TOP > 研究成果情報 > 研究情報データベース > 詳細

研究情報データベース

キーワード検索
例)研究発表 生命科学科
[2010/01/25]
◇脳梗塞の診断と新しい治療に繋がるバイオマーカーを発見

 


 日本人の死因で、がん、心臓病に次いで多いのが脳卒中。その大部分を占めるのは脳梗塞である。一命を取り留めても様々な後遺症が残る。脳梗塞でも、ラクナ梗塞(細い脳動脈が閉塞する)、アテローム血栓性脳梗塞(太い脳動脈の動脈硬化による閉塞や狭窄によって起こる)、心原性脳塞栓症(心臓で出来た血栓が脳動脈を閉塞する)などの病型が違えばその病態、重症度、治療法なども全く異なってくる。
北園孝成講師(腎・高血圧・脳血管内科)らの研究グループは、脳梗塞の診断に有用なバイオマーカーを発見して注目されている。血管再生に関係する「VEGF」と、免疫に関係する「IL-7」の2種類で、いずれも脳梗塞発症後に増えることが分かった。このほど日本脳循環代謝学会で発表、脳梗塞の診断、再発予防や治療に繋がると期待が高い。
研究グループでは、平成19年から「脳梗塞のバイオマーカー探索研究」を始めた。通常、脳梗塞の診断では病歴や身体所見に加えて画像診断が行われる。時間が勝負の病気だけに、新たな血液検査によって①脳梗塞かどうかの診断②どの病型かの鑑別診断③重症化していく可能性があるか―などを素早く判断しようという狙いだ。
北園講師らは、160人の患者さんの協力を得て、発症当日、3日後、7日後、14日後、3ヵ月後の5回採血して、性・年齢をマッチさせた福岡県・久山町の健常者との比較を行った。その中間解析の結果、患者さんには上記2種類のタンパク質が健常者よりも1.5-3倍ほど多く現れることが分かった。健常者ではこれらのタンパク質の変化が全く見られなかった。いずれも病型にかかわらず増えており、脳梗塞の診断に有用であると期待される(グラフ参照)。さらに分子生物学的な解析手法の一つであるプロテオミクスによる網羅的な解析を行い、ある病型には一貫して増え続けるが、他の病型には発症後の経過によって増減を示すなど、病型の診断に有用な数種類のタンパク質も見つかっている。今回発見された2種類のタンパク質について、北園講師は「発症後3ヶ月以上も血中の濃度が高い値で推移していることは、単にバイオマーカーとしてだけでなく、脳梗塞の病態を解明するうえで極めて有用な知見である」と評価している。
特に興味深いのは、IL-7。IL-7の増加と相関して、増えたり減ったりする別の免疫関係のタンパク質の存在も分かってきた。それには良い働きをするものもあれば悪い働きのタンパク質もある。脳梗塞が起こると、脳の中にいろんな炎症が起きて長期に渡って神経に障害を及ぼすことが推測される。同講師は「脳梗塞の病態のメカニズムを明らかにして、機能回復や新しい治療法につなげて行きたい」と語る。

ページの先頭へ戻る