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例)研究発表 生命科学科
[2009/06/26]
◇やあ やあ やあ〈私の海外留学〉吉永敬士さん 39(九大病院消化器・総合外科助教)

 ― 摩天楼の夕映えのもとで研究

アメリカ最大規模の私立大学であるニューヨーク大学。全米からの人気が高いだけでなく、世界120カ国以上からも留学生が集まった総合大学である。過去31人ものノーベル賞受賞者を輩出しているという点だけからでも、アカデミックさが想像される。
  吉永敬士さんは平成9年に九大医学部を卒業し研修医を経た後、九大生体防御医学研究所で分子腫瘍学を研究した。その研究領域の権威者の1人が、このニューヨーク大学メディカルセンター(New York University School of Medicine)細胞生物学部門(Department of Cell Biology)のDaniel B Rifkin教授だと紹介されて師事した。
  吉永さんの専門は、がんの浸潤にかかわる細胞外マトリックスの研究。細胞外マトリックスは、細胞と細胞のすき間に存在する物質で、細胞の分化をはじめ免疫反応や病気など私たちの生命活動すべてに関与しているとされる。吉永さんはこの細胞外マトリックスの出現に大きな働きをするTGF-β1という蛋白質に注目した新しい研究領域に挑戦している。
  吉永さんが留学先で行った研究は、変異のノックインマウス(本来のTGF-β1遺伝子座に変異型のTGF-β1遺伝子を導入する形で樹立した遺伝子改変マウス)を解析することであった。メディカルセンターは摩天楼の一角、エンパイア・ステートビルのライトアップが美しく映えて見える通りに面した素敵な環境にあった。対照的に研究室はいたって地味だった。ロシア2人、フランスと中国各1人、合わせて5人のポスドクと助手2人のスタッフ。顕微鏡のほこり取り用と研磨用のスプレーを間違えたために、1人で顕微鏡を洗浄する羽目になったり、それでいてよそのラボの機器類も遠慮なく使える自由さが居心地良かった。
  研究を始めてまだ2、3ヶ月目だった。生後5週目あたりで実験中のマウスに大腸炎が、8週目以降には胃、盲腸、直腸、肛門にがんが発症することをつかんだ。発がんのメカニズムを完全には解明できなかったものの、遺伝子改変操作によってTGF-β1のシグナルが低下しているために、がん遺伝子の発現が高まった結果であることを、このマウスで実証することが出来たのだった。(参考論文参照)
  住まいはのどかな郊外のアパートだったが、ヒスパニック系住民が多く例年、感謝祭の時期はもう大変な騒動。留学を巡るいろんな回想の中で吉永さんは「将来研究者としての人生を考えれば留学は重要」だと後輩にも勧める。幼少時、祖父をがんで亡くし医学を志した。目標は「新しい分子標的抗がん剤を開発したい」。

〈写真説明〉研究室のボスDr.Rifkin教授と。 

〈参考論文〉
Yoshinaga K, Obata H, Jurukovski V, Mazzieri R, Chen Y, Zilberberg L, Huso D, Melamed J, Prijatelj P, Todorovic V, Dabovic B, Rifkin DB. Perturbation of TGF-b1 association with LTBP yields inflammation and tumors PNAS 105: 18758-63, 2008

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