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例)研究発表 生命科学科
[2007/08/31]
◇世界に発信し続けるプリオン病の研究成果――治療法に手がかり

 狂牛病で有名になったプリオン病だが、ヒトの病気としてはヤコブ病(正式にはクロイツフェルト・ヤコブ病)が知られている。プリオン病は、正常なプリオン蛋白が何かの原因で異常な蛋白になり、異常プリオン蛋白を増やし続けて主に脳神経に蓄積することで発症すると見られている。
 ところが1996年にイギリスで初めて報告された変異型ヤコブ病は、それまでのヤコブ病とは違って若年層に発症し、脳波も違うなどさまざまな異なった神経病理研究から「牛からヒトへの感染はやはり本当だ」との疑いをいっそう強めることになった。
 九大神経病理学教室のプリオン病研究は日本でも草分け的存在で、病態解析や治療開発などで多大な研究成果を発表し続けている。初代の立石潤教授(名誉教授)は、スモン病の原因を突き止めたことでも知られるが、プリオン病を小動物へ感染させることに世界で初めて成功して、世界のプリオン病研究に飛躍的な進展をもたらした。その後も北本哲之、堂浦克美助教授(いずれも現在東北大教授)らが中心となりプリオン蛋白遺伝子解析を続け、多くの遺伝子異常プリオンを発見してきた。岩城徹教授が引き継いでいる現在もここの研究室が、九州、西日本地区におけるプリオン病の病理診断を一手に引き受けている。
 神経難病であるが故に、現在、最も注目されているのはプリオン病の早期診断と治療薬の開発だ。神経病理学教室ではマラリアの治療薬キナクリンと膀胱炎の治療薬ペントサン硫酸が、動物実験によってプリオン病に治療効果があることを突き止め、臨床治療に入っている。プリオン病は、感染しても潜伏期間が長く、しかも抗体などの免疫反応が無いので、感染しているかどうかの判断が不可能で発症まで分からないのが治療上の最大の難点だ。佐々木健介助教は「プリオン蛋白の脳内蓄積を検査する画像診断や髄液検査の進歩に伴い、少しでも早期に診断できるようにすることで、治療効果がさらに期待される」と語る。
<写真・グラフ説明>PrP(プリオン蛋白)とGFAP(反応性アストロサイトのマーカー)の免疫染色。赤矢印はペントサン硫酸投与部位を示す。治療薬を投与したマウスの右脳では、神経細胞のシナプスにおけるプリオン蛋白の異常な蓄積が左脳より少ない。またグリア細胞の反応も右脳には現れておらず、病理変化が軽いことを示す。グラフは、投与開始時期が早いほど、また投与量が多い(赤は青の4倍)ほど、より高い延命効果が認められたことを示す。
<参考論文>
Doh-ura K, Ishikawa K, Murakami-Kubo I, Sasaki K, Mohri S, Race R, Iwaki T
Treatment of transmissible spongiform encephalopathy by intraventricular drug infusion in animal models.
J Virol 2004; 78 (10): 4999-5006

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