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例)研究発表 生命科学科
[2009/05/20]
◇やあ やあ やあ〈私の海外留学〉吾郷 哲朗さん 40(病態機能内科学助教)

 ― AHAで師弟そろってKatz Awardを受賞。
「名門大学といわれる所などいくつかの候補先にも直接行って面接を受けた。十分に納得できる道を、自分で切り開こう」。吾郷さんはこれから留学を希望する後輩に、こうエールを送る。吾郷さんにとっては①自分の研究に即したところ、②やりたい研究をやらせてくれる、③給与待遇が良い、④家族の生活環境が良いことが選択条件だった。
後に留学先のボスとなったニュージャージー州立医科歯科大学(University of Medicine and Dentistry of New Jersey New Jersey Medical School)・心血管研究所(Department of Cell Biology and Molecular Medicine)の佐渡島純一教授との出会いは、偶然が重なったもののそんな熱心な選択活動の一環から生まれた。
  2004年夏、アメリカで開かれた心臓学会で初めて出会った佐渡島教授は、アメリカ在住の著名な心臓研究者で、その時に九大医学部の先輩だということも知った。九大卒後、ハーバード大に留学しそのまま第一人者として活躍中だった。動脈硬化や脳卒中などに繋がる血管病と酸化ストレスについて興味を持っていた吾郷さんにとっては、尊敬する大研究者であった。幸いにも留学希望を伝えると、快諾していただけた。
  活性酸素は、生活習慣病やがん、老化などへの関与が指摘されている。吾郷さんは活性酸素が血管へ及ぼす影響、疾患と遺伝子要因の関係などを主に研究している。留学先での研究で、活性酸素が増えると、ある特定の蛋白質が酸化されてその機能が弱まり、それによって心臓肥大に繋がっていることを初めて見出した。2007年、この研究成果を毎年1回アメリカで開かれる世界的な心臓学会であるAHA(アメリカ心臓協会)で発表した。毎回この場で、若手研究者5人が発表する中から、最も優れた1人に与えられるKatz Awardを受賞した。くしくも約10年前には佐渡島教授も選ばれており、師弟での受賞となった。この論文「活性酸素種による心肥大発症機構の解明」は、帰国直後の2008年5月にアメリカの医学雑誌Cellに掲載された(参考論文を参照)。
ニュージャージー州はアメリカ北東部。住居は約500世帯が住むコンドミニアムで、プール、フィットネス、バーベキューコンロまでそろった24時間セキュリティーの恵まれた環境。「観光都市ではない」(吾郷さん)が、ハドソン川のすぐ向かいがニューヨーク・マンハッタン。アメリカの象徴・自由の女神像があるリバティー島がすぐそばにあり、家族でよく行ったそうだ。女児2人(留学時は3歳、6ヶ月)がよく病気したが、病院がままならず「帰国して日本の医療体制のすばらしさを再認識した」。
帰国後は九大病院の医師と併せて、医学研究院病態機能内科学の脳循環研究室で,動脈硬化発症機構の解明、脳梗塞後の再生機構の解明,脳梗塞のバイオマーカーを探す研究などを続けている。「活性酸素の研究をさらに進めて臨床へフィードバックしたい」。その気持ちが留学後、より強く意識されてきた。

〈写真説明〉
ニュージャージー州立医科歯科大学で研究仲間と。前列右端が吾郷さん。
〈参考論文〉
A redox-dependent pathway for regulating class II HDACs and cardiac hypertrophy.
Ago T, Liu T, Zhai P, Chen W, Li H, Molkentin JD, Vatner SF, Sadoshima J.
Cell. 2008; 133 :978-93.

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