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例)研究発表 生命科学科
[2007/09/11]
◇耐糖能異常はアルツハイマー病の危険因子であった。

 認知症は、「正常に発達した知的機能が、後天的な脳の病気、外傷などによって低下して日常生活に支障をきたす状態」と定義され、様々な原因により起こる。その原因の約8割は、脳血管性認知症とアルツハイマー病で占められていると考えられている。脳梗塞や脳出血により脳の神経細胞が死んで起こるのが脳血管性認知症であり、脳梗塞や脳出血の危険因子である高血圧や糖尿病を予防することで、脳血管性認知症は予防できる。しかし、アルツハイマー病の原因はまだわかっていない。いくつかの仮説が考えられており、その中の一つに高血圧や糖尿病などの動脈硬化の危険因子との関連を指摘する説(血管仮説)がある。
 九大久山町研究班は、昭和36年から久山町で脳卒中の追跡調査(久山町研究)をしているが、昭和60年からは高齢者の認知症の調査も行っている。久山町研究の特徴の一つに、追跡期間中に亡くなられた方を高率に剖検(高齢者の70%)している事があげられる。アルツハイマー病や脳血管性認知症の確定診断には剖検が必要なので、剖検を基盤に行う久山町の認知症の研究は極めて精度が高い。同研究班は診断精度の高いデータをもとに、アルツハイマー病と高血圧および耐糖能異常との関係を検討した。
 昭和60年に65歳以上の住民887名(受診率95%)に健診を行い、59人が認知症と診断された。残る非認知症828人を17年間追跡した結果、275人が新たに認知症となった。その内訳はアルツハイマー病が124人(認知症の45%)、脳血管性認知症が81人(30%)、アルツハイマー病または脳血管性認知症どちらかを含む混合型認知症が31人(11%)だった。
 高血圧と認知症の関係をみると、脳血管性認知症は軽症高血圧より、発症率が高くなっているのに対して、アルツハイマー病の発症率と血圧との間には関連が全く見られないことが分かった(図1)。また耐糖能異常(血糖値を正常に保つ調節能力の低下)では、脳血管性認知症、アルツハイマー病ともに耐糖能異常を有する群はない群と比べ発症率が約2.5倍と高く、耐糖能異常が脳血管性認知症ならびにアルツハイマー病の危険因子であることを裏付けている(図2)。さらに詳しく解析すると、高血圧の人で耐糖能異常があると、脳血管性認知症の発症率は健常者の実に8.4倍も高くなっていた。
 研究班の谷崎弓裕医師は、「強力な動脈硬化危険因子である高血圧が、アルツハイマー病と関連が見られないことより、動脈硬化を介してアルツハイマー病が発症するという血管仮説は否定的であり、アルツハイマー病の予防には、糖尿病の予防が重要である」と述べ、先の老年医学会総会で発表した。

〈グラフ説明〉(図1)JSH(日本高血圧学会)2004の血圧分類を使用。アルツハイマー病は血圧の影響を受けていないことが分かる。
〈学会抄録〉高齢者における耐糖能異常と高血圧が認知症発症に及ぼす影響;2007.6.日本老年医学会:谷崎弓裕、松井幸子、関田敦子、土井康文、有馬久富、今村剛、岩城徹、神庭重信、飯田三雄、清原裕

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