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例)研究発表 生命科学科
[2007/03/20]
◇気道は二重ブレーキ構造だった―臓器をつくる平滑筋の機能

「祖先が獲物を麻痺させた矢毒の研究が、薬理学の始まりです」。そう語るのは伊東祐之教授(薬理学)。生理活性物質を生活に利用する知恵は大昔からあった。その生理活性物質の作用機序が現代になってようやく少しずつ解明されてきた。だが、伊東教授の話を聞くと科学の進歩も祖先の知恵を解明する点では、まだまだ悠久の課題のように思われる。
矢毒は、運動神経から筋細胞へ情報を伝達する神経伝達物質の筋細胞の受け手である受容体の働きを阻害してしまう。ではフグ中毒はなぜ起こるのか。筋肉や神経などの興奮性細胞が働くときには、細胞膜を介するいろんな電気信号(イオン)が流れる。細胞の表面にはイオンチャネルがあって、イオンがここを通ることで筋肉の収縮や神経の興奮などの情報が伝わる。フグ毒はその筋肉や神経のNa+チャネルの穴をふさいでしまうから、伝達機能がなくなり麻痺が起き、最後は呼吸ができなくなる。これに対して胃腸や血管は平滑筋細胞で出来ていて興奮を引き起こすチャネルがCa2+チャネルなので、フグ毒に邪魔されずに活動を続けられる。薬理学ではこうした受容体やチャネル一つ一つの機能を解明する。
 伊東教授は、内臓器を構成する平滑筋細胞の研究が専門で、呼吸に関係する気道平滑筋の研究では、副交感神経の独特な働きを発見した。私たちの体の臓器機能は、相反する働きをする交感神経と副交感神経の絶妙なバランスによって調整されている。ところが気道の平滑筋では、副交感神経だけで気道を収縮させ、逆に弛緩もさせる働きをしていることを伊東教授が発見した。副交感神経が産出するACh(アセチルコリン)という伝達物質が気道を収縮させ、他方でNO(一酸化窒素)を産出して気道を緩める。しかもNOはACh
の放出も抑えるという二重ブレーキとして働くことも解明した。副交感神経の働きが強まることで起こるとされる神経性の喘息。その予防研究などにも発展していきそうだ。

<イラスト説明> フグ毒は神経の電気的信号が伝わるのを妨害し、矢毒はACh(アセチルコリン)受容体をふさいでしまう。
<参考論文> Waniishi,Y.,Inoue,R.,Morita,H.,Teramoto,N.,Abe,K. and Ito,Y
Cyclic GMP-dependent but G-kinase-independent inhibition of Ca2+-dependent Cl--currents by No donors in cat tracheal muscle. Journal of Physiology, 511; 719-731、1998

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