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例)研究発表 生命科学科
[2008/05/28]
◇忘れられていた脂質ホルモン―腸疾患に関係か?

研究が地道であればあるほど、科学者にとって新たな発見の喜びは大きく、医学発展への貢献度も高い。医化学分野で行われている研究はまさにそうだ。医学研究院の横溝岳彦教授らは、このほど腸管の機能や病気と深くかかわっていると見られる新しいホルモンを発見した。
 横溝教授は以前、ロイコトリエンB4と呼ばれる脂質によって活性化される受容体の遺伝子BLT1を発見した(2007年4月10日掲載)。その研究過程で2000年に発見したBLT1と構造の良く似たBLT2という受容体について、ロイコトリエンとは別の物質(リガンド)があるはずだと想定して、研究を継続してきた。
 BLT2受容体が小腸に多く発現することを突き止めた上で、小腸内の脂質類を根気強く調べた。医化学分野の奥野利明助教は、BLT1には作用しないがBLT2を活性化する脂質画分が小腸にあることを見出し、質量分析法と複雑な計算によってその分子構造を解読することに成功した。すると、これは約20年前に、その存在が報告されていたもののほとんど研究が行われていなかった脂質であることがわかった。血管を収縮させる生理活性脂質(トロンボキサンA2)と同時に産生されるものの、ゴミ扱いされて忘れられていた物質であった(図参)。一般的に生理活性脂質には炭素が20個存在するのに、この物質には17個しかないことも興味深い発見だ。第二外科から医化学に派遣されている大学院生・岡崎寛士は正月返上で実験を行い、12-HHTが肥満細胞の走化性(細胞が特定の化学物質によって動かされる性質)を引き起こすことを示した。
 12-HHTと呼ばれるこのホルモンは、体の中でどのような働きをしているのか。腸に多く存在することをヒントに行われた研究によって、ある腸の病気に関わっていることがわかってきた。BLT2遺伝子を持たないマウスを作成して、さらに地道な研究が続く。

<図の説明> 細胞膜を構成する脂質に存在するアラキドン酸からプロスタグランジンH2を経て12-HHTとトロンボキサンA2が産生され、別々の受容体を活性化する。
<参考論文> Okuno T, Iizuka Y, Okazaki H, Yokomizo T, Taguchi R, Shimizu T: 12(S)-Hydroxyheptadeca-5Z, 8E, 10E-trienoic acid is a natural ligand for leukotriene B4 receptor 2. J. Exp. Med. 205, 759-766, 2008


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