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例)研究発表 生命科学科
[2009/12/21]
◇やあ やあ やあ〈私の海外留学〉吉田 淳一さん 37(臨床・腫瘍外科分野)

 




―移植医療の名門で、外科医・移植医としての“職人気質”を学ぶ。

「動物じゃない、ヒトだと思え」―。
動物を使った移植手術の最中。幾度と無く自分の一挙手一投足に向けて発せられ、胸に突き刺さる言葉。生命と直結する「知、技、心」が凝縮した現場に走る緊張感。どれほど怒鳴られ、身の縮む思いをしたことか。ピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)スターツル移植研究所(Thomas E. Starzl Transplantation Institute )の厳しい指導方針は、スターツル(Dr.Starzl)一門の伝統でもあった。
1963年に世界初の脳死肝移植を行った著名なスターツル教授(83歳Distinguished Service Professor of Surgery:特命外科教授)がいるピッツバーグ大は、これまで世界の臓器移植界を席巻してきた。吉田さんが師事したボス・村瀬紀子准教授もまた、“移植医療の元祖”スターツル教授の傍らで、その黎明期を支えてきた“職人気質”の一人である。その指導は半端ではなかった。
 吉田さんは平成10年、広島大学医学部卒後、九大大学院(第一外科)に進んだ。初めて派遣された愛媛の病院で指導医師の鮮やかな肝切除に驚いた。そしてその指導医が師事した「Dr.Starzl」に憧れを抱いてしまう。大学院4年の途中で休学して2年間、スターツル移植研究所に学ぶ動機となった。
九大第一外科ではすい臓、腎臓の移植研究室に所属。主としてラットのすい臓移植に取り組む。わが国でも1997年の臓器移植法施行によって、脳死移植が可能になったがドナー不足など多くの課題がある。せっかく提供された臓器が、運搬時間を要したり等で、摘出状態が良くないと移植後に虚血再灌流障害を起こして、他の臓器などへも悪影響を及ぼす。数限りある提供された臓器をいかに最良の状態で保存するか。それが留学先での吉田さんに与えられた研究課題だった。
その方法として村瀬研究室では一酸化炭素(CO)を利用する研究が進んでいる。COはヘモグロビンと強く結合して酸素運搬能力を阻害する。つまり危険物質だが、低濃度であれば逆に細胞の保護作用を有することが分かっている。同研究室では小動物の小腸、心臓、腎臓、肝臓、肺移植については、COの有用性をほぼ実証してきた。吉田さんは次のステップとして、人の臨床に近づけるためブタの腎臓を使って研究した。腎機能障害の指標とされるクレアチニンは、腎臓に異常があると血中量が増える。通常、摘出後48時間経った腎臓を移植することは困難とされるが、吉田さんはCOを適量使うことでクレアチンの血中量を半減させる事に成功、大動物の移植にも有用であることを実証した。
 吉田さんの郷里は福岡県の寒村。たった一軒の医院しかなく老医師一人が頑張っていた。「将来無医村になるかもなあ」。父の心配が自分の使命感と進路へ繋がった。「地域医療に貢献したい」。今もその気持ちに変わりは無い。外科医として腕を上げたいと思っている。
一方で、この留学から学んだ“職人気質”の厳しさを戒めとする。「医学は日夜進歩している。これから先、自分が試験管を振る立場ではない一外科医であったとしても、留学で学んだノウハウを生かして、最先端医療を常々心がけて地域の医療に当たりたい」と。来年春には大学院を修了する。

〈写真説明〉1. 42階建て、高さ160mのゴチック建築「学びの聖堂」は、教育機関としては全米1(世界2位)の高さを誇るピッツバーグ大のシンボル。「アメリカの技術力、資源力、歴史の重みに感動した」と吉田さん。2.自宅のアパート屋上で、アメリカ、コロンビア、ブラジル出身の同僚家族とパーティー。(左から2人目が吉田さん)

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