TOP > 研究情報 > 詳細

研究情報

キーワード検索
例)研究発表 生命科学科
[2008/02/21]
◇世界で初めて麻疹ウイルスの体内侵入方法をキャッチ!

 2007年、日本各地で大学・高校生などに麻疹が集団発生し、改めてその強い感染力が証明された。
 医学研究院の柳雄介教授(ウイルス学)らが、麻疹ウイルスは私たちの免疫細胞にあるSLAMという受容体とくっついて侵入、感染することを、初めて解明したことはすでに見た(06年6月30日掲載)。新たに同教授らの研究グループは、麻疹ウイルスが体内に侵入する方法を捕えることに、世界で初めて成功した。九大生体防御医学研究所との共同研究で、このほどアメリカの科学アカデミー紀要に発表された。
 麻疹ウイルスの表面は、H蛋白質とF蛋白質という2種類の膜で覆われていて、SLAMと結合するのはH蛋白質だ。柳教授らはその結合状態を調べる方法として、ヒト細胞を使って大量のH蛋白質を作り結晶化した。これにX線を当ててその構造を見ることに成功した。6枚の羽根を持つプロペラの形をしており、分子の一部分だけがアミノ酸が露出していて他は糖鎖に覆われているのが分かった。この露出部分がSLAMと結合していたのだ。ワクチンで感染から予防できたのは、露出部分に抗体が出来てSLAMとの結合を妨害しているからに他ならなかった。SLAMとの結合部位はウイルスの生存にとって重要なので、抗体から逃れるような変異が起こらない。
 麻疹はワクチンで感染を予防できる理由も、これで判明したわけだ。ところがインフルエンザやエイズの場合は、ワクチンで抗体を作ってもまた新しい型のウイルスに変異するので、発病を完全に抑えられない。だが今回の研究によって、糖鎖をうまく利用してウイルスの表面を覆ってしまえば、麻疹と同じように防御できる可能性が出てきた。柳教授は「抗ウイルス薬や新しいワクチンの開発にも繋がる」と話している。

〈イラスト説明〉X線構造解析により明らかにされた麻疹ウイルスの受容体結合蛋白質(H蛋白質)は、真上から見ると6枚の羽根を持つプロペラ構造だった。分かりやすいように色分けしている。
〈参考論文〉Hashiguchi T, Kajikawa M, Maita N, Takeda M, Kuroki K, Sasaki K, Kohda D, Yanagi Y & Maenaka K: ”Crystal structure of measles virus hemagglutinin provides insight into effective vaccines” Proc Natl Acad Sci USA 104:19535-19540,2007

ページの先頭へ戻る