TOP > お知らせ・イベント一覧 > 詳細

お知らせ・イベント情報

キーワード検索
例)研究発表 生命科学科
[2016/03/29]
環境医学分野・清原裕教授の最終講義

  去る平成28年1月8日、基礎研究B棟にて、医学研究院・基礎医学部門・環境医学分野教授・清原 裕先生による最終講義が行われました。清原先生は福岡県久山町住民の生活習慣病の疫学調査として世界的に有名な久山町研究に長年にわたり取り組まれてきました。さらに、平成18年2月1日に環境医学分野の教授に就任されて以降も久山町研究を精力的に推進されてきました。
  
  最終講義は、「日本人の生活習慣病の時代的変化と今日の課題 ~久山町研究からのメッセージ~」というテーマで久山町研究を研究内容に加えて、住民の追跡調査の苦労話を交えながら、学生にわかりやすく講義されました。久山町研究は55年前に脳卒中の実態調査として始まりました。その後この半世紀の間に虚血性心疾患、高血圧、代謝性疾患、メタボリックシンドローム、認知症へと研究テーマが広がり、社会の要求に先駆けて研究成果を発表されています。久山町研究の特徴は40歳以上の全住民を対象として、前向きの追跡調査を行い、臨床医が行っている研究のため、健診のみならず、自宅訪問も行うために、発症者をより正確に把握できることだと述べられました。さらに、健診の受診率は80%を維持し、追跡調査の追跡率が99%以上で、これまで追跡不能となったのはわずかに3名という驚異的な追跡率を維持する久山町研究スタッフの努力と協力して下さる久山町の保健師さんや住民のみなさんに深く感謝の意を表されたことが印象的でした。
  
  近年、日本人の動脈硬化性疾患の病態とその危険因子が大きく変貌を遂げており、危険因子の中でも糖尿病の合併症が重要だと言及されました。耐糖能レベルの悪化とともにアルツハイマー病、血管性認知症のいずれの発症率も有意に上昇し、糖尿病をはじめとする糖代謝異常の増加が認知症増加の要因のひとつになっている可能性があると指摘されました。さらに、血糖値と認知症の各病型のリスクとの関連を検討され、空腹時血糖値とアルツハイマー病および血管性認知症発症との間には有意な関連は認められなかったが、負荷後2時間血糖値が高くなるほどアルツハイマー病や脳血管性認知症のリスクが有意に上昇しており、認知症発症に関連している要因は食後高血糖である可能性を述べられました。
  
  久山町における認知症発症要因の研究成果が社会的にも非常に注目され、清原先生は平成26年10月29日に総理大臣官邸で開催された内閣府第4回健康・医療戦略推進本部(全閣僚会議)に招聘されました。安倍首相の前で高齢者認知症の実態と予防対策のあり方について説明され、50年にわたる研究内容を9分間で話すことはとても大変だったと当時を振り返えられました。清原先生の内閣府での講演内容は平成27年1月に策定されたわが国の省庁横断型の新しい認知症の総合的対策プランである認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)に反映されました。
  
  あらためまして長年にわたり九州大学大学院医学研究院に多大なご貢献をなされた清原 裕先生に深甚なる感謝を申し上げたいと存じます。
(文責 環境医学分野講師 田中昭代)

ページの先頭へ戻る