TOP > 研究成果情報 > 研究情報データベース > 詳細

研究情報データベース

キーワード検索
例)研究発表 生命科学科
[2015/04/24]
世界初 ウイルス感染による糖尿病発症に関わる遺伝子を発見(検査技術科学分野 永淵正法教授)
世界初 ウイルス感染による糖尿病発症に関わる遺伝子を発見!

概 要
 九州大学大学院医学研究院保健学部門の永淵正法教授は、生体防御医学研究所、宮崎大学医学部、佐賀大学医学部、大分大学医学部、愛知県衛生研究所、シカゴ大学医学部(米国)等との共同研究で、世界で初めて、ウイルス糖尿病感受性遺伝子(※1)を発見した。
これまで、ウイルス感染によって糖尿病を発症する可能性は度々指摘されていますが、その証拠は乏しく、責任遺伝子も不明でした。本研究では、ウイルス感染の防御に働くインターフェロン(※2)の効果を発揮するために必要な Tyk2 遺伝子(※3)が、感受性の高いマウス系統で変異がおこっていること、また、そのためウイルス感染を受けても、Tyk2 が働かず、防御機能が低下するため、インスリンを作る膵臓のランゲルハンス島 β 細胞(※4)が破壊され、糖尿病になることを証明しました。
本研究成果は、2015 年 4 月 7 日(火)午前 10 時(英国時間)に、国際学術雑誌『Nature Communications』に掲載されました。

■背 景
 1980年代に、実験的に糖尿病を誘発する脳心筋炎ウイルスD株(EMC-Dウイルス)(※5)が、限ら
れた系統のマウス(DBA、SJL、SWR)にのみ、高率に糖尿病を誘発すること(Journal of Experimental
Medicine 1973)、さらにその感受性遺伝子は単一であること(Nature 1978)が知られていましたが、
長く、その責任遺伝子は不明でした。最近、ヒトでも、ウイルスにより糖尿病が発症することが疑われ
る報告が積み重なってきていることで(英文テキストブックDiabetes and Viruses, 2013, Springer社)、
ウイルス糖尿病研究に、再び、スポットライトが当たっています。一方、EMC-Dウイルスによる糖尿
病がおこるかどうかは、ウイルス感染後早期の防御:自然免疫が重要であることは明らかとなっていま
した。(Archives of Virology 2008)


■内 容
 インターフェロン受容体関連シグナル伝達分子であるTyk2遺伝子欠損マウスは、EMC-Dウイルスが
誘発する糖尿病に対して感受性である(糖尿病を高率に誘発され得る)ことから、ウイルス糖尿病感受
性系統として知られているDBA、SJL、SWRのTyk2遺伝子変異を探索したところ、DBAには遺伝子変
異は認められず、SJLおよびSWRにのみ遺伝子変異が認められました。これらのTyk2遺伝子変異マウ
スにおいては、Tyk2遺伝子の発現が著しく低下していました。
また、これらのTyk2遺伝子変異マウスの通常の細胞では、高濃度インターフェロン刺激によりウイル
ス抵抗性が回復しましたが、驚くべきことに、膵臓のランゲルハンス島β細胞では、その回復力が少な
いことがわかりました。すなわち、EMC-Dウイルス誘発糖尿病に対する感受性はTyk2遺伝子変異によ
りインターフェロン刺激に対するランゲルハンス島β細胞が感染に弱くなってしまうことが原因である
と考えられました。
この研究は30年以上の謎であったウイルス糖尿病の感受性遺伝子を発見し、そのメカニズムを明らか
にした重要な報告です。

■効果
 今回、世界で初めて、マウスにおけるウイルス誘発糖尿病の感受性遺伝子を発見し、そのメカニズム を明らかにすることができました。本研究は、ウイルス感染により感受性の高いヒトも、より高い危険 度で糖尿病を発症したり、ウイルス感染が糖尿病の危険因子の一つとなりえることが証明できたため、 ウイルス糖尿病の病態の解明、糖尿病を起こし易いウイルスの発見、さらには、ワクチン開発による予 防にむけた研究が、着実に進展することが期待できます。

■今後の展開
1.  今回発見されたウイルス糖尿病感受性遺伝子以外のマウスおよびヒトの感受性遺伝子の探索研究を進めています。

2.  感受性遺伝子を有するマウスを用いて、糖尿病誘発性候補ウイルスに対して、高い感度で検定し、糖尿病誘発性を持つウイルスを発見することのできる検査系を開発しています。

3.  糖尿病誘発性ウイルスを同定することにより、ワクチン開発に繋げる研究を行っています。

4.  糖尿病誘発性ウイルスに対するワクチン開発により、ウイルスで発症する糖尿病患者さんの予防につながるとともに、ウイルス感染による糖尿病発症リスクの低下につながることを目指しています。


【用語解説】

1.ウイルス糖尿病感受性遺伝子
 

  ウイルス糖尿病:
糖尿病は、血糖値を低下させるホルモンであるインスリンの作用が低下し、体内の血糖値が高くなっ
ている状態である。1 型糖尿病(日本の糖尿病患者のうち 5%)と 2 型糖尿病(95%)とに分けられる。
1 型糖尿病は膵島 β 細胞が破壊されインスリン欠乏に至るもので、自己免疫で発症するタイプ A と特発
性(他の疾患に起因しない)のタイプ B とに分類される。2 型糖尿病はインスリン自体の分泌低下を主
体とするものと、インスリン抵抗性を主体としそれにインスリンの相対的不足を伴ったもの等がある。
ウイルス糖尿病は、1 型糖尿病のタイプ B の原因の主な候補とされているが、その証拠はこれまで乏し
かった。



 ・
感受性遺伝子:
多くの疾患は、単独ではなく複数の様々な遺伝子が組み合わされ、合わせ持つことによって発症リス
クが高まると考えられている。感受性遺伝子とは、特定の疾患の発症リスクを高める遺伝子の突然変異
のこと。この突然変異遺伝子が受け継がれても、確実に発症するわけではない。このように病気にかか
り易い状態を、「感受性が高い」「感受性である」という。


2. インターフェロン

   


3. Tyk2(Tyrosine kinase 2)遺伝子

 

4. 膵臓のランゲルハンス島 β 細胞(膵臓の中にある膵島と呼ばれる組織で、インスリンを作る細胞)

 


5.脳心筋炎ウイルス:EMC(Encephalomyocarditis)ウイルス

 【お問い合わせ】
 医学研究院 保健学部門 検査技術科学分野
 教授 永淵正法(ながふち せいほう)
 電話:092-642-6731
 FAX:092-642-6731
 Mail:nagafu_s@med.kyushu-u.ac.jp

ページの先頭へ戻る