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例)研究発表 生命科学科
[2006/05/09]
◇宇宙空間でヒトの血管はどう変化するのだろう

 国際宇宙ステーションの建設が進められ、宇宙への観光旅行がビジネスとして扱われる時代である。一方、帰還後の宇宙飛行士が起立歩行障害を起こしたり、骨量減少、筋萎縮、精神心理的影響なども指摘されている。宇宙医学という分野は、今後ますます重要な研究テーマとして進められていく。
 宇宙飛行士若田光一さんの母校・九州大学の大学院医学研究院の大池正宏助教授(生体情報薬理学)は、重力と血管の関係について研究している。ヒトの血管の総延長は約10キロもあるそうだ。血管の循環機能は高血圧、動脈硬化、血栓、ガンの増殖転移などいろんな病態に関与している。血管の一番内側にある内皮細胞は、血流と血圧の変化による機械的な刺激を感じ取ると、血管平滑筋に指示して血管を拡張縮小させることが分かってきた。では、無重力下の宇宙に行き血管に加わる機械刺激のひとつがなくなるといったいどんな影響が出るのだろうか。ところが地上では無重力環境を作ることは出来ない。そこで大池助教授は逆に過重力の状態にして、それによる血管内皮細胞の化学変化を研究し考察することにした。
 インテグリンという体の細胞と細胞をつなぐ接着分子がある。大池助教授は、この部分が重力の変化・刺激などを敏感に感知していることをつかんだ。さらに感知された情報が細胞内を玉突きに伝達されていく過程を、分子レベルで初めて明らかにした。これによって重力が細胞の骨格をつくっているアクチンという物質の働きや、細胞間の情報伝達の役割を持つアデノシン三リン酸(ATP)の放出などに大きく影響していることなどが分かってきた。
 ただ現時点では、無重力下での実験が出来ないだけに断定的には論じられない。こうした研究が今後私たちの生活とどう関わるのか。大池助教授は「宇宙での病態の解明や療法の開発だけでなく、動脈硬化やガンなど日常、内皮細胞がかかわる病気治療にも生かせる」という。

<写真説明>細胞骨格のアクチンは、3倍の重力がかかると地上(左図)に比べて複雑になっているのが分かる。

<参考論文>Hirakawa M, Oike M, Karashima Y, Ito Y. Sequential activation of RhoA and FAK/paxillin leads to ATP release and actin reorganization in human endothelium. Journal of Physiology. 558: 479-488, 2004.

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