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例)研究発表 生命科学科
[2014/05/16]
脳神経外科学分野 脳卒中救急医療における包括的脳卒中センターの役割
脳卒中救急医療における包括的脳卒中センターの役割
高度な治療を24時間行える包括的脳卒中センターでは、脳卒中の死亡率が26%低下
今後の脳卒中救急医療体制の整備が急務

概 要
 九州大学大学院医学研究院 脳神経外科学分野の飯原弘二教授と国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部の西村邦宏室長らの研究チームは、日本で血管内治療などの高度な治療を24時間行える包括的脳卒中センターとしての機能が高い施設では、脳卒中の死亡率が、26%低下することを明らかにしました。
本研究の成果は、米国科学雑誌『PLOS ONE』に2014年5月14日(水)午前12時(米国東部時間)にオンライン掲載されました。

■背 景
 超高齢社会を迎え、地域医療が疲弊しつつある本邦にあって、年々増加する救急要請への対策は喫緊の課題です。日本では、年間27万人が新規に脳卒中を発症し、年間約12万人が脳卒中後に死亡します。緊急性の高い脳卒中治療については、医療機関の集約化、広域化と医療機関同士の連携強化は避けて通れません。欧米では脳卒中の治療施設を一次脳卒中センターと包括的脳卒中センター(Comprehensive Stroke Center: CSC)に分類し、血管内治療などの高度な治療を24時間行える包括的脳卒中センターの役割が注目されています。今後、日本で脳卒中の救急医療体制を整備していく上で、CSCとしての機能が、脳卒中患者の予後に与える影響を知ることは大切です。しかしながら、これまで世界的に見ても、全国規模の調査は行われていませんでした。

■内 容
 
  (図1)脳卒中死亡率とCSCスコア五分位との関係
(下位5分の1を対照とした場合、年齢性、意識レベル、併存疾患調整)
九州大学大学院医学研究院 脳神経外科学分野の飯原弘二教授と国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部の西村邦宏室長らの研究チームは、日本脳神経外科学会、日本神経学会、日本脳卒中学会に所属する1369の教育訓練施設を対象に、米国脳卒中学会が推奨するCSCの要件の充足率に関するアンケート調査を行い、回答した749の施設に関して、CSCの要件の充足率を点数化したCSCスコアを作成しました。
さらに、DPC調査(※)により、265病院より、53,170件の脳卒中(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血)症例を登録し、CSCとしての機能(CSCスコア)と脳卒中の死亡率との関係を検討しました(図1)。脳卒中の死亡率に関しては、下記のようにCSCスコアが上昇するにつれ死亡率は有意に低下し、上位5分の1の施設では、下位施設に比べて26%の死亡率の低下がみられました。同様の傾向は、後遺障害の減少についても明らかでした。



効果・今後の展開
今後は、より高度に集約化したCSCの整備が、脳卒中患者の死亡率低下、後遺症の減少につながると期待されます。なお、脳卒中が疑われる患者については、他の疾患との鑑別が必要であることや脳卒中に合併症を伴うこともあることから、複数の診療科との連携が必要と考えられ、そのため高度に集約化したCSCについては、救命救急センターや、これに準じた、脳卒中と因果関係の強い心臓血管疾患などの包括的診療機能を併せて持つことが望まれます。総合周産期母子医療センターや小児救命救急センターといった機能については、併せて持つことが困難な場合には、地域の特性を考慮した連携体制を構築することが望まれます。
本研究については、厚生労働省職員に研究班会議へのオブザーバー参加を求め、厚生労働省と連携しながら研究を進めてきました。今回、得られた研究成果については、厚生労働省に情報提供する予定です。今後の施策への反映に期待したいと思います。

【用語解説】

※ DPC調査

  DPCとは、Diagnosis Procedure Combination(診断群分類)の略であり、患者ごとに傷病名や年齢、意識障害レベル(JCS)、手術、処置の有無などの治療行為を組み合わせたものです。日本では、これに基づく医療費の定額支払い制度が導入されており、診断群分類包括評価と呼ばれます。日本における診断群分類は、医療資源を最も投入した傷病名により分類し、次に、診療行為(手術、処置等)等により分類する構造となっています。傷病名は国際疾病分類(ICD10)、診療行為等については、診療報酬上の区分で定義されています。
本研究におけるDPC調査とは、DPCに基づき定額支払い制度を導入している病院(DPC対象病院)から、一定期間(本調査では平成22年度)に退院した患者の国際疾病分類(ICD10)から、脳卒中患者を抽出して、診療行為、重症度、退院時転帰、医療費、在院日数などを検討する研究を指します。

参考:http://ja.wikipedia.org/wiki/診断群分類包括評価



<本研究に関係した発表>
1)包括的脳卒中センターの脳卒中死亡率への影響

  論文:“Effects of Comprehensive Stroke Care Capabilities on In-hospital Mortality of Patients with Ischemic and Hemorrhagic Stroke: J-ASPECT Study”(虚血性および出血性脳卒中患者の入院死亡率に包括的脳卒中ケア能力が与える影響)
『PLOS ONE』(オープンアクセス ジャーナルhttp://www.plosone.org/)
平成26年5月15日(木)午前1時(日本時間) 掲載予定

2)脳卒中診療医の燃えつき症候群とCSC

  論文:”Cross-sectional Survey of Workload and Burnout among Japanese Physicians Working in Stroke Care”(脳卒中ケアに従事する日本の医師における勤務状況と燃え尽き症候群に関する横断研究)
『Circulation:Cardiovascular Quality and Outcomes』(http://circoutcomes.ahajournals.org/)
平成26年5月14日(水)午前5時(日本時間) 掲載予定


第34回日本脳神経外科コングレス総会 2日目(平成26年5月17日(土))

  午後2時50分(会長講演)「脳神経外科の可視化」
午後3時10分 特別企画 「医療におけるビッグデータの活用」

 【研究内容に関するお問い合わせ】
国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部
室長 西村 邦宏(にしむら くにひろ)
電話:06-6833-5012
FAX:06-6833-9865
Mail:nishimura.kuni.rd[at]mail.ncvc.go.jp
 【組織・広報に関するお問い合わせ】
国立循環器病研究センター
総務課広報係(内線2116)辰己・中野
(代表)06-6833-5012
(夜間・休日)06-6833-5015
Mail:kouhou[at]ml.ncvc.go.jp
 九州大学 大学院医学研究院 脳神経外科学分野
教授 飯原 弘二(いいはら こうじ)
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