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例)研究発表 生命科学科
[2009/03/31]
◇血糖値を下げるβ細胞の幹細胞出現を、世界で初めて実証する事に成功。
 

厚生労働省調査(平成19年国民健康・栄養調査)によれば、予備軍を含めると40歳以上の日本人の3人に1人が、糖尿病であると言われている。血糖値を下げることが出来るのは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるインスリンのみである。従ってβ細胞の数や働きは糖尿病に関係してくるが、β細胞の起源については学問的には諸説あって、しかもその存在が実際には証明されていなかった。
 医学研究院幹細胞ユニット(糖尿病遺伝子分野)の稲田明理特任准教授は、β細胞の幹細胞が、膵液を運ぶ膵管の上皮細胞から生成されることを、マウスで突き止めることに初めて成功した。2008年12月、米科学アカデミー紀要(参考論文)に発表された。
 稲田特任准教授によると、β細胞は体重の増加につれて増える。それも生後の発育期には急激な増え方をする。β細胞の根源は膵管上皮細胞にあると考え、数年かかって膵管上皮細胞に特異的に発現する遺伝子を特定することにまず成功した。この遺伝子に印をつけてマウスの成長に伴う変化を観察することを思いつき、膵管上皮由来細胞は緑、インスリンを分泌する細胞は赤と、それぞれ色分けしてみたところ、生後4週間までにはインスリンを分泌する細胞集団(赤)の中に、膵管上皮由来の細胞(緑)が存在していた。
 次に別のマウスを使って、膵臓を損傷したマウスが組織を再生する過程を調べると、やはり膵管上皮細胞からβ細胞へと分化していく状況を、同じ色分け方法で確認することができた。稲田特任准教授によると「β細胞の幹細胞(前駆細胞)は膵管上皮に存在すると長い間言われているが、直接実証できたのはこれが初めてだ」という。
 このことは、「膵管上皮細胞を刺激してβ細胞を再生することができれば、糖尿病の根本的な治療法にも繋がる」(同特任准教授)ことが期待されるが、次の研究ステップとして「なぜ一部の膵管上皮細胞がβ細胞に分化するのか」、その遺伝子変化を解明している。

〈写真説明〉膵臓を損傷したマウスの再生過程で、膵管上皮からβ細胞に分化した細胞が黄色で示されている。
〈参考論文〉Akari Inada, Cameron Nienaber, Hitoshi Katsuta, Yoshio Fujitani, Jared Levine, Rina Morita, Arun Sharma, Susan Bonner-Weir.Carbonic anhydrase II-positive pancreatic cells are progenitors for both endocrine and exocrine pancreas after birth.Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Dec 16; 105(50): 19915-19919

〔稲田明理特任准教授についての紹介は、本ウェブサイトの「やあ やあ やあ」の2008年11月14日付けの記事を参照〕

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