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例)研究発表 生命科学科
[2007/07/24]
◇やあ やあ やあ 中村 哲さん 60――医師はもっといろんなことに首を突っ込んでもいい。

 九大医学部のOBで、くしくも海外で医療奉仕活動を続ける中村哲氏と川原尚行氏の二人が、このほど九大の開学記念講演会に初めて登壇された。二人が会われたのも初めて。忙しいスケジュールをぬって、それぞれにインタビューした。なぜ海外医療奉仕なのか。返ってきた共通した答えは、意外にも「人が行かないから行くだけ」であった。


 パキスタン、アフガニスタンで活動する中村さんは、1984年にJOCS(日本キリスト教海外医療協力会)からパキスタン・ペシャワールに、主としてハンセン病治療のために派遣された。ペシャワールはアフガニスタンとの国境にあり、アフガン難民も多い。以来23年間、ハンセン病だけでなく医療チームを編成して無医地区の巡回診療も始めた。その活動を支援するために日本にペシャワール会が組織された。中村さんは同会の現地代表。
 これまでにペシャワールに基地病院とアフガニスタン東部山岳地帯に苦難の末3つの診療所を開設した。2000年からは大干ばつのアフガニスタンで医療活動と併せて水源確保のために1500本の井戸を掘削、灌漑用水路建設などを指導する。現在、年間約10数万人が治療を受け、40数万人が水の恩恵を受けている。
 1979年から10年続いたソ連のアフガニスタン侵攻、2001年10月からはアメリカ軍の空爆下、内戦下にあって、間違って機銃掃射を受けたり強盗に遭うなど何度も危険な目に遭遇しながら、険しい山岳や深い谷を越えて診療し、水源を切り開き続ける。
 身の安全保障は?
「武器ではなく地域住民との硬い信頼の絆だ。利害を越え、忍耐を重ね、裏切られても裏切り返さない誠実さ、それが武力以上に強固な安全を提供してくれる」。部族が違い、言葉もペルシャ語、パシュトゥン語、ウルドゥー語でコミュニケーションをとる。
 「誰も行かないから行く」。中村さんは、現在の医療活動と水源工事関係の比率は1対9で、水源工事にウエイトがかかる。技術は専門家にアドバイスを仰ぎ、ほとんど独学で習得した。医療活動の方はパキスタン側ではほぼ充実してきたそうで、今年からはアフガニスタン側にシフトする。
 中村さんにとっての医師とは?
 「子どものころ蝶の標本を見て昆虫の世界に魅かれた。しかし厳格な父を説得するためとりあえず医学部に。それから農学部に転向しようと思った」。だから「医師への憧れも高邁な意図など全くなかった」そうだ。伯父である作家火野葦平の「花と龍」の主人公夫婦玉井金五郎とマンは祖父母である。幼少時から火野の著作を読み、「弱者は率先してかばう、職業に貴賎はない、どんな小さな生き物の命も尊ぶ」という倫理観をマンさんから学んだ。そこに現在の中村さんのバックボーンを見る。
 中村さんに、後輩医学生へのメッセージをお願いした。
 「今の医師は余りに専門化しすぎてはいまいか。もっとトータルに診る目が欲しい。最先端医療に置いていかれるからと大学病院や都市部から離れたがらない。だから医師不在の地方が出てくる。皆が求めている医学と違う方向に行っている気がする」。さらに「患者さんは一人ひとり違うのに、同じマニュアルの治療法では困る。医学・医療技術を学ぶことだけに熱中するのではなく、医師はいろんなことに首を突っ込んでみる事が大事ではなかろうか」。    
(次回は川原尚行さん)
<写真説明> 水源工事でユンボを運転する中村さん。
メモ
ペシャワール会 1983年発足。福岡市に本部を置き、会報発行、募金活動、ワーカーの現地派遣などを行う。〒810-0041 福岡市中央区大名1丁目10-25、上村第2ビル603号。電話(092)731-2372。会員約1万2千人。

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