九州大学病院検査部  2005年8月10日
検 査 だ よ り
第27号
■検査の充実を目指して その3
 梅雨入り直後は空梅雨かと思った矢先、九州北部は梅雨前線の通り道となりその結果、ダムの貯水量は満水状態。これで水不足は解消され一安心との情報がメディアから流れています。まず天気の話題が先に出るのは田畑を耕し、収穫して生活する農耕民族ならではの生活習慣であると何かの本で読んだことがありますが、科学が発達した現在においても自然を制御するのが難しい現状です。それでは人間が決めたことを制御するのはそれほど難しいことではないかというと、そうでもないものもあります。
 最近話題になり、それについて思っていること2題。
「計測」という分野に限れば、基本的な度量衡である重さや長さの単位は世界共通に利用されています。その結果、物や人の流れが活発になり、産業が発達し世界中の人たちがその恩恵に与ることができます。しかし検査データはどうかと言うと国や県単位、あるいは地域によっても異なる場合があります。幸いなことに、九州大学病院が置かれている福岡県では約90%以上の医療施設で検査データの共有化ができていますが、その範囲を全国に広げた場合にはまだまだそこまでは達成されていないのが現状です。最近の医療に関してメディアに目を向けますと電子カルテの話題が載っています。つい先日も徳島県の複数の医療施設間で共有できる電子カルテが導入されたことが某電子版新聞に載っていました。詳細は述べられていませんでしたが、検査データは病院間で同じ品質(正確度)で比較できているだろうか、という疑問をまず感じました。もしできていれば病院間で電子媒体による検査データを共通に利用できる点で患者診療がスムーズに実施でき患者のメリットが大きく、病院を移る度に検査する必要がないため医療費の抑制効果も期待されます。
 今ひとつは、臨床検査における大きな話題について。この話題とは、検査データ共有化に連動したISOについてです。国際規格であるこのISOの中に臨床検査に特化したISO 15189が2003年に制定され、実際の臨床検査の現場に導入されつつあることです。このISO 15189とは従来の品質管理、品質保証の国際規格ISO 9001と技術的能力があり、分析試験結果の品質を保証するISO 17025の性質を併せ持つものです。品質マネジメントシステム構築による検査の質の向上、リスク管理を含む管理体制の改善と経営の効率化、検査結果の信頼性の向上と患者サービスへの貢献の証明としてこのシステムを導入する検査室は今後増加することが予想されます。我々検査部としてもこの制度をいち早く導入し、各診療科へのサービスと引いては患者サービスの貢献をしたいと考えております。
■尿中CPR検査用の蓄尿について
尿C−ペプチド安定化剤1袋(10g)を蓄尿用容器に前もって入れておきます。
   内容:炭酸ナトリウム96.4g
      SDS(n-ドデシル硫酸ナトリウム)3.6g
   作用:尿のpHをアルカリ性にし尿中CPRの分解を防ぎ、SDSは殺菌効果があるため細菌の繁殖を抑え、
      尿中CPRの測定値の安定化をする。
 尿中CPR
   インスリン治療患者でIRI(インスリン、immunoreactive insulin)を測定しても外因性インスリンやインス  リン抗体のために意味をなさない。プロインスリン1分子の分解によって、インスリン1分子とCPR(C-ペプ  チド)1分子が生じることから、血中CPR、尿中CPRが測定される。プロインスリンが増加する場合は、尿に  はプロインスリンが排泄されないため、尿中CPRを測定する。
   インスリン治療の糖尿病患者以外にも、インスリノーマ、インスリン自己免疫症候群などでも測定される。
 注意点
 ・尿生化学検査(U-24Hラベル)には使用できません。
     アルブミン、電解質の測定値に影響があります。別の日に蓄尿するようにして下さい。
 ・アジ化ナトリウムは廃棄が制限されていますので、上記を使用してください。
 ・尿中CPRは、食事による影響、尿量や腎機能の影響を受ける。日差変動もみられるため、3日程度の連日測    定が好ましい。
 ・血中CPRと同時にオーダーされた場合、血中CPRのみ保険点数の算定がされる。

■正しい検体の採取から検査部までーその17
( 濱崎直孝 )

血液検体が検査室に届いた後の処理:血清分離・分注

 
 前回は検体を“新鮮”な状態で保存するための要点について述べた。今回は検査部に届いた検体の処理について述べる。現在の検査部の主要分析機器は自動分析であるから、検査室での主要な作業は適切な検体の種類を測定に用いることと、その検体調整をするために適切に遠心分離処理をすることである。我々の(九大病院)検査部では自動前処理機器が導入されているのでこの部分も自動で行われるが、ここでは、遠心処理の適切な処理についてポイントを記す。

1.遠心
 血液検体が凝血しているのを確認したら遠心して血清分離を行う。通常、凝血までの時間は30分であるが、抗凝固療法を受けている患者や凝固系因子に異常がある患者では凝血までの時間は長くなる。血清や血漿を得るのには、1,000Gから1,200G のスピードで10〜15分間遠心する。凝固検査用のクエン酸採血検体は2,000G、15分間の遠心が必要である。遠心力 (relative centrifugal force, rcf) は次式で計算できる。
  rcf = (1.118) x (105)x (r) x (n2)
ここで、r はローターの中心から遠心管までの距離(p)で、n は遠心スピードを1分間の回転数(rpm)で表現したもの、1.118 x 105は変換定数である。遠心は20℃-22℃で通常行うが検査したい酵素や化合物が熱に不安定な場合は冷却遠心(4℃)すべきである。しかし、冷却遠心は赤血球からのカリウムの漏出を促し、血清カリウムが上昇する。

 血清(または血漿)分離後に再度遠心して、血清(血漿)を採取してはならない。血漿と赤血球の比(ヘマトクリット)が変化すると分析する物質の濃度が変化して測定誤差の原因となる。血清分離剤が入っている検体も再遠心してはならない。ヘパリン採血検体は血小板が血漿分画に残らないように充分に遠心する必要がある。血漿分画に血小板が混入するとカリウム、LDH、酸性フォスファターゼと無機リン酸が血小板から漏出しこれらの測定値が上昇する。抗凝固剤の有無に関係なく微小採血管はアダプター付の微小遠心機で遠心し(6,000-15,000G、90秒間以上)血清や血漿を分離する。遠心機は定期的に回転数などを点検する必要がある。

2.遠心後の処置
 遠心後、血清(血漿)は分析機へ直接移される。ピアス方式が装着されている分析機で開栓せずにサンプリングできることが望ましい。ピアス方式が装着されている分析器が装備されていいない検査室では、開栓してサンプリングしなければならない。その場合、検体からの水分蒸発を防止するためには分析直前に開栓しなければならない。検体をいくつかに分注して検査する必要があるときは、分注検体の識別方法、保存法や感染などに関する安全性など分注前の検体と同様に取り扱う必要がある。感染性ウイルスなどを持っている可能性がある血液検体に触れるのを防ぐために、できるだけ検体の分注を避けるようにすべきである。分注搬送を機械化するのも一つの方法である。

以上、今回は血液検体が検査室に届いた後の処理について述べた。
■新人紹介■
棚町 啓之 みなさん、こんにちは! 2度目の「はじめまして」です(検査だより 第18号 新人紹介コーナー参照)。2年前に無事(?)人事交流が終了し、古巣 大分大学に戻ったのですが、ここ九大病院での仕事が忘れられず、約20年ぶりに就職試験を受けカンバックすることになりました。今回は人事交流の「お客様」としてでは無く、伝統ある九大病院の一職員として努力していきたいと思っていますので、御指導のほどよろしくお願い致します。最後になりますが、唯一の趣味は高校時代から乗り始めたオートバイで、Kawasaki Z400FX、Yamaha FZR250、Honda NSR250と乗り継ぎ、現在はHonda X4(満8歳)に乗っています。休みの日には、海に山に繰り出し気分転換を兼ねた?「爆走」をしています。同趣味の方、一緒にツーリングに行きませんか?
渡邉 恵利子 2月から外来検査室勤務になりました渡邉恵利子です。内科から検査部に異動になってまだ5ヶ月ですが、外来検査室の立ち上げという大きな取り組みの一員として貴重な経験をさせていただきました。プライベートではサッカー観戦が趣味で、今年の3月にはセリエA、チャンピオンズリーグ、リーガエスパニョーラ観戦のため本場イタリアとスペインへ飛び、公私共に充実した毎日を送っています。普段は外来棟にいますので皆さんと顔を会わせる機会は少ないかと思いますが、よろしくお願い致します。
牛之M さやか 昨年の6月から内科外来検査室に勤務し、今年の2月に第3内科から検査部に異動になりました。今は、生理機能検査室で、肺機能検査や心電図検査をしています。肺機能検査は今までしていなかったので、特に難しさを感じています。がんばりますので、よろしくお願いします。
梶原 佑介 平成16年4月から九大病院検査部に勤務させて頂くことになりました梶原佑介と申します。現在、生理機能検査を担当しております。趣味は音楽(ピアノ、バイオリンetc.)などで、検査部に様々な楽器を得意とする方が大勢いらっしゃることにとても驚いています。
これからたくさんのことを吸収し、一人前の臨床検査技師になれるようにがんばっていきたいです。そのためにも早く皆さんと仲良くなれるよう、ファーストフード仕込みのスマイルで元気に挨拶していきたいと思います。今後とも、ご迷惑をおかけすることも多々あると思いますが、ご指導の程宜しくお願い致します。
八木 美佐子 6/16より放射線部から異動してまいりました八木美佐子と申します。
放射線部では永年、RIインビトロ検査を、そして短期間ではありますが、MRIを担当しておりました。
今回の異動では生理機能検査室配属になりました。新人のつもりで一から勉強したいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

■ちょっと一息♪                      ペンネーム:白いかもめ
 検査部鉄分検査室よりK

《阿蘇の高原列車》

 東京オリンピックを機に昭和36年(1964)東海道新幹線が開通し、東京―新大阪間に<ひかり>、<こだま>が走り始めた。戦後の鉄道史の画期を成す出来事である。この<ひかり>が、「ひかりは、西へ」のポスターが各駅に張り出されて、博多へ滑り込んだのは、昭和50(1975)年3月10日のことであった。今年は、博多乗入れ30周年にあたり、今では新幹線は福博でも生活の一部となっている。
 ところで、実は博多駅では<ひかり>を東京駅で見れるようになるより以前に見ることができた。昭和33(1958)年4月25日博多・門司港―別府間の臨時急行として<ひかり>は登場した。同年5月1日からは、博多・門司港―大分―熊本間運転に延長となった。更に、同年8月1日には、臨時列車から定期列車に昇格し、準急列車としての運転となった。また、同年9月22日からは、車両の一部が都城まで乗入れた。昭和35(1960)年3月10日には、都城から更に西鹿児島まで延長され<第1ひかり>と改称され、新たに<第2ひかり>も設定された。昭和37(1962)年10月1日<第1ひかり>は急行に昇格し、<第2ひかり>は準急<ひまわり>に改称となった。東海道新幹線開業に当たり<ひかり>の名称を譲ることとなり、急行<ひかり>は、博多・門司港―小倉―西鹿児島間の<にちりん>、博多―大分―熊本間の<くさせんり>の2系統に分割された。
 かつて、阿蘇カルデラの中を<ひかり>が駆抜けていたのであった。列車の先頭に、<ひかり>のヘッドマークを掲出していた。

    ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

鉄分高値だと衛星から見ると、九州の真ん中にあたかもサラセミアに特徴的な標的赤血球のように見える山がある。阿蘇山である。東西17km、南北25kmのカルデラと中央火口丘からなる世界最大の複式火山を形成する。一周約120kmの外輪山の中に東京23区ほどの面積の標高400mの台地が広がり、東西に並ぶ根子岳・高岳・中岳・烏帽子岳・杵島岳からなる阿蘇五岳と称する中央火口丘が屹立している。中岳は現在も活発な火山活動を示し、時々立入り規制が行なわれている。
 地質学的には、約30万年前から9万年前にかけての4回の大規模な火砕流噴火によって形成された火山である。特に9万年前の4回目の爆発は、富士山の山体容積より大きな噴出物を伴い、九州の半分を覆い尽くした。
 平成5(1993)年背振山南面の丘陵地の圃場整備に先立つ埋蔵文化財調査で、約3m地下より巨木の埋没林が発見された。阿蘇山から直線で約80kmの距離に当たるが、爆発から数十分後、第1波の熱風が、更にその直後に約400℃の火砕流が押し寄せたとみられる。その時なぎ倒され埋まった林が、9万年ぶりに姿を見せたものであった。この4回目の爆発に伴う火砕流は、渡海し長崎や山口まで達している。大気中へ放出された量もすさまじく降下火山灰は、北海道東部で15cmの堆積物となるほどであった。
 この火山活動で形成された阿蘇凝灰岩を用いた石棺が、近畿のいくつかの古墳から見つかっている。一体運搬はどうしたのだろうか?今夏、古代船を復元して復元した石棺を宇土から近畿まで運ぼうという<大王のひつぎ実験航海>が計画されている。また、<魏志倭人伝>の中にも阿蘇山の記述があり、古代史においても重要な山と考えられる。活発に活動する阿蘇山は、古代の人々に畏怖の念を起させたに違いない。
 <吾輩は猫である>の小説家が、親友と阿蘇中岳に登ったのは、明治32(1899)年のことであった。小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの後任として旧制第五高等学校に英語教師として赴任した。熊本駅ではなく一つ博多寄りの上熊本駅(当時は池田駅と呼ばれていた)に明治29(1896)年に降り立った。九州鉄道の門司―熊本間が全通したのは、明治24(1891)年のことであり、開業して間もなくのことであった。髭をたくわえ少し首を傾けた写真が有名で、ついつい漱石こと夏目金之助は、ずっとこの様な容貌と思い込みがちだが、この時29歳の若々しさであった。上熊本駅から人力車で京町の坂を上り新坂を下るときに「熊本は森の都だなあ。」 と、熊本の第一印象を漱石が語ったと伝えられている。この熊本で、明治33(1900)年文部省第1回給費留学生として英国留学を命じられるまでの間、4年3ヶ月生活をおくった。漱石は8月末から9月にかけてのこの阿蘇登山行でいくつかの句を詠んでいる。
     灰に濡れて  立つや薄(すすき)と  萩の中
     行けど萩  ゆけどすすきの  原廣し
また、この登山行に材をとって<二百十日>が、生まれた。
    ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

 阿蘇の外輪山を貫いて、熊本と大分を148.0kmで結ぶ豊肥本線は、漱石の阿蘇登山行の際にはまだ走ってはいなかった。
 明治25(1892)年公布の鉄道敷設法で国が建設すべき鉄道路線の一つとして「熊本県下熊本ヨリ大分県下大分ニ至ル鉄道」が計画された。しかしながら建設の実行にはなかなか到らず、大分側からは大正3(1914)年4月1日犬飼軽便鉄道として大分―中判田間が開業し、熊本側からは同年6月21日宮地軽便鉄道として熊本―肥後大津間が開業した。その後徐々に双方から延伸工事が進み、昭和3(1928)年12月2日最後に残った宮地―玉来間が繋がり豊肥本線が全通した。
 熊本側から豊肥本線に乗込むとなだらかな上り勾配を阿蘇に向けて上っていくこととなる。現在は、熊本―肥後大津間は電化され電車特急<有明>が、肥後大津まで乗入れている。肥後大津から東は非電化区間でディーゼル列車が活躍している。阿蘇の外輪山は、西側で一箇所切れていて、そこから白川が熊本市内を貫いて有明海に注いでいる。地質時代は、この途切れが無く、巨大なカルデラ湖が存在していたと推定される。外輪山のこの途切れたところに立野駅がある。ここから高森に通じる南阿蘇鉄道が分岐する。立野駅はスイッチバックの駅で運転手は、ホームに降り列車の反対側に移動して、運転を再開する。しばらく上ると再びスイッチバックがあり、再び運転手は列車の反対側に移動し、元の運転台に座ることとなる。こうして標高を稼ぎながら外輪山に取り付き登攀し、広大なカルデラ台地に達する。右手に阿蘇五岳を望み左手に外輪山を望んで走る。宮地駅を過ぎると東側の外輪山に取付き上って行く。やがて眼下に阿蘇谷を望め坂の上トンネルに入る。トンネルを過ぎると下り勾配となり、九州内で一番高い標高754mの波野駅に到るが、この一帯は、阿蘇火砕流台地の独特の景観を見せている。大野川沿いに標高を下げて行き滝廉太郎の<荒城の月>で知られる豊後竹田を通り、やがて勾配が緩やかとなり大分平野に下ってくる。大分川を渡河すると終着駅の大分駅である。
 豊肥本線の両端の熊本駅、大分駅ともに現在大改造計画が進行中である。熊本駅は、九州新幹線工事が進行中であり、大分駅は高架化工事が佳境を迎えようとしている。豊肥本線の両端の駅の風景が激変期を迎えている。地上駅のたたずまいを見れるのは、今のうちである。
    ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 昭和63(1988)年8月28日<SLあそBOY>が熊本―宮地間に運行を開始した。8620形58654号機が客車を牽引している。大正時代の貨物用蒸気機関車として8620形は、初めて設計から製造まで純国産で造られた機関車である。大正3(1914)年から昭和4(1929)年まで687両製造された。58654号機は、大正11(1922)年製造で昭和50(1975)年に廃車となった。肥薩線の矢岳駅前で保存されていたものを再整備し、復活運転を開始したものである。
 昭和54(1979)年8月に山口線にC57型機関車の「SLやまぐち号」が復活し、人気を得たことに刺激を受けて全国でSLの復活運転が行われだした。<SLあそBOY>もその一つである。現在国内を走るSLの中では最古の車両である。
 この<SLあそBOY>の圧巻は、やはりスイッチバックでの登攀である。標高277mの立野駅からカルデラ台地の阿蘇谷の標高465mの赤水駅まで、駅間8kmに対して標高差は188mある。ここをスイッチバックで、SLが煙を吐きながら喘ぎ喘ぎ登攀する様に鉄分高値でなくても声援を送りたくなるに違いない。蒸気機関車全盛期いかに峠越えの勾配が障害となっていたかを実体験できる貴重な列車である。
 ところで、この<SLあそBOY>が、今夏8月28日をもって引退することが発表された。車輪等の傷みがひどく豊肥本線の急勾配に耐えられなくなったためである。その発表後の指定券発売は、発売開始数秒で売り切れとなるほどの人気を呼んでいる。指定券を入手するのは至難の技となってしまった。乗れなくても見ることはできるので、特にスイッチバックのある立野駅を中心にカメラの砲列が並ぶことであろう。

 今夏は、雄大な阿蘇高原の風景を楽しんでみてはいかがであろうか。

* 「鉄分」高値とは、鉄道趣味の程度が高い事の意。
■感染制御のために(4)
検査部医員  内田 勇二郎
ESBL(基質拡張型β-ラクタマーゼ )産生菌について
 基質拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrum beta-lactamase: ESBL)とは、細菌が持っているプラスミド性のペニシリナーゼが、突然変異により基質特異性の狭いタイプから広いタイプへ拡張したものとされている。つまり、ペニシリン系抗生剤や第一世代セフェムの一部に対して耐性のあった菌が遺伝子変異によりセファロスポリン系抗生剤全般にわたり耐性を示す能力を持つようになるということである。ただし、セファロスポリナーゼなどの他のβ-ラクタマーゼとは異なり、ペニシリナーゼの特徴であるクラブラン酸などのβ-ラクタマーゼ阻害剤により阻害される特徴をもっている。ESBLのタイプとしては、主にTEM型、SHV型、CTX-M型などが知られており、日本ではCTX-M型が多いとされている。特徴として、CTX-M型ではCTX(cefotaxime、クラフォラン)のMIC値が高いのに対して、TEM型、SHV型ではCAZ(ceftazidime、モダシン)のMIC値が高くなることが多い。ESBL産生菌はグラム陰性桿菌で認められ、主に腸内細菌科であるE.coli、K.pneumoniaeであるが、セラチア、エンテロバクター、緑膿菌などの報告もある。
 米国厚生省疾病管理・予防センター(CDC)は、米国における腸内細菌科の細菌のESBL産生菌分離頻度は、0〜25%と施設間で格差があるが平均して約3%と報告している。欧州では、国ごとで大きな違いがあるが、欧州全体的にみると、ICU患者からの分離されたK.pneumoniaeの42%、non-ICU患者の場合は20%がCAZ耐性であったとの報告もある。一方、日本における2002年の全国的なサーベイランスでは、E.coliの3.1%、K.pneumoniaeの1.9%でESBL産生菌が認められた。1997年はE.coliで0.09%、K.pneumoniaeで0.3%との報告もあり、以前は欧米と比較して少ないとされていたESBL産生菌も徐々に増えてきている可能性が示唆される。当院における分離頻度(2004年)は、E.coliで18株/534株(3.4%)、K.pneumoniaeで2株/292株(0.7%)であった。ESBL産生E.coliの分離検体は、1患者でいろいろな部位から分離された症例も認められたが、50%が尿であり、血液、腹水、膿がそれぞれ9%を占めていた。日本でESBL産生菌の分離が少ない理由のひとつとして、欧米に比べてセファロスポリン系抗菌薬の使用頻度が低く、カルバペネム系薬の使用が多いことが指摘されている。実際、日本におけるカルバペネム耐性緑膿菌は多く、当院分離緑膿菌の6.8%(2004年)がIPM耐性株であった。
 臨床上の問題点としては、ESBL産生菌による感染症の治療および院内感染が挙げられる。
米国臨床検査標準化協議会(NCCLS)は、ESBL産株全てに関して、抗生剤感受性測定の判定は、ペニシリン系抗菌薬、セファロスポリン系抗菌薬、およびアズトレオナムの全てに対して耐性と報告すべきとしている。Patersonらによると、ESBL産生菌による菌血症を含む重症感染症の治療成績では、起炎菌に対して使用したセファロスポリンのMICが感受性または中間域内であっても、約60%の症例で治療失敗であったとしている。これはNCCLSの推奨を支持する結果であり、当細菌検査室もNCCLS基準を用いて判定し報告ている。ESBL産生菌に対する治療薬としては、カルバペネム系薬、フルオロキノロン系薬が推奨される(The Sanford Guide to Antimicrobial Therapy 2004)。
欧米では、ESBL産生菌によるアウトブレイクが多く報告されている。アウトブレイクのコントロールは、barrier precautionsなどの感染コントロール手技や、セファロスポリン系抗菌薬の制限、抗菌薬のサイクリング療法などが有効との報告がある。抗生剤の変更では、IPM/CSやPIPC/TAZの使用が最も成功している。
 現在のところ、当院ではESBL産生菌によるアウトブレイクは認められていないが、今後、日本におけるESBL産生菌の増加に伴いアウトブレイクが発生する可能性がある。検査室でのESBL産生菌の検出の改善、適正な抗生剤使用、適切な接触感染防御策などを含めた医療従事者の幅広い協力が病院内感染を最小限に抑えるために必要である。
参考文献
Bradford PA. Clin Microbiol Rev. 2001 Oct;14(4):933-51.
Paterson DL, Yu VL. Clin Infect Dis 1999; 29:1419-22
Yamaguchi K, et al. Jpn J Antibiot. 2004 Feb;57(1):70-104.
Yagi T. Nippon Rinsho. 2003 Mar;61 Suppl 3:90-4.
○●外注検査のお知らせ●○

2005年7月1日より、新たに以下の5項目がオーダリング可能となります。
検査部HPも併せてご覧下さい。
<ベロ毒素直接検出法>
  腸管出血性大腸菌(O157、O26等)が産生するベロ毒素を検出します。
現在、腸管出血性大腸菌と同定された血清型の病原性は、ベロ毒素産生性の有無をもって
最終的に判断されるため、血清型別にかかわらず分離菌に対し、ベロ毒素産生性試験を実施する必要があります。本検査は培養検査を行うことなく糞便中からEIA法によりベロ毒素を直接検出します。
   測定方法 : EIA法   基準範囲 : 陰性 
<HVA(髄液)> 
  ホモバニリン酸(HVA)はドーパおよびドーパミンの最終代謝産物であり、末梢組織内で産生されたHVAは脳血液関門を通過しないため、髄液中のHVAは主として脳由来であると考えられています。
中枢神経系ドーパミン作動性ニューロンの活動度の指標として用いられます。
  測定方法 : HPLC法  参考基準範囲 : 1〜73 ng/ml
<5-HIAA(髄液)>
  神経終末部より遊離されたセロトニンの大部分は神経終末に再吸収され、5-ハイドロキシインドール酢酸(5‐HIAA)へと代謝されます。
髄液中5-HIAA濃度は、中枢神経系におけるセロトニン作動性ニューロンの活動度の指標として用いられます。
  測定方法 : HPLC法  参考基準範囲 : 20〜30 ng/ml
<尿中ミオグロビン>
  ミオグロビンは主に心筋や骨格筋に存在し、酸素を筋組織で受け取り、これを筋組織中で運搬・貯蔵し、必要に応じてエネルギー産生系に供給します。
筋組織の破壊が起こると、血中に流出し、腎から短時間のうちに排泄されます。
血中及び尿中ミオグロビン測定は、心筋梗塞や筋ジストロフィーなどの診断や予後の推定に有用です。
   測定方法 : RIA2抗体法   基準値 : 10 ng/ml 以下
<抗クラミジアニューモニエ IgM>
  クラミジア・ニューモニエは主に肺炎や気管支炎、急性上気道炎などを引き起こします。
本検査は、クラミジア・ニューモニエに特異的な外膜複合体蛋白を用い、EIA法にてIgMクラスの抗体を検出します。初感染ではIgM抗体がIgGおよびIgA抗体よりも早期に血清中に増加するため、特に初感染が多い小児期の感染の診断補助として有用です。
   測定方法 : EIA法     基準値 : 陰性(カットオフインデックス0.9未満)
                                       (文責 豊福 連絡先5768)
■凝固採血管(黒栓)でご迷惑をおかけしました
 4月に内科外来、5月に循環器入院で提出されてクエン酸採血管(凝固検査)を遠心すると完全凝固するという事態が発生しました。有効期限内にもかかわらずクエン酸Naが入ってない採血管があるということで製造元のニプロ株式会社に原因を調査してもらいました。
 本来、採血管のクエン酸Naは53.5〜63.0mmol/Lの濃度であるべきところ、問題の採血管のクエン酸Naはわずか2.5〜7.0mmol/Lでした。発生原因として以下の3点が考えられるということでした。
 1)充填流路内の熱水殺菌を生産の都度実施しているが、熱により充填用ポンプの劣化が促進され、ポンプを交換する時があり、このポンプ交換前後に充填不良が発生し、先の事態にいたった可能性が考えられました。通常、製造機械のメンテナンスや修理を実施した際には再稼働前後の製品全数検査を実施し、製品に異常が無 いことを確認していますが、作業員の不注意などにより見逃してしまったのではないかと推察されます。
 2)薬液充填ポンプの流路内に気泡が混入した場合、充填薬液量が不足したと思われます。
 3)上記1)と2)の発生原因に加え、製造ライン中の外観検査員の見逃しにより流出してしまったと考えられます。

 今後のニプロ株式会社の再発防止対策として新たな組み立てラインの導入に伴い、ピペット充填方式の薬液充填機を導入(2005年4月生産分より)、また、この度の事態について作業員に周知させ、再度異常発生時の処置方法を徹底させると共に、不良品を見逃さないよう指導する、という回答でした。

 凝固検査室としてもなかなか原因が究明できずいくつかの診療科にご迷惑をおかけしました。どうもすみませんでした。
  *なお医療安全部へインシデント報告しております。
                                        (文責 増本道子)
■編 集 後 記
今回の検査だよりには、季節外れに新人紹介がたくさん載っています。24時間体制で検査の需要に応じるべく、これまで、変則的なシステムのもと対応してきました。しかし、独立行政法人化に伴う労働基準法遵守のため、検査部業務は全面的な2交代体制へ変更されました。これを機に人員体制を整備しなおさざるを得なくなり、各科に配属されていた多くの検査技師が検査部に配置換えされることとなりました。このためにご不便をかけることになった科には申し訳ないこととなりましたが、このような各科のご協力のおかげで、外来検査室開設などサービス体制の向上も図ることができております。よろしくご理解を賜りたいと願っております。検査部細菌検査室は感染制御部との緊密な協力体制のもと、院内感染や耐性菌問題に積極的に取り組んでいます。今後も感染症予防と感染症治療に関する情報「感染制御に向けて」を発信し続ける予定です。ご期待ください。        
                                        (康)