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例)研究発表 生命科学科
[2006/03/07]
◇白血病やアレルギーなどの血液免疫疾患を根絶に導く世界的な研究

 九州大学病院の遺伝子・細胞療法部の赤司浩一教授(血液免疫学)は2005年、日本の優れた若手研究者に与えられる第1回日本学術振興会賞を受賞した。受賞理由は、「造血幹細胞の分化メカニズムについての研究」である。
 私たちの体は異なる形態や機能を持った60兆個もの細胞から成る。この世に生を受けた後は、器官ごとに新旧の細胞が交代しながら生命が維持される。これら多種多様の細胞の供給源が幹細胞と呼ばれる未熟な細胞だ。最近注目されている「再生医療」では、幹細胞を取り出してその生育過程を正確にコントロールする技術が必要となる。赤司教授は、種々の幹細胞の中でも特に造血幹細胞からの血液細胞の発生過程を研究した。
 赤司教授は、1つの造血幹細胞はリンパ球系共通前駆細胞と骨髄系共通前駆細胞に分かれ、さらにリンパ球系共通前駆細胞からはさまざまなリンパ球が、骨髄系共通前駆細胞からは赤血球、血小板、白血球などが出来ることを発見した。加えて、骨髄系からは、アレルギー反応の担当細胞である、好酸球・好塩基球・肥満細胞なども作られることを見つけて、これらの各種幹細胞も世界に先駆けて純粋に分離することに成功した。さらに研究は発展して、これらの細胞にある種の遺伝子を発現させることにより、さまざまな血液細胞の分化をコントロールすることまで可能になった。
 造血幹細胞の分化システムが分かったことで、どこの過程でどの細胞にガン化が始まるのかを究明すれば、血液のガンである白血病の治療標的を定めることが期待できる。また好酸球・好塩基球・肥満細胞などの幹細胞は、アレルギーを根本から絶つための治療標的にもなりうる。このように受賞研究の内容は、今後の細胞・遺伝子治療へと大きく飛躍する大変、先駆的なものである。赤司教授は「造血幹細胞で得られた研究成果をその他の臓器の幹細胞やそれに由来する細胞の研究、さらにそれを用いた再生医療につなげていきたい」と語る。

<写真説明>写真は、遺伝子導入によって造血幹細胞の分化をコントロールした例。リンパ球系共通前駆細胞はリンパ球に分化するが、ある種の遺伝子を人為的に発現することで写真の様にさまざまな骨髄系の細胞を作り出すことが出来る。

<参考論文>
①Kondo M, Weissman IL, and Akashi K. Identification of clonogenic common lymphoid progenitors in mouse bone marrow. Cell 91, 661-672, 1997.
②Akashi K, Traver D, Miyamoto T, and Weissman IL. A clonogenic common myeloid progenitor that gives rise to all myeloid lineages. Nature 404, 193-197, 2000.
③Arinobu, Y., Iwasaki, H., Gurish, M. F., Mizuno, S.-I., Ozawa, H., Tenen, D. G., Austen, K. F., and Akashi, K. Developmental checkpoints of the basophil/mast cell lineages in adult murine hematopoiesis. Proc Natl Acad Sci USA 102, 18105-10, 2005

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