■内 容
 活性酸素などによってDNAやRNA、ヌクレオチドが酸化されることは、生物にとって大きな害となります。人間を含め、酸素を使って生きている生物は、これらが酸化されるのを防ぐ仕組みを持っているはずです。
研究チームは、酸化されたヌクレオチドを排除する仕組みを研究してきました。生物は、細胞を基本単位として構成されています。そのため生命現象の仕組みは、一つの細胞である大腸菌でも、人間でも、基本的には同じようなものであると言うことができます。本研究では、大腸菌を使用し、ヌクレオチドを作るために働いている3つのタンパク質(GMK,ADK,NDK)を詳細に調査しました。
その結果、研究チームはGMKだけが、酸化された原料(8oxoGMP)を使わず酸化されていない原料(GMP)だけを使うことを明らかにしました。酸化されたヌクレオチド(8oxoGTP)はMutTというタンパク質によって分解されて8oxoGMPができることは分かっていました。この分解されてできた8oxoGMPをGMKが使わないことがこの研究で判明しました。一度分解された酸化ヌクレオチド(8oxoGMP)が、また使われては意味がありません。それを回避する働きをこのGMKというタンパク質が担っていることも明らかにしました。

【右図の説明】
酸化されたRNAの合成を阻害する仕組み。RNAを作る出発材料は、GMPという物質です。GMPはGMKという酵素によってGDPになります。できたGDPは、ADK又はNDKという酵素でGTPになります。このGTPを使ってRNA合成酵素によりRNAが作られます。活性酸素があるとき、これらの物質が酸化され(8oxoが付く)ますが、GMKは8oxoGMPを8oxoGDPにできません。ADK又はNDKは8oxoGDPを8oxoGTPにできます。MutTは8oxoGTPを8oxoGMPにできます。8oxoGMPは外に廃棄されます。
 

■効果・今後の展開

 本研究成果が、遺伝物質の酸化によって引き起こされる、人間のがん化や老化の仕組みの解明につながることが期待されます。人間の細胞や酵素を使ってこの研究成果を医療や健康維持に役立てることができます。
GMKやMutTなどの酵素は、活性酸素による悪い作用を取り除くことができるため、重要な酵素です。食品などの環境中の化学物質で、GMKやMutTなどの働きを邪魔するものがあれば遺伝物質を傷つけてがん化や老化を進めることになります。
そこで、今後これらの酵素を利用することで悪い働きをする化学物質を見つけることができます。また、GMKやMutTなどの遺伝子が異常であれば、酸化された遺伝物質が作られて、がんができやすくなります。更に、GMKやMutTなどを調べることで、がんになりやすいかどうか分かる可能性があります。

■論文

Sekiguchi, T., Ito, R., Hayakawa, H., Sekiguchi,M. Elimination and Utilization of Oxidized Guanine Nucleotides in the Synthesis of RNA and its Precursors J. Biol. Chem. 2013 288:8128-8135 doi:10.1074/jbc.M112.418723

【お問い合わせ】
九州大学大学院医学研究院助教 関口 猛(せきぐち たけし)
 電話:092-642-6179
 FAX:092-642-6176
 Mail:sekigu(a)molbiol.med.kyushu-u.ac.jp ※(a)を@に置き替え


※九州大学プレスリリースから転載 

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