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例)研究発表 生命科学科
[2006/02/21]
◇デジタル人間で最適の治療法を見出す、究極のテーラーメイド医療。

 これは医学の世界というよりも、むしろ理学、工学の分野にさえ思える。人体の生体機能を、そっくりコンピューター内に再現しようという膨大な計画だ。名付けてデジタルメディシンイニシャチブ。「人体の数値シミュレーター開発」と考えると分かりやすい。
 梶山千里・九州大学総長直轄の世界に発信する医工連携プロジェクトである。立案者でリーダーでもある大学院医学研究院の砂川賢二教授(循環器内科)は、「今の基礎医学は臨床に還元されない構造的な欠陥がある」と、この発想の原点を語る。どういうことか。例えばある臨床治験で、心不全患者のために開発された強心薬を使うと死亡率が高くなったり、不整脈の抗不整脈薬を使用した人の方が使わなかった患者さんよりも突然死が増えた。なぜー。今の治療はどこか疾患があるとそこだけを治そうとする。ところが、人体をシステムとして見ると、いろんなパーツを羅列するだけでは全体を理解することは出来ない。確かに遺伝子、染色体、分子生物学など基礎医学の進歩は著しい。だが、その結果生まれた治療薬が逆に人体を脅かしているという現実。
 そこでいろんな臓器やそれで再構成された精緻な人体を、分子レベルから特殊な数値計算でコンピューター上に作り上げる。これに患者さんのデーターを入れ込むと、病態を再現したデジタル患者ができる。これを使ってその患者さんへ使用する薬の副作用、効果など、最適なテーラーメイド治療法をつかむことが可能だ。夢のような話だが、砂川教授が専門の心臓については、八割方は進んでいるそうだ。
 難点は、数値計算に要する時間だ。宇宙開発ロボットの技術以上に複雑な計算は、心臓の1秒後の動きを示すのにスパコンで24時間もかかる。留学先のジョンズ・ホプキンズ大で、コンピューターを講義していたというほどの砂川教授だが、「例えば臓器ごとに担当国を決めて研究成果を持ち寄って、インターナショナルに人体モデルを作るなど、人類の財産として構築したい」と、その思考は世界に向けられている。

〈イラスト説明〉人体が細胞から固体になるまでの生命現象を横軸に、体内の電気的・生化学的・機械的な機能を縦軸に数値的に捕らえてコンピュータで計算し、人体を再現する構想のイメージ図。

〈研究論文〉
1.Watanabe H, 他、 Multiphysics simulation of left ventricular filling dynamics using fluid-structure interaction finite element method. Biophys J. 2004;87(3):2074-85.
1.Nishimura S, 他 Single cell mechanics of rat cardiomyocytes under isometric, unloaded, and physiologically loaded conditions. Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2004;287(1):H196-202.

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