九州大学病院検査部  2004年12月1日
検 査 だ よ り
第25号

■日本臨床検査医学会学会賞(奨励賞)を受賞して■
    藤井 智美

  このたび、「造血器腫瘍関連遺伝子の定量的検出法の検討」というテーマにて、日本臨床検査医学会学会賞を受賞いたしました。御指導賜りました検査部濱崎直孝部長ならびに木下幸子前技師長に深くお礼申し上げます。
 白血病に多くみられる染色体相互転座により形成された病型特異的なキメラ型遺伝子は、腫瘍化と密接に関連しているといわれ、キメラ型遺伝子を検出することは、疾患の早期発見や治療効果の判定および微小残存病変(MRD)の存在を知る上で有用な情報となります。その遺伝子検査の代表的方法としては、染色体核型分析、FISH法による染色体検査、polymerase chain reaction(以下PCR)法による遺伝子検査があげられ、白血病の診断、治療効果の判定に利用されています。
 今回検討しましたPCR法によるキメラ遺伝子の定量は、PCR反応の1サイクル毎に、PCR産物の量を蛍光シグナルとして検出する方法で、キメラmRNA由来のcDNAを迅速にPCR産物として定量することができます。今回、定量的PCR法を検討し、院内日常検査として導入しました。この検査が白血病の診断及び治療に役立てることができますように、高い精度を有した検査として供することができるよう、努力していきたいと考えております。
 最後になりましたが、本検討におきまして、御協力、御指導下さいました病態制御内科牟田耕一郎先生に深謝いたします。
 

■お知らせ■
化学検査室より
  
  新規項目 グリコアルブミン
8月1日よりグリコアルブミン(以下GAと略す)が院内測定項目となりました。
〔糖化されたアルブミン/総アルブミンラ 100〕を%で表示しています。
・過去2週間前の血糖値の平均とよく相関します
・従来から糖尿病の指標に用いられているHbA1cより現在の状態に近い期間の血糖をモニターできます。
・HbA1cに比して約3倍の値(y = 3.5984x−3.5815 r = 0.89 n=100)ですのでより感度良く血糖状態 の変動を示します。
・基準範囲は11〜16%(糖尿病治療ガイド 日本糖尿病学会)です。

  測定法変更 フェリチン
8月1日よりフェリチンの測定法が化学発光免疫法からラテックス免疫比濁法へと変更になりました。
・基準範囲は従来同様で男性:40−465、女性:6−138 ng/mlです。
・この変更によって化学一般検査と同時に依頼される場合、採血管が一本で済むようになりました。
■検査技術の進歩と向かうところ■
検査部技師長 栢森裕三
 9月下旬、横浜で開催された第36回 日本臨床検査自動化学会に参加した。この学会は、現在の医療における臨床検査の進歩を目の当りにすることができる集まりであり、内外から多くの検査機器の展示が同時に行われる学会でもある。毎年アメリカで開催される アメリカ臨床化学会(AACC,American Association of Clinical Chemistry) での展示規模からすれば小さいが、それでもその年に開催されるAACCの機器展示で展示された分析装置やその技術的な情報がほぼ同時期に知ることが出来る。
 臨床検査における自動化(主に生化学検査)は1960年代の黎明期に始まるが、その時はアメリカ製の装置で1項目のみの測定装置であった。そして、1970年代から始まった本格的な開発競争によって多数検体、多項目の同時分析技術によって20〜30項目を同時に時間当たり300検体もの処理が出来る分析装置が1990年始めごろに出現してきた。そして、時期を同じくして1980年代頃には血液検査、凝固・線溶検査、免疫検査関係専用の自動分析装置が開発されてきており、測定精度は手作業の用手法の時代と比較して格段に向上し、現在では変動係数(CV)が1%以下であるのは当たり前となっている。また、装置の技術的な面は日本がリードしており、日本の技術力は世界最高水準で、特に生化学自動分析装置は日立、東芝がトップシェアを誇っている。
 今後の自動化の展開を今学会展示から見ると輸血検査、尿沈渣の自動化技術が改良され、本格的に広く検査業務に利用されることが予想される。後者の検査は顕微鏡を利用した形態検査であり、検査技師の熟達度と技能が要求される検査であるが、今後は経験の浅い検査技師でもすぐに結果を報告できるようになると思われる。さらに今回の展示に見られた今後の動向としては2つ程の流れがあった。1つは、サービス部門としての臨床検査が如何に迅速にuser ori-entedなデータ報告ができるかというコンセプトと患者のベットサイドで実施する検査 (POCT, Point of Care Testing)試薬あるいは機器の進歩である。形態検査に代表される血液像、細菌染色像などの画像をリアルタイムに検査し、送信する技術はコンピュータの発達に伴って可能になっている。そしてPOCTは現在、検査部が一部の診療科で実施している血液ガス・電解質・一部化学検査が実施できるi-Statもその一つであるが、今回の学会でも講習会を含めた講演会が盛会をもって開催されたように今後全国的な広がり見せるものと考える。今1つは、医療過誤防止に関するコンセプトである。例えば、輸血の異型輸血防止や採血管の取り間違えによる事故防止に関しては、すでにいくつかの装置やシステムが利用されているが、以前と比較して大きな改良が行われており今後の展開が注目される。
 このように検査における分析技術やソフトは日進月歩で進み、さらに便利で使い易い装置やシステムになっていくが、われわれ技術屋集団としてはそこに魂を注ぐ努力とサービスを受ける側の立場を十分に理解し、業務を行うことが必要であると考えている。“必要は発明の母” の格言のように日常業務から新たな発見と検査技術を進歩させる力が生まれるのだと再確認した。

正しい検体の採取から検査部までーその15
( 濱崎直孝 )
 

 高温快晴猛暑の今夏の前半から一転して台風の上陸が続き、あっという間に朝晩は寒さを感じるような今日この頃になった。前回は適切な採血管の選び方について述べた。今回は採血後、検査をする場所までの適切な検体の保存、特に、許容される検体搬送時間とその間の保存温度について述べる。

検体搬送時間と温度の影響
 検体を検査室へ搬送するにはいろんな方法がある。検査室が非常に近いか病院内にあれば搬送の時間はほとんど問題ない。しかしながら、このような場合でも、採血から遠心までの時間が1時間を越えないように注意しなければならない。検査項目によっては特別な添加剤を加える必要がある。乳酸の定量にはフッ化ナトリウムとシュウ酸、アンモニアの定量にはホウ酸ナトリウムとセリンを含んだ EDTA溶液中に採血して検査室まで運ぶ。遊離ヘモグロビンの定量をしなければならない時は EDTA 血を注意深く取り扱う必要がある。検査室への運搬にはエアシューターや搬送システムなどを用いることも可能であるが、搬送中に検体に振動などの力が作用しないように注意しなければならない。このような検体を用いて生化学、血液学や血液ガス分析が可能である。全血を長い時間がかるような長距離搬送はしないほうが良い。凝血した検体を4℃、23℃、30℃保存した時のグルコース、カリウムや無機リン酸などの変化を図1に示す。

 Na+/K+ ―ポンプ活性があるので赤血球からのカリウムの遊離は室温で保存していると最小限にくい止められる。赤血球からのカリウムの遊離は4℃や30℃以上で保存すると増える。グルコースは保存温度を上げると減少が激しくなる。無機リン酸濃度は高い温度で保存すると増加する(図1)。血清中のホスファターゼ活性が上昇するためと考えられている。全血を23℃で2時間保存するとグルコースは約10%低下する。患者の検体では以上述べたような時間と温度の影響が、図1に示した以上に増強される場合がある。例えば、時間と共に低下するグルコース濃度は白血球が増えている検体では減少の程度は強くなる。γ-GT活性が高い検体ではアンモニアの増加はもっと著しくなる。検体中に抗体が異常に多く含まれている場合は血球数に影響がでてくる。

 電解質やいろんな生化学検査項目の中には郵送などで送っても4日間は測定値に変化がないものがある。ヘモグロビンや赤血球数も安定である。対照的に、ヘマトクリット、赤血球容積やビリルビンは減少する。白血球分類をする場合は採血後3時間以内に塗抹標本を作らなければならない。検体を搬送する場合は、血液やその他の体液が漏れないように注意する必要がある。郵送をするときなどは、振動や気圧の変化に耐えられるような梱包でなければならない。

以上、検体搬送時の注意点をまとめた。
 

ちょっと一息♪                      ペンネーム:白いかもめ
 検査部鉄分検査室よりI

《福博の市内電車》

  9月下旬福岡市地下鉄3号線(七隈線)の開業日が、来年2005(平成17)年2月3日に決定と発表された。天神南―橋本間、12km、16駅を24分で結ぶ路線で、既に全線で試運転が行われている。2月4日から始まる沿線の福岡大学の入学試験に間に合わせた開業日となっている。開業早々地下鉄3号線は、その輸送力を発揮することになりそうだ。但し、3号線のリニアーモーターの車両は、1、2号線の車両より少し小振りである。この開業に合わせて、天神地下街も南へ230m延伸し天神南駅地下コンコースと連絡する。
 福岡市地下鉄の最初の開業区間は、1981(昭和56)年7月26日開業の1号線(空港線)の室見―天神間、5.8kmであった。その後徐々に路線が延びて、1986(昭和61)年11月12日に2号線(箱崎線)箱崎九大前―貝塚間が開業し2号線が全通した。次いで1993(平成5)年3月3日に1号線(空港線)博多―福岡空港間が開業し1号線が全通した。これにより現行の地下鉄網が完成した。この現行のY字型の路線網は、博多湾岸沿いに走っていて、内陸部は空白である。この空白部分を埋めるように3号線が走ることとなる。
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 <鉄分>が高値の人ならば、「では地下鉄登場前はどうだったのだろう?」と思うもの。
 実は、市内電車がトコトコと福博の街を走っていたのだった。現在では想像しにくいほど街の表情は変化してしまっている。もちろん、九大病院の前にも市内電車は走っていて医学部前電停があった。
  地下鉄出現前の福博は全国的に希少な陸上の市内公共交通の様相を呈していた。陸上の公営交通機関が存在していなかったのだった。近年バス経営困難のため、各地で市営バスが民営化されようとしている状況からは、転倒したように、以前から福岡市営バスは存在していなかった。地下鉄の登場で消えていった市内電車も市営ではなかった。福博は「民活」という言葉が、流行っているはるか前から「民活」だった。
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 日本で最初の市内電車は、1895(明治28)年2月1日開業した京都の市内電車であった。伝統文化を守る都市の印象がありそうだが、進取の気性のある京都が市内電車の先鞭をつけた。これを受けて全国各地で市内電車建設熱が起こった。 
 ところで、明治期の流行の一つは、勧業博覧会の開催である。この辺の話は、荒俣宏の守備範囲だが、現在のようなメディアが充実に至っていない明治期、「百聞は一見に如かず」の精神で現物を見る場が設けられ西欧近代に追いつけの意識が横溢していた。1910(明治43)年3月、福岡市で第13回九州沖縄八県連合勧業共進会が開催されることとなった。肥前堀を埋め立てて会場とした。現状の福岡城の堀から想像しにくいが、黒田長政によって設計された福岡城は、水城であり、城の四周をぐるりと水路が巡っていた。南側の堀は、大堀から那珂川に通じていた。概ね那珂川左岸側の国体道路がそれにあたる。1927(昭和2)年の東亜勧業博覧会では、大堀の約半分が埋め立てられ、閉会後会場跡地を整備して大濠公園とした。大濠の水面は、それまで倍の広さがあり壮大なものだった。福岡の近代化は、堀の埋め立てと共にあった。
 閑話休題、この第13回九州沖縄八県連合勧業共進会に合わせて、福博電気軌道により共進会開催2日前の3月9日に大学前―西公園間と呉服町―博多駅前(現祇園町)が開業した。福岡市も市内電車を計画していたが、経営見通しは厳しいと判断し、中央の民間資本に協力を願い開業したものであった。
 一方、これに対抗して地元資本家により博多電気軌道が設立され、1911(明治44)年市内循環線を目指してまず博多駅前(現祇園町)―取引所前(後の須崎)を開業させた。その後千代町―博多駅前間を1914(大正3)年4月22日に開業させ、博多駅前―渡辺通り―天神―築港−千代町と経由する循環線を開通させた。二つの民間鉄道が、市内電車を運行する状態は、1934(昭和9)年11月1日の両者の合併で誕生した福博電車により解消された。
 その後最終的には、1942(昭和17)年5月9日その他の会社も含めた合併により西日本鉄道が誕生し、西日本鉄道福岡市内線として運行された。最盛期には、貫線11.9km、循環線7.0km、呉服町線0.8km、城南線5.0km、吉塚線1.5km、貝塚線3.3kmの路線が市内に張り巡らされていた。博多どんたくの時には、電飾を付けた花電車が晴れがましく福博の街を走った。
 戦後の復興期の重要な市民の足となっていた市内電車は、1960年代から車社会の中で重要度を次第に失っていった。そして高速大量輸送の地下鉄建設により、最後まで残っていた循環線と貝塚線が、とうとう1979(昭和54)年2月11日に廃止となった。この日は、終日運賃が無料となり多くの人々が乗り納めをし、別れを惜しんだ。
 車社会化で交通渋滞解消などの理由で1960年代から全国的に市内電車がばたばたと廃止され始めた。現在市内電車が走る都市は、鹿児島、熊本、長崎、広島、岡山、松山、豊橋、富山、函館、札幌等19都市と少ない。
 ところが、日本で次々と廃止されていた同時期、一旦廃止された市内電車が復活する現象が、Europeの諸都市で起こっていた。
 戦災で崩壊したワルシャワやドレスデンは、戦前の市街地を克明に復元したのに対して、日本では、丸焼けになったのを機に道路の拡幅や再開発が行われた。石造文化と木造文化との差異か。高層石造建築物で覆われたEuropeの都市では、町並みそのものがその都市のアイデンティティーとなっているためにそうした復興の仕方が行われた。車社会化した場合日本では、都市再開発と一体となって道路拡幅が行われる例が多い。Europeの戦後復興のあり方からして、こういう手法は選ばれにくかったのが一つの理由だったのか、都心部への車の流入を抑制し、遊歩の楽しみを復活させ、都市再生を図る一環として市内電車が復活してきたのだった。
 但し、単に市内電車を走らせるというのではなく、トランジットモールと一体化した形での復活である。衰退した中心部を活性化するため公共交通機関を整備し、車の中心部への流入の抑制と歩行者専用道の整備を図るもの。この中に位置付けられるものの一つが、light rail transit (LRT)と呼ばれる新しい概念の市内電車である。低床車両で、高齢者や乳児やベビーカー利用者などにも乗降が容易な設計になっている。言わば、横方向のエレベーター、エスカレーターという考え方である。中心部ではゆっくり走り、郊外では速度を上げて走る。また原則的に道路は、LRTと車の車線が分離してあり、車の渋滞に巻き込まれることなく定時性を保って走れるようになっている。また、建設費が、地下鉄の20分の1、新交通システムの10分の1と安上がりで、工期も短い。
 人口約170万人のウィーンの場合、LRTの路線網は総延長237km、駅数1,147と世界一である。中小都市の約30万人のカールスルーエでは、LRTがドイツ鉄道に乗り入れている。約25万人のストラスブールや約16万人のグルノーブルなどにもLRTが走っている。また、車社会の進んだアメリカでも、ダラスやサンノゼなどにLRTが走っている。
 日本においては車社会の進展とともに市内電車の廃止や、これに代わる地下鉄の建設が主流の交通政策が各都市で進められていた。熊本市でも市内電車を廃止しようという動きがあったが、最終的に市内電車を残す方針をたてた。1997(平成9)年熊本に日本で最初の低床車両が導入された。その後各地の市内電車に導入が進められている。現在熊本では、市内電車と熊本電鉄を相互乗り入れするLRT化案が検討されている。またJR西日本は、吉備線と富山港線のLRT化を検討している。
 地球温暖化に関するCO2排出削減を記した京都議定書では、1990(平成2)年に比して2008(平成20)年〜2012(平成24)年に日本は6%の削減を目指すことになっている。このため車の交通量を減らす必要に迫られている事と、2000(平成12)年11月施行の交通バリアフリー法とが相俟って日本でも本格的なLRTが誕生する可能性が高まってきている。増大する車の交通量に対して道路を作ることで対処してきた国土交通省も最近LRT整備の方向に舵を切っている。もちろん都市中心部での車の交通量が減れば、大気汚染の軽減も期待でき健康面にも良いと言える。
  先頃10月22日〜24日高知で第7回路面電車サミットが開催された。この会合は、路面電車(市内電車)愛好家と運営事業者の交換の場として設けられ、路面電車の維持 ・ 発展を目的とし、1995(平成7)年に札幌で第1回目が開催された。
  こうした動きを受けて、つい最近天神を中心とする福博中心部の活性化を考える民間団体が、トランジットモール化とそれに伴うものとしてのLRTの導入の提言を行った。都心地区を包囲するように郊外大型店舗がいくつも出店し、中心部の地盤沈下が進んでいる。この対策として提言されたものである。福博の街から四半世紀前に姿を消した市内電車が近い将来復活する可能性が、ささやかながら出てきた。<鉄分>が上昇しそうな話である。
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  ところで、福岡市内線の貝塚線の廃線跡が、注意すると今尚点在していることに気付かされる。<鉄分>高値の人は一目でそれと判別できる。「鉄道は、急には曲がれない!」ということで鉄道線は、車道と異なり独特の緩やかな曲線を描いている。この曲線の感覚が分かるとかなり<鉄分>が高いと言える。異常高値ともなると更に廃線を走る市内電車までもが幻視されたり、チンチン、ガタンガタン、ゴトンゴトンというような音までも幻聴されたりするようになるから要注意!
感染制御のために(3)
検査部医員  内田 勇二郎
白血球減少時の血液培養分離菌の現状(一般細菌について)
 造血器腫瘍や固形腫瘍に対し、強力な抗腫瘍剤が臨床で使用されるようになりこれに関連して重篤な感染症が報告されるようになった。現在、好中球減少時の発熱に対し、Febrile Neutropeniaと位置付け、治療ガイドラインが作られている。
 九州大学病院において、2003年6月から2004年7月までに血液培養から分離された一般細菌の割合は、FIG.1のようになっている。グラム陽性球菌が全体の59.7%を占め、グラム陰性桿菌は19.5%、真菌は5.8%であった。その中で最も多い菌種は、CNSの29.9%であり、ついで黄色ブドウ球菌(MSSA+MRSA)13.0%、肺炎球菌を含めたStreptococcus属 11.0%であった。九大病院における1997年の血液分離菌割合は、グラム陽性球菌71株/136株(52.2%)、グラム陰性桿菌35株/136株(25.7%)であり、全国的に言われているようにグラム陽性菌の増加、グラム陰性菌の減少が認められていた。
 血液培養陽性時の白血球数が1000/μl以下の患者から分離された菌の割合は、グラム陽性球菌が74.0%を占め、グラム陰性桿菌は13.0%であった(FIG.2)。これは、Febrile Neutoropenia の治療ガイドラインにもあるように、初期治療として第V・W世代セフェムやカルバペネム系抗生剤を使用しているためと考えられる。実際、CNS(25株すべてメチシリン耐性)、S.mitis(6株中3株がペニシリン系抗生剤耐性もしくは中間型)、E.faecium、MRSA、ESBLなど耐性傾向の高い菌種が分離されている
 細菌が血液培養から分離された場合の問題点として、汚染菌との鑑別がある。にきびの原因となる皮膚常在菌であるPropionibacterium属や環境菌であるBacillus属の細菌が分離された場合のほとんどは、汚染菌である可能性が高い(TABLE 1)。皮膚常在菌である表皮ブドウ球菌を中心としたCNSは、汚染菌である可能性も高いが、血管内留置カテーテル先端より分離される菌の85.6%を占めているため(FIG.3)、汚染菌として考えるだけでなくカテーテル感染の可能性が非常に高いことも視野にいれなければならない。
 以上のことより、白血球減少時の初期治療で抗生剤から免れる細菌として、薬剤耐性の緑膿菌やESBL産生菌などのグラム陰性菌だけでなく、グラム陽性球菌の頻度が非常に高いことを考慮しながら治療薬の変更を検討すべきである。また、カテーテル感染が疑われる場合には、患者の状態を考慮しながら積極的にカテーテルの抜去を行い治療すべきであると考えられる。

CNS: Coaglase negative staphylococci (コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)
MSSA: Methicillin-susceptible Staphylococcus aureus
MRSA: Methicillin-resistant Staphylococcus aureus
ESBL: Extended spectrum β-lactumase (基質拡張型β-ラクタマーゼ産生菌)

■別府の楽しい3年間を振り返って!!■  西岡 祥子

 平成13年から3年間、九州大学内の人事交流の為、大分県別府市の九州大学生体防御医学研究所附属病院の検査部に配属されました。平成15年10月からの統合で病院名も別府先進医療センターに変更となりました。
 検査部は,伊東技師長始め常勤4名,非常勤1名,パート1名の計7名で生化学、血液・凝固、細菌・免疫、検尿・生理(心電図・ 肺機能)を各1名で、細胞診・ 病理組織を2名で検査しています。宿直はありませんがポケットベルを5名(常勤)で1週間持ち、夜間・ 土日祝日を対応していました。皆通勤時間は20分以内ですが、呼び出しが続くとちょっとキツイ日もありました。平成14年からは輸血製剤の発注・ 管理も検査部が行うようになり、土日も家に待機している状態でした。現在はポケベルも日替わりでやっているそうです。
検体数は化学や血液で100件前後と少ないのですが、1名なので誰かが休んだ時は、休みのバックアップに化学や血液の機械を午前中担当し、午後から自分の細菌のルーチンをすることになり、なかなか大変でした。
私は細菌担当でしたが、九大病院でやっと1年間細菌をしたばかりで、最初の1ヶ月間はバタバタでした。それに院内感染対策会議等の会議への出席が多く、それを終えて残りのルーチンをするのでなかなか忙しい毎日でした。
 宿舎は病院まで徒歩5分で、毎朝温泉に入り出勤するという優雅な生活でしたが、2年目には泥棒とご対面し,3年目にはガラス戸を切られる(本人はぜんぜん気づきませんでしたが)怖い思いもして、隣の吉武先生やまた姉のようにある時は身元引受人になってもらった古賀看護部長に大変お世話になりました。
別府は温泉を連想しがちですが、桜がきれいな土地柄でもあります。なかなか波乱にとんだ生活でしたが、桜に迎えられ、桜に見送られた3年でした。

■外注検査オーダーの変更のお知らせ■

 平成16年8月1日より、外注検査オーダー項目が保険適用検査のみとなりました。また保険適用の外注検査のみ業者・価格の設定がされました。よって、今まで通り指定された業者のみへの発注となります。ただし、保険適用外の外注検査については、業者・価格の設定は行われていませんので、希望業者に検査部を通し発注をお願い致します。ご不明な点等ありましたらご連絡下さい。よろしくお願い致します。


 ○保険適用 外注検査(オーダー掲載あり)
   オーダーを使用し、検査部を通し発注して下さい。
  (診療用検査については運営費交付金での支出です。研究用検査については
   外部資金での支出となります。)

 ○保険適用 外注検査(オーダー掲載なし)
   外注特殊検査申込書を使用し、検査部を通し発注して下さい。
  (診療用検査については運営費交付金での支出です。研究用検査については
   外部資金での支出となります。)

 ○保険適用外 外注検査
   各業者仕様の申込書を使用し、検査部を通し発注して下さい。
  (全て外部資金での支出となります。)

                        問合せ先:経理課用度掛  興梠 5062
                             検  査  部  外注 5768
                             検  査  部  受付 5771

■編 集 後 記
  早いもので今年最後の検査だよりとなりました。今年は検査技師の藤井(智)が臨床検査医学会の学会奨励賞を受賞しました。最近は毎年のように技師の誰かが類似の賞を頂いており、これも新しい検査へ向けた九大病院検査部技師たちの努力の成果であると率直に喜んでいます。感染制御シリーズも、今回は細菌検査室で集めた細菌分離データを示して、検出細菌に対する見方と抗生剤使用の適正化について触れています。今年は他大学病院で院内感染症の発生とその対処が大きな問題となった事例もありました。良いシステムを構築しても、結局サーベイに不断の努力を重ねなければ意味がなく、他科とも協力しながら今後もその努力を怠らず情報発信を継続して行きたいと考えています。相変わらず鉄分検査室も力が入っております。今年は新幹線開業、来年は地下鉄3号線と検査項目が増え続けているようです。
                                        (康)