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例)研究発表 生命科学科
[2018/02/23]
「麻疹ウイルスに対する感染阻害剤の作用メカニズムを解明」ウイルス学分野 柳雄介教授 橋口隆生准教授
麻疹(はしか)ウイルスに対する感染阻害剤の作用メカニズムを解明
-治療薬開発に新知見-


  
  九州大学大学院医学研究院の栁雄介教授と橋口隆生准教授、医学系学府修士2年福田吉成らの研究グループは、同大 生体防御医学研究所の神田大輔教授、理化学研究所放射光科学総合研究センターの松岡礼特別研究員、東京大学の津本浩平教授、米国ジョージア州立大学のRichard Plemper教授らとの国際共同研究により、高い感染力と一過性の強い免疫抑制を特徴とし、低頻度ながら難病指定されている致死性の脳炎(亜急性硬化性全脳炎(SSPE))を引き起こすことがある麻疹ウイルスに対し、感染阻害効果を示す阻害剤の作用メカニズムを解明しました。
  研究グループは、世界で初めて麻疹ウイルスがヒトに感染する際に必須のウイルス膜融合蛋白質の構造を解明し、さらに、ウイルス膜融合蛋白質と阻害剤が結合した状態を原子レベルの分解能で可視化することに成功しました。この成果により、ウイルス膜融合蛋白質上のどこを標的として治療薬を設計すると効果的にウイルス感染を抑制できるかが明らかとなりました。
  本研究成果は、麻疹ウイルスによる中枢神経感染メカニズムの解明に大きく貢献するだけでなく、今後、特異的治療薬の存在しない麻疹に対する抗ウイルス薬の開発へつながることが期待されます。
  本研究成果は米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of
USA」に 2018 年 2 月 20 日(火)に掲載されました。 
研究者からひとこと:
  麻疹は世界中で年間約9万人の死者が出ている(2016年度WHO統計)非常に感染力の強いウイルス感染症です。病原性の解明や治療法の開発に少しでも役立つ研究を今後も続けていきたいと思います。
(参考図)↑
2種類の異なる阻害剤(化合物とペプチド)が、共にウイルス膜融合蛋白質の全く同じ領域に作用して、麻疹ウイルスによる感染を阻害することが、初めて明らかとなった。

  

【お問い合わせ】九州大学大学院医学研究院   
教授:栁 雄介(やなぎ ゆうすけ) 准教授:橋口 隆生(はしぐち たかお)
電話:092-642-6138 FAX:092-642-6140
Mail:yyanagi(a)virology.med.kyushu-u.ac.jp 
  
Mail:takaoh(a)virology.med.kyushu-u.ac.jp
 ※(a)は@に置きかえてメールをご送信ください

  

 
■背 景
  麻疹(はしか)は、いまだに世界中で年間約9万人の死者(2016年度, WHO統計)が出ている、非常に感染力の強いウイルス感染症です。麻疹患者は一過性の免疫抑制状態となるため、二次感染を高頻度に併発し、肺炎、脳炎等を合併して死亡することもあります。特に、感染後、数年を経て約1万人に1人の割合で発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は極めて予後不良であり、海外ではHIV感染児において麻疹ウイルス感染に関連する致死性の脳炎発症が近年問題になっています。麻疹に対しては、予防法としては効果的な弱毒生ワクチンがありますが、特異的な治療薬は存在しないため、治療法開発が課題となっています。 
 
  
■内 容
  今回、九州大学を中心とする研究グループは、ウイルス学的手法と構造生物学的手法・コンピュータ科学計算・生化学的手法を組み合わせて研究を行い、異なる2つの阻害剤(化合物およびペプチド)がウイルス膜融合蛋白質 Fの特定の領域に同じように作用して感染を阻害するメカニズムを解明しました。ウイルス膜融合蛋白質 F は、ウイルスがヒトの細胞に感染する際に必須の分子であり、神経細胞に感染する際にも極めて重要な役割を担っている分子です。すなわち、今回の研究成果でウイルス膜融合蛋白質 F の構造が明らかになったことで、麻疹ウイルスが引き起こす中枢神経系感染メカニズムの解明が大きく進展します。また、研究グループは阻害剤とウイルスの膜融合蛋白質 F が結合した状態を原子レベルで可視化することに成功し(参考図)、異なる2つの阻害剤が共にウイルス膜融合蛋白質 F のヘッド(頭部)とストーク(茎部)の境界領域に結合することで、ウイルス膜融合蛋白質 F の構造変化を阻害することで感染防御効果が発揮されていることが明らかになりました。
  今回の研究成果により、阻害剤とウイルス膜融合蛋白質 Fの詳細な結合様式が明らかになったことで、阻害剤の改良による抗ウイルス薬の開発が加速することが期待されます。 
    
■効果・今後の展開
  近年、欧米を中心に HIV やインフルエンザウイルスなどにおいて、ウイルス蛋白質の原子レベルでの形に基づく抗ウイルス薬の開発・改良が進められています。今回、麻疹ウイルス膜融合蛋白質 F と 2 つの異なる阻害剤の複合体構造が原子レベルの解像度で明らかになったことにより、麻疹についても同様の手法で抗ウイルス薬開発が可能となります。本研究成果で得られた構造情報は、Protein Data Bank を通じて世界中の研究者が利用可能となります。今回の研究で用いた阻害剤では治療薬としては不十分なため、本研究グループは構造情報を利用した、より効果の高い抗ウイルス薬開発の研究も進めています。
 
  
■発表論文 
論文名:“Structures of the prefusion form of measles virus fusion protein in complex with inhibitors
著者名:Takao Hashiguchi*1,2, Yoshinari Fukuda*1, Rei Matsuoka, Daisuke Kuroda, Marie Kubota, Yuta Shirogane,Shumpei Watanabe, Kouhei Tsumoto, Daisuke Kohda, Richard Karl Plemper & Yusuke Yanagi*2
注釈)1T.H. and Y.F. contributed equally to this work. 2Correspondence to T.H. or Y.Y.
雑誌名: Proceedings of the National Academy of Sciences of USA
  
■謝 辞
  本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED)の感染症研究革新イニシアティブ(J-PRIDE)「構造生物学的手法による麻疹ウイルス中枢神経持続感染の治療薬創出を目指した研究」(研究開発代表者:橋口隆生)および科学研究費補助金、上原記念生命科学財団による支援を受けました。

本研究の構造解析に使用した大規模放射光施設として、以下の施設・事業に支援をして頂きました。
・高エネルギー加速器研究機構 Photon Factory(つくば、日本)
・創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)(東京、日本)

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