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例)研究発表 生命科学科
[2007/02/20]
◇悪性脳腫瘍の治療――遺伝子解析で、放射線照射か化学療法かを判断。

腫瘍が良性か悪性か、悪性度はどの程度かといった判断は、病理診断によって行われる。加えてここ数年進展しているのが、腫瘍の遺伝子を調べる診断法である。脳神経外科(佐々木富男教授)では、LOH解析という染色体異常を調べる方法によって、より効率的な治療を選択できるようになった。
体の設計図といわれる遺伝子を収めるヒトの染色体は、22対の常染色体と2本の性染色体を合わせて46本ある。遺伝子の中には、細胞が傷ついてがん化するときに、これを妨げるがん抑制遺伝子が働くことは知られている。脳神経外科の庄野禎久助手、溝口昌弘助手によると、グリオーマと言われる脳の悪性腫瘍細胞の染色体を調べると、1番から22番までの常染色体のうちのいくつかに、特異性が見られることが分かった。このうち10番染色体のペアの一方に欠損がある場合には、いずれも1-2年しか生存できなかった。これは、染色体の一部欠損によって、そこに収まっているがん抑制遺伝子が働かなくなって、悪性腫瘍になったと見られる。逆に10番染色体に異常のない人は長期生存できた。さらに1番と19番の染色体に異常があると、異常がない人よりも逆に生存率が高く、放射線照射をしなくても化学療法のみで長期間生存できることが分かった。
この研究成果から、治療法も患者さんに合わせた方法を採ることが出来る。腫瘍の10番染色体に異常がある人には、直ちに放射線治療を施し、今年9月から承認された最新の抗がん剤が使用される。1番、19番に異常のある人には、放射線治療は行わずに化学療法だけで様子を見る。脳細胞の場合は、他の臓器と違って個々に多くの機能を持つから、正常細胞まで影響が心配される放射線照射は極力避けたいところだ。

グラフ説明
脳腫瘍で最も多いグリオーマ患者の生存率の比較。10番染色体の欠損があると多くの患者の生存期間は2年以内であった。1番と19番の染色体異常があると生存期間は延長している。

<参考論文> Allelic Losses of Chromosome 10 in Glioma Tissues Detected by Quantitative Single-Strand Conformation Polymorphism Analysis.
Nobuhiro Hata,Koji Yoshimoto,Nobuhiko Yokoyama,Masahiro Mizoguchi,Tadahisa Shono,Yanlei Guan,Tomoko Tahira,Yoji Kukita,Koichiro Higasa,Shinji Nagata,Toru Iwaki,Tomio Sasaki,and Kenshi Hayashi:Clinical Chemistry 52:3 370-378(2006

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