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例)研究発表 生命科学科
[2007/04/24]
◇細胞内の小器官が老化や病気に関わっていた。

私たちの体は約60兆もの細胞からなる。細胞内には遺伝子(DNA)を収納する核と、いろんな小器官がある。小器官のうちミトコンドリアだけは独自にDNAを持っている。それは10億年以上前に、ミトコンドリアの祖先となる細菌が、現在の細胞の基になる細菌と合体して今の細胞に進化したという説の根拠にもなっている。康東天教授(臨床検査医学)は、ミトコンドリアと細胞の老化や病気との関わりについて研究している。
ミトコンドリアDNAは、血液で運ばれてきた酸素を取り込んで細胞に必要なエネルギーを生み出すATP(アデノシン三リン酸)を作る蛋白質の遺伝子である。だからこのDNAが傷ついて機能しなくなると、ATPの産生に支障が起きてエネルギーを生み出せなくなり、その細胞が弱って病気になる。傷つく原因にはミトコンドリア自体の老化が指摘される。さらにATP産生の際に発生する活性酸素の影響が大だ。「活性酸素から障害を受ける危険度は、核にあるDNAよりも100倍も強い」(康教授)という。ところが康教授らは、その障害から守る働きも実はミトコンドリア自体が持っていることを世界に先駆けて見出した。TFAM(ミトコンドリア転写因子)という蛋白質で、遺伝子操作でTFAMを過剰に発現させたマウスでは心筋梗塞を起こしても、多くのマウスが心不全に至らずに成育した。
心臓だけでなく、加齢に伴って神経、すい臓など多くの臓器で機能低下が起こる原因として、ミトコンドリアDNAの異常が最近注目されている。パーキンソン病やアルツハイマー病、糖尿病、がんなどとのかかわりも指摘されてきているという。康教授は「ミトコンドリアの研究は、初めはATPに関する研究、次いで独自のDNAが発見されたとき、アポトーシス(細胞の自然死)研究に引き続いて、ミトコンドリアDNAと老化や生活習慣病との関連の研究という第4のピークを迎えている」と語る。

<写真説明>ヒトのHeLa細胞の蛍光顕微鏡写真。A:ミトコンドリアDNAの蛍光染色。薄く白い糸状に見えるのはミトコンドリア。その中で濃く白い顆粒状に見えるのがミトコンドリアDNA。核は抜けて見えている。B:活性酸素の蛍光染色。丸く抜けて見えるのは細胞の核。核周囲に緑に光っているのが活性酸素。活性酸素が主にミトコンドリアで発生していることを示している。
<参考論文>Kanki T, Ohgaki K, Gaspari M, Gustafsson CM, Fukuoh A, Sasaki N, Hamasaki N and Kang D: Architectural role of TFAM in maintenance of human mitochondrial DNA.Mol Cell Biol 24:9823-9834,2004.

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