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例)研究発表 生命科学科
[2006/05/22]
◇免疫細胞を食い殺す環境ホルモン

生物が本来持っているホルモンの作用を乱してしまう環境ホルモン(正確には外因性内分泌かく乱化学物質)。もともと自然界には存在せず、人工的に人間が作り出したものだ。未来に渡って環境を悪化させ、子孫を苦しめる。
 医学研究院の槇田裕之助教授(環境保健医学)は、環境ホルモンの中のトリブチルスズの次世代影響が研究テーマの一つ。トリブチルスズといえば、イボニシ貝の雌にペニスや輸精管が生じるインポセックス(Imposed Sexの略)という現象を引き起こすことで一躍その存在を知られた。日本近海でも1990年にインポセックスを示すイボニシ貝が発見され、環境ホルモンの怖さを衝撃的にアピールした。トリブチルスズは、船底や魚網に貝類が付着しないように使われる塗料に含まれ、海水中に溶け出して水棲生物に影響を与える。ヒトなどの高等動物には、食物連鎖を介して海産物などから摂取される。すでに日本などでは使用が制限されているが、造船立国などでは未だに使われ続けている。
 槇田助教授はラットを使った実験で、免疫系に及ぼす母子影響(母体への曝露によって引き起こされる子孫への影響)のメカニズムを研究。免疫を作る組織・胸腺への影響はすでに明らかになっている。槇田助教授は、母ラットの曝露によって生まれた子ラットは通常より小さいうえ、胸腺も通常より10-15%発達が抑制されることを初めて明らかにした。しかもその作用は母ラットには影響が出ない程度の曝露レベルで生じた。胸腺は免疫細胞のリンパ球T細胞をつくる組織で、胎児期から幼児期に急速に発達する。トリブチルスズは、ヘルパーT細胞を胎児期から選択的に殺してしまうことが分かったのだ。
 最近、いろんな種類の抗菌グッズ商品が開発されている。槇田助教授によると、紙おむつなどにもトリブチルスズが抗菌のために使用されていた例があるという。槇田助教授は芳香剤や防虫剤によく使われているパラジクロロベンゼン(PDB)の母子影響などについても研究中である。

<イラスト説明>
1.トリブチルスズを摂取した母ラットから生まれた子ラットに見られる成長の抑制
2.トリブチルスズの子ラットに認められた胸腺の発達異常
(いずれも危険率5%で有意だった。)

<参考論文>
Makita Y, Omura M, Ogata R:
Effects of perinatal simultaneous exposure to tributyltin (TBT) and p, p´-DDE (1, 1-dichloro-2, 2 bis (p-chlorophenyl) ethylene) on male offspring of Wistar rats.
J Toxicol and Environ Health A 67: 385-395, 2004

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