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例)研究発表 生命科学科
[2007/11/26]
◇子供のがんの悪性度がわかる――腫瘍の遺伝子解析による悪性度判定法

小児がんの中で白血病に次いで多い神経芽腫は、腎臓の上にある副腎や脊椎の両側にある交換神経節などから発生する悪性腫瘍だ。多くは5歳以下で発症し、1歳未満なら自然に治るケースもあるが、1歳以上は手術や抗がん剤などの集学的治療を施しても死に至るケースも多い。腫瘍の悪性度を診断初期に正確に判定し、患児一人一人に適した治療を行うことが重要である。
 九大病院小児外科の田尻達郎准教授たちは、腫瘍の遺伝子解析の組み合わせから悪性度を判定する方法を見出し、第107回日本外科学会のワークショップで発表した。従来、神経芽腫の悪性度は体の細胞全部が持つMYCNという遺伝子が増えたかどうかで判断し、その治療法を選択するという方法が用いられてきた。その増幅を判断する方法にはいろいろあるが、田尻准教授らは二つの方法(FISH法と定量的PCR法)を組み合わせる方法で、まず短時間で正確な判定に成功した。
 さらに、神経芽腫の悪性度に関わる遺伝子発現に着目した。すでにTrkAという遺伝子発現の関与は分かっているが、新たにBIN1遺伝子とNnatβ遺伝子の2つの遺伝子発現と神経芽腫悪性度との関与を初めて明らかにした。この2つの遺伝子はいずれも遺伝子発現量が低いほど神経芽腫の悪性度が高い、つまり生存率が低いことをつかんだ。さらに、TrkAを含めた3つの遺伝子の低発現をそれぞれ予後不良因子としたとき、それぞれの腫瘍が保有する3つの予後不良因子の数が多いほど悪性度が高く、生存率が低かった。(左グラフ参)。
 また、この3つの遺伝子の低発現因子に、先のMYCN遺伝子増幅を予後不良因子として含めた4つの予後不良因子を組み合わせて、神経芽腫の5年後の生存率との関連を調べた。ひとつも予後不良因子を持っていなければ、5年生存率は92%、1つあれば88%、2つなら78%、3つなら40%で、4つなら0%だった(右グラフ参)。この悪性度判定法について田尻准教授は「1つまで不良因子を持つ患者さんの群(低リスク群)には、患児の長期のQOLを重視したできるだけ合併症を避けた外科手術のみで十分であり、2つの不良因子を保有する群(中間リスク群)には外科手術に比較的軽い抗がん剤などの治療法の組み合わせが考えられる。3つの群(高リスク群)には、骨髄移植を伴う強い抗がん剤や放射線療法を組み合わせた既存の最も強力な集学的治療を適格に行うことが必要だ。4つの不良因子保有する群(超高リスク群)は、現在の治療法では生存が厳しく、新たな治療法の開発が望まれる」という。小児外科の研究グループでは悪性度の高い患者さんへの新しい治療法として、すでに樹状細胞を用いた免疫遺伝子治療の開発研究にも取り組んでいる。

<グラフ説明〉(左)3つの予後不良因子保有数による4つの群における生存曲線を示す。予後因子保有数が増加するにつれ、生存率が明らかに下がっているのがわかる。
(右)4つの予後不良因子保有数による5年生存率の解析結果を示す。予後不良因子保有数が増加するに従い、5年生存率は低下している。
<参考論文〉
Tajiri T, Higashi M, Souzaki R, Tatsuta K, Kinoshita Y, Taguchi T: Classification of neuroblastomas based on an analysis of the expression of genes related to the prognosis. J Pediatr Surg (in press), 2007

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