TOP > 研究情報 > 詳細

研究情報

キーワード検索
例)研究発表 生命科学科
[2009/07/30]
◇小児の固形悪性腫瘍に放射線併用免疫遺伝子治療法を開発

子供の固形悪性腫瘍の中で最も多いのが神経芽腫である。その中で、1歳以上の進行例は、既存の集学的治療(外科療法、化学療法、放射線療法)では、生存率が40%に満たない。小児外科学(田口智章教授、田尻達郎准教授、田中桜医員)と米満吉和特任教授(消化器総合外科)らの研究グループは、マウスにおける前臨床試験で、活性化した樹状細胞と放射線照射を併用した免疫遺伝子治療によって、神経芽腫に対して極めて高い治療効果を挙げることに成功した。
私たちの体は通常は免疫機能によって“外敵”から守られているが、その“外敵”を最初に発見して処理するのが樹状細胞(DC)だ。研究グループは、体内から抽出したDCにセンダイウイルスベクター(SeV)という遺伝子組換えウイルスを導入するとDC自体が活性化されることを見いだした。そこで、活性化した樹状細胞(SeV/DC)を体内に投与することにより、自身の体細胞に由来する腫瘍に対して、抗腫瘍効果が期待できるのではないかと考え、研究を進めた。
  研究グループは、神経芽腫を発育させたマウスに活性化SeV/DCを週1回、計3回腫瘍内に局注投与する治療を行った。マウスに神経芽腫を接種した3日目から治療する早期治療群と10日目から治療する後期治療群に分けて試みた結果、早期治療群ではある程度の抗腫瘍効果が認められたが、後期治療群では、無治療群とほとんど差がなかった。そこで、さらにSeV/DC局注の3日前から毎日、少量の放射線を腫瘍部に照射し、その後、SeV/DC局注を週1回、計3回投与した。その結果、後期治療群においても実験を行ったマウス8匹のうち5匹から腫瘍が完全に消え、残る3匹もほぼ治癒状態だった。(参考論文参照)さらに、サルを使った大動物安全性試験でもSeV/DC投与の安全性について確認された。一方、小児がん患者由来のDCに対しても、SeVを作用させることで活性化効果が得られたことから、臨床における抗腫瘍効果が大いに期待されている。
これらのデーターをふまえて、研究グループは臨床研究プロトコルを準備中であり、年内に九大医系学部等倫理審査委員会の承認を経て、厚労科学審議会に諮り、臨床試験に入りたいとしている。
 このほか、田尻准教授らは、神経芽腫の悪性度を早期に診断し、的確な治療を行うための判定法についても発表している。(2007年11月26日掲載)

〈写真説明〉A.発育した腫瘍。B.抗腫瘍効果なし。C.若干の抗腫瘍効果。D.著名な抗腫瘍効果。

〈参考論文〉
Tatsuta K, Tanaka S, Tajiri T, Shibata S, Komaru A, Ueda Y, Inoue M, Hasegawa M, Suita S, Sueishi K, Taguchi T and Yonemitsu Y: Complete Elimination of Established Neuroblastoma by Synergistic Action of g-Irradiation and DCs Treated with rSeV Expressing Interferon-b Gene.Gene Therapy 2009;16:240-251

ページの先頭へ戻る