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例)研究発表 生命科学科
[2009/10/05]
◇画期的な植え込み型除細動装置を開発中―超低電力により無痛性が可能に。



一日に約10万回も収縮を繰り返す心臓に、時折り心拍が遅くなったり、速くなったりする不整脈があると、最悪の場合は死に至ることがある。重症心不全患者の死因の半数は不整脈だと言われる。
心臓が収縮するのは、心房の一部である洞結節で作られた電気信号が心房から心室に伝えられることで起こる。その収縮によって血液が全身に運ばれる。洞結節や心房から心室への伝達に障害があると、収縮が遅くなる不整脈(徐脈)が起きる。こういう人にはペースメーカーを体内に入れて徐脈を感知して元に戻す。逆に心筋梗塞などで心室の細胞が無秩序に小刻みに速く収縮する不整脈(心室細動)が起きると、血液の送り出しができなくなって心停止と同じ状態になる。約10秒で意識を失い、3―4分で手遅れになるので、直ちに心臓に電気的ショックを与えて収縮をリセットしなければならない。それに使うのが除細動器だ。
最近、各所に設置されているAED(自動体外除細動器)は心室細動治療に高い効果を上げている。この症状がよく起きる患者さんには、植え込み式の除細動器(ICD)が開発されたため大幅に救済されるようになった。ところが、この器械には大きな欠陥がある。①誤作動がよく起きるので、そのたびに強い電流が流れて患者さんの苦痛が大きい。②正常に起動しても本人の意識が無くなったりあるいはそれに近い状態で作動することから、車の運転が出来ないなどのQOLが悪い―などの問題を抱えている。
砂川賢二教授(循環器内科)は、そうした問題点を全てクリアできる画期的な無痛性超低電力ICDを開発中だ。それを可能にしたのは、砂川教授が以前から独自開発してきたユニークな“デジタル心臓”である。(2006年2月21日付け参照)
限りなく実物に近い心臓をコンピューター内に作り上げて、①電力量がどの程度であれば、患者さんに負荷がかからないか②意識を失わない状態でICDが作動する域値の設定など―に取り組んだ。現在、電力量は現状の30ジュール(注)から1ジュールまで下げることが出来た。これは人間が日常に意識しないエネルギー量だ。またICDの作動開始時間も、「心室細動の発症後10秒以内に可能となったが、さらに短縮中だ」(砂川教授)という。
  これが実用化されると、「国内外に約600万人」(砂川教授)といわれる患者さんには、自分がいつ心室細動を起こして、いつICDが作動したかを心配せずに健常者と同じ生活が可能になる夢のような話である。砂川教授は「マクロの問題はほぼ解決したので、今後臨床にどう還元していくかだ」と語っている。
このICD開発研究は、厚労省も注目して平成20年度の先端医療開発特区に採択している。

〈注〉1ジュール 1N(ニュートン)の力がその物体を1m動かすときの仕事量。


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