九州大学医学部

研究内容

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生化学分野の研究テーマ

食細胞による生体防御機構に関する研究

食細胞は、体内に侵入してきた病原体を察知し、それを捕らえて(食胞の形成)殺菌する。食胞での殺菌には、種々の機構が関わっており、そのひとつが食細胞NADPHオキシダーゼによる食胞内へのスーパーオキシド(O2‾)の生成である。食細胞NADPHオキシダーゼは貪食時に活性化されO2¯を生成し、O2‾から派生する種々の活性酸素が強力な殺菌剤として機能する。一方、活性酸素の反応性の高さは宿主にとっても有害である。 そのため、オキシダーゼには活性酸素の生成を厳密に制御するための巧妙なシステムが備わっている。オキシダーゼの酵素本体は膜タンパク質であるgp91phoxで、その活性は細胞質のタンパク質因子との

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相互作用により調節されている。この数年間に、gp91phoxのホモログが次々と同定され、NADPHオキシダーゼ(Nox)ファミリーを形成していることが明らかになり、細胞増殖やガン化に関与していることが示された。私達は、貪食時における食細胞NADPHオキシダーゼ及びNoxファミリーの活性制御機構を中心に研究を行なっている。

炎症性遺伝子の発現調節に関する研究

細胞応答時における遺伝子発現の新規誘導は、必要な場でのみ特定の遺伝子産物を産生する極めて合理的な機構である。特定の応答に関わる個々の遺伝子が正しい発現パターンを形成することが、細胞応答の遂行にとって重要である。炎症性サイトカインや抗菌タンパク質に代表される炎症性遺伝子は、典型的な発現誘導型の遺伝子である。これらは、種々の炎症性刺激に応答して短時間のうちに誘導され、その遺伝子産物は役割を終えると速やかに分解される。

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 我々は、以前同定した新規因子IκB-ζの発現・機能解析を中心に、炎症性遺伝子の発現パターン形成に関わる解析を進めている。遺伝子発現が転写や分解のレベルでどのような調節を受けることにより最終的な発現パターンが決定されるのか、またその発現パターンが細胞応答にどのように影響しているのかを解明する。

細胞極性決定の分子機構

種々の細胞が正常に機能し調節されるためには、細胞の極性(cell polarity)が適切に形成されることが必要である。この細胞極性の確立に重要な蛋白質群であるPar3-Par6-aPKC複合体は、線虫から哺乳類まで進化的に保存されたシステムである。 

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我々はこの複合体に結合する新規分子をいくつか見いだしており、これらの分子を中心に、細胞極性を確立するための分子機構について解析を行っている。上皮細胞の極性形成(=tight junction形成)をモデル系に用いる一方で、細胞極性分子が細胞の運命決定に及ぼす影響についても海馬ニューロンを用いて解析を行っている。

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左図は当研究室でクローニングした新規なPar3結合蛋白質Par3BMP1が上皮細胞のTJ形成(極性形成)に関与することを示したもの。Par3BMP1は膜蛋白質であり、C末端でPar3と結合することで機能していると考えられる(Δ4aaはPar3と結合できない変異体)。

細胞骨格の統合的制御に関する研究

細胞骨格は、その構成因子である単量体の重合・脱重合によりダイナミックにその構造を変化させて、細胞運動をひきおこす。中でもアクチン細胞骨格は、重合した直線状のアクチン繊維がミオシン繊維と「収縮装置」を形作ることで効率的な力の発生が可能となり、細胞レベルでの形態変化のみならず個体レベルでの運動・姿勢制御から呼吸・循環といった生命機能の本質部分を担っている。このアクチン収縮装置の収縮メカニズムはこれまでの研究により基本的に解明されてきたが、収縮装置の形成・維持機構に関する知見は非常に乏しい。収縮装置を構成する直線状のアクチン繊維も、重合により形成・維持されており、そのアクチン重合は厳密に制御されていると考えられるが、その詳細はほぼ未解決である。 私達は、収縮装置形成におけるアクチン重合の分子機構を中心に、アクチン収縮装置の形成と恒常性維持のメカニズム解明に挑んでいる。
(九州大学教育研究プログラム・研究拠点形成プロジェクト)

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Last-modified: Fri, 15 Dec 2017 12:30:14 JST (248d)
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