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例)研究発表 生命科学科
[2009/08/11]
◇やあ やあ やあ(私の海外留学)有信 洋二郎さん 39(遺伝子・細胞療法部助教)

 


― 血液細胞の分化メカニズム解明に業績。

海外では、研究室の垣根を越えた活発な議論と数多くの共同研究が盛んに行われる。それが新しい事実に到達するための近道だからである。有信さん(1994年、九大医学部卒)が留学したハーバード大学のダナ・ファーバー癌研究所・腫瘍免疫エイズ学講座(Dana-Farber Cancer Institute, Department of Cancer Immunology and AIDS)での研究もそうだった。
 有信さんは当時、ダナ・ファーバー癌研究所で助教授として研究室を主宰していた現九大医学研究院の赤司浩一教授(病態修復内科学教授)に、2003年から師事した。赤司教授は、「造血幹細胞の分化メカニズム」(2006年3月7日付け欄参照)、分かりやすくいうと血液の幹となる細胞からどのようにして、白血球や赤血球等の機能する特殊化した細胞へ分化するのかの経路図を完成させたことで世界的に知られる。有信さんはその分化経路図作成研究チームの一員だった。このときに共同研究したのが、同じ建物の別の階にいたK Frank Austen教授。同教授は、アレルギー研究の世界的な権威の1人である。
アレルギー性疾患は、私たちが持つ免疫が本来の目的とは異なって過剰に反応する等異常に機能することで起きるが、これに関わる細胞には血液中にある肥満細胞や好塩基球がある。有信さんは、これらの細胞の分化のメカニズムを、研究に取り組んで2年後についに突き止めたのだった(注・参考論文)。
 ダナ・ファーバー癌研究所があるボストンは、かつてイギリスから清教徒が上陸したアメリカ発祥の地という歴史や、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学等の多くの著名大学・研究機関の他、文化、芸術、スポーツ活動の拠点としても知られる。有信さんが渡米した翌年には、大リーグのボストン・レッドソックスが86年ぶりにワールドシリーズを制覇して街中が沸き立ち、その2年後に松坂大輔投手が入団するなどで日本からの観光客が急増していた。野球のほか小沢征爾氏が長年音楽監督を務めたボストン交響楽団のオペラ鑑賞など、有信さんの休暇も有意義だった。時には350kmほど離れたニューヨークまで日本車を運転して出かけ、マンハッタンの摩天楼に“突入”して、イエローキャブとクラクションを鳴らし合いながら走ったりもした。
 アメリカで長男が誕生したときに、48時間で退院させられたり、病気治療の内容からあれこれ医療に介入してくる保険会社。社会のシステムや日常のサービスでは日本では考えられない体験をした。それでいて「なぜか居心地の良さ」も感じた。
 「学問的なステップアップはもちろんだけど、それ以外にも留学して得られること、考えさせられることは多い。世界中から研究者が業績に関わらずに集まって貪欲に挑戦している。自信を持って留学しよう」と有信さんは勧める。有信さんの研究は、白血病やアレルギー・関節リウマチなどの血液免疫疾患の治療と関わっている。「基礎研究の臨床分野への応用のスピードの速さは目覚しく、次々に新規創薬・治療に繋がっている。患者さんのために基礎・臨床両輪の医者であり続けたい」―穏やかな語りの中に、新たな決意が秘められていた。
〈写真説明〉 1.ハーバード大学医学部本部があるゴードン講堂。
2.テクニシャン部門のスタッフと。(右後ろが有信さん)
〈参考論文〉Arinobu Y, Iwasaki H, Gurish M, Mizuno S, Shigematsu H, Ozawa H,
Tenen DG, Austen KF and Akashi K. Developmental checkpoints of the basopohil/mast cell lineages in adult murine hematopoiesis.Proc Natl Acad Sci USA. 102: 18105-18110, 2005

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