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例)研究発表 生命科学科
[2010/03/04]
◇医学歯学教育に貢献する篤志献体―― 白菊会活動に支えられて

 


  さだまさしの小説「眉山」(平成19年刊行)は、献体を決意した母とその娘を主人公に、生と死を考えさせる内容で、映画化されるなどの反響を呼んだ。故郷に残した母が病気で余命いくばくもない。東京で働く一人娘は聞き慣れない「献体」のことを知り、自分と未だ見ぬ父親との絆を初めて確かめる―。
献体とは、自分の遺体を大学医歯学生の実習教育のために無条件、無報酬で提供する行為で、生前に登録しておく。夏目漱石も東京帝国大学医科大学(現東大医学部)に篤志献体して、現在も保管されていることは知られる。それほど医学教育に必須の解剖学を学ぶに必要なご遺体は、当時も足りなかった。このために各大学では献体を呼びかける運動組織を設けてきた。
九州大学白菊会は、昭和46年7月に組織された。窓口は九大医系学部等事務部総務課。登録には本人と家族の同意が条件になる。白菊会やりんどう会などと大学によって名称は異なるが、篤志解剖全国連合会として同じ歩調で運動を進めている。その支援機関が財団法人日本篤志献体協会である。人権尊重の立場を法的に明確にするために昭和58年に、「医学および歯学教育のための献体に関する法律」(献体法)が成立、施行された。九大白菊会には、現在約2200人が登録している。
医学を学ぶ人たちには、人体の構造を知る解剖学は不可欠である。九大医学部解剖学教室には、オランダ語からきたキュンストレーキ(人体模型)と呼ばれる紙製の教材が保存されている(写真参)。日本が近代西洋医学に目覚めた幕末から明治初期にかけて、同種のものが多く輸入されているが、これは国産で九大の前身、県立福岡病院時代に使われたようだ。一部欠損しているものの精巧で、解剖学が未熟な時代に先人たちの勉学ぶりを伝える貴重な資料だ。
解剖には、人体の構造を調べる正常解剖、死後すぐに病変を調べる病理解剖、変死体の死因を調べる法医解剖があるが、献体は正常解剖として貢献する。現在九大医学部では2年次に約4ヶ月にわたって解剖実習を行う。それは同時に、脳死や臓器移植など新たな論議がされる今日、「医師としての倫理観、生と死への畏敬の念をしっかり学ぶ場でもある」(倉岡晃夫系統解剖学准教授の話)。
 九大医学部、歯学部では毎年秋に、篤志献体者の慰霊祭を行う。「医者となる覚悟を学んだ」「見ず知らずの自分たちに医学の基礎を教えていただいた」と、例年3年次の医歯学生たち代表が感謝の辞を述べ、献花する参列者の追悼の列が続く。

〈写真説明〉
▽毎年行われる篤志者慰霊祭(平成21年10月)
▽九大医学部解剖学教室に保存され ている紙製のキュンストレーキ(人体模型)。


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