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例)研究発表 生命科学科
[2009/09/14]
◇やあ やあ やあ〈私の海外留学〉二宮 利治さん 40(病態機能内科学)

 


―内科医からメタ解析研究への道を歩む

 大病で手術した母親、医者を目指しながら夢叶わなかった祖父の期待。幼少時に誓った医師への道だった。1993年九大医学部卒後、研修医を経て念願の内科医として、とりわけ腎臓疾患の治療に取り組んだ。さらに九大生体防御医学研究所で免疫学を研究して学位も取得した。その後、思いがけずに勧められた九大久山町研究は、二宮さんにとって疫学・統計という新たな領域への入門となった。久山町研究は1961年以来、九大が全町民を対象に生活習慣病について疫学的研究を続けている。その健診率、追跡率の高さ、研究精度などで世界に誇る研究である。
 「実はそれ以来、はまってしまったんですよ」。今でこそあっけらかんと、そう笑顔で語る胸の内には、当初は多少の葛藤もあった様子だ。
久山町研究に誘われた当時は、生活習慣病に関する本格的なゲノム疫学研究が始まったころだった。心血管病、癌、高血圧、糖尿病などを予防したりその治療法を見つけるために、環境要因に加えて遺伝子要因の面からもアプローチする。ところが、そこで必要とされたのは主として疫学や統計学の専門的な知識であり、それまで市販のソフトを使った簡単な統計しかやったことのなかった二宮さんには、全く未知の世界であった。しかしそれは“はまってしまう”ことになる臨床研究やメタ解析(Meta-Analysis)研究への“助走”であった。
 今日の医療は、経験や権威者の意見などを基にするのではなく、エビデンス(科学的な根拠に基づく治療)が求められる。エビデンスのレベルで最も高いとされているのが臨床研究のメタ解析だ。メタ解析は、同じテーマに関する多くの臨床研究データを収集・統合して統計学的手法で解析することにより、対象としたデータから客観的かつ科学的な結果を引き出す研究のことを言う。
留学先のシドニー大学ジョージ国際保健研究所(The George Institute for International Health,The University of Sydney)は、臨床研究やメタ解析では、世界的に進んだ研究がなされている。John Chalmers教授のもとで、二宮さんは、同研究所が持つ脳血管障害と降圧治療、糖尿病と降圧治療に関する世界的規模の臨床研究データを基に、それぞれ腎疾患とのかかわりについて解析を行っている。(参考論文)さらにWHO(世界保健機構)などが後押しする降圧剤の公正な評価を目的にした共同研究グループBPLTTC(Blood Pressure Lowering Treatment Trialists Collaboration)でも、高齢者の心血管病予防と降圧療法に関する臨床研究のメタ解析を行った。
 二宮さんにはひとつハンディがあった。それは語学力。到着したばかりで住まいを探すのに、不動産屋に電話しても要領を得ずに切られる事8回。バーガー店でカプチーノを注文したはずなのに「a cup of tea」が運ばれてきたり。レンタカーに追突されたときも、先方が一方的にまくし立てて逃走した。この時はしっかり相手ナンバーを警察に報告して全額弁償させたがー。疫学や臨床研究をするには、一層会話力を問われる場合が多いという。それでも二宮さんは「語学は余り気にしないで、留学の希望とチャンスがあれば将来に生かしてほしい」と勧めている。

〈写真説明〉
1.ジョージ国際保健研究所が入ったキング ジョージ5世 ロイヤル プリンス アルフレッド病院。
2.研究スタッフと。(後ろ中央が二宮さん))
〈参考論文〉Ninomiya T, Perkovic V, de Galan BE, et al. Albuminuria and kidney function independently predict cardiovascular and renal outcomes in diabetes. J Am Soc Nephrol 2009 ;20:1813-21

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