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論文発表

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例)研究発表 生命科学科
[2016/09/23]
Association Between Diabetes and Hippocampal Atrophy in Elderly Japanese: The Hisayama Study.
Association Between Diabetes and Hippocampal Atrophy in Elderly
Japanese: The Hisayama Study.
 
   

Hirabayashi N, Hata J, Ohara T, Mukai N, Nagata M, Shibata M, Gotoh S, Furuta Y, Yamashita F, Yoshihara K, Kitazono T, Sudo N, Kiyohara Y, Ninomiya T.

Diabetes Care. 2016 Jul 6. pii: dc152800. [Epub ahead of print]

http://care.diabetesjournals.org/content/early/2016/07/01/dc15-2800.long

  久山町研究は、福岡県久山町において1961年に創設された生活習慣病の疫学研究で、2012年には通常の循環器健診に加えて65歳以上の住民を対象とした頭部MRI検査を実施しました。近年、糖尿病と認知症とくに海馬萎縮を特徴とするアルツハイマー病の関連が注目されていることから、今回の研究では2012年の循環器健診と頭部MRI検査の成績を用いて、地域高齢者における糖尿病と脳萎縮、海馬萎縮の関連を検討しました。
  今回の研究では、65歳以上の高齢者1238人の頭部MRI画像を用いて対象者の全脳容積(TBV)、頭蓋内容積(ICV)、海馬容積(HV)を測定しました。糖尿病に関連する様々な因子とTBV/ICV比(全脳萎縮の指標)、HV/ICV比(海馬萎縮の指標)、HV/TBV比(海馬特異的な萎縮の指標)との関連を、他の交絡因子の影響を調整しながら検討しました。
  
  糖尿病者では非糖尿病者と比べて、TBV/ICV比、HV/ICV比、HV/TBV比の多変量調整後の平均値が有意に低値でした。すなわち、糖尿病者では非糖尿病者と比べて脳萎縮とくに海馬萎縮を来たしやすいと考えられました。75g経口糖負荷試験の成績を用いた検討では、これら3つの指標はいずれも糖負荷後2時間血糖レベルの上昇とともに有意に低下しましたが、空腹時血糖レベルとの間には明らかな関連はありませんでした。つまり、脳萎縮や海馬萎縮は空腹時高血糖よりも食後高血糖とより強い関連があるのかもしれません。また、非糖尿病者と比べて糖尿病者ではその罹病期間が長くなるにしたがってTBV/ICV比、HV/ICV比、HV/TBV比は有意に低下しました。さらに、中年期(24年前すなわち1988年)の健診時に既に糖尿病と診断されていた群では、老年期に糖尿病と診断された群や非糖尿病群と比べてHV/ICV比、HV/TBV比が有意に低値でした(図)。
  
  以上の成績から、糖尿病は脳萎縮とくに海馬萎縮の有意な危険因子であり、食後血糖が高いほど、糖尿病の罹病期間の長いほど、より海馬萎縮が進行しやすいことが示唆されました。久山町研究ではこれまでに、前向き追跡研究(コホート研究)や剖検脳を用いた検討により、糖尿病とくに食後高血糖がアルツハイマー病の発症や老人斑の形成と関連することを報告しています。これらの研究と今回の研究により、糖尿病など糖代謝異常がアルツハイマー病の発症におよぼすメカニズムの解明につながることが期待されます。

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