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例)研究発表 生命科学科
[2010/03/23]
◇加齢黄斑変性の予防と治療に期待――発症原因となるマーカーを発見

 

 

加齢黄斑変性(AMD)は、網膜の中心にある黄斑部に障害が生じて見えにくくなる病気で、欧米では成人の失明原因のトップ。日本でも高齢化と食生活の欧米化などから増えてきた。視力が低下する原因の多くが、網膜の下にある脈絡膜から異常な血管が新しく生じて網膜を障害する脈絡膜血管新生(CNV)である。だが、なぜ異常な血管が生じるのか、まだはっきりと分かっていない。
現在、AMDの治療には血管新生を促進させる血管内皮増殖因子(VEGFA)の働きを抑える薬が一般に使われている。しかし、視力の改善例は約3分の1で、副作用も懸念されている。
医学研究院眼科学分野所属の武田篤信医師(九大医・平成8年卒)らは、ケモカインという細胞間に情報を伝達する役目を果たす蛋白質の受容体「CCR3」がCNVに関係していることを初めて突き止めた。受容体CCR3はこれまで喘息などのアレルギーや炎症に関わっていることが分かっている。武田医師らは、CNVが原因のAMDの組織標本からはCCR3を検出できたが、他の眼疾患及び正常眼の組織標本からは検出できなかった。このことは、受容体CCR3を持つ細胞組織で血管の新生促進が起こることを説明できる。また、マウスを使った実験で、CCR3が脈絡膜血管内皮細胞を活性化させて、それが血管新生を促進させていたことも分かった。
 さらに、CCR3の働きを抑えると、血管内皮増殖因子の働きを抑える治療薬の効果よりも血管の新生をより効果的に抑えることができたうえ、治療薬による副作用としての網膜への悪影響も現れなかった。
次に、血管新生を自然発症するマウスを使った実験で、CCR3に対する抗体を注入した眼底造影撮影の結果、注入したマウスからは明らかにCNV部位にCCR3抗体によるシグナルが検出され、造影された(写真参照)。しかもまだこの段階では網膜には浸潤していなかった。こうした結果から、CCR3が血管新生を早期に検出するマーカーとして利用できることが分かった。
これらの研究は、武田医師がアメリカのケンタッキー大(University of  Kentucky)眼科のDr.Jayakrishna Ambati研究室に留学時代からスタッフと取り組み、その論文「加齢黄斑変性におけるケモカイン受容体CCR3の役割」(参考論文)が、昨年7月、科学雑誌Natureに掲載された。
武田医師は「CCR3を標的にすることで、網膜に障害が生じる前段階から血管新生の検出が可能になり、AMDの早期発見早期治療にも繋がるだろう」と話している。

〈イラスト・写真説明〉(右図)眼球模式図と脈絡膜新生血管(CNV)模式図。
(左写真)CCR3抗体による造影撮影でCNVを検出。矢印が造影されたCNV。枠内は蛍光部位の拡大図。
〈参考論文〉Takeda.A. et al.:CCR3 is a target for age-related macular degeneration diagnosis and therapy. Nature, 460:225―230. 2009


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