九州大学病院検査部  2006年7月15日
検 査 だ よ り
第30号
検査の充実を目指して その6 検査部技師長 栢森 裕三

ISO 15189の認定取得

この度、検査部では3月29日付けで財団法人日本適合性認定協会からISO 15189の認定を受けました。この臨床検査室に特化したISOの本質については過去の「検査だより」でお話して参りましたが、組織のマネージメントを行うISO 9001と試験所や校正機関の能力に関するISO 17025の二つのISOを組み合わせたものです。つまり、ISO 15189の認定を受けたということは、組織のマネージメントがシステムとしてしっかり行われていること、さらに精密で精度の良い検査データを提供する能力があることが認められたことになります。国際的な動向として、臨床検査室認定は欧米を中心にアジア各国でも取り入れられており、ワールドカップサッカーの初戦で対戦したオーストラリアでは,従来のISO/IEC 17025:1999による認定プログラムを全面的にISO 15189によるプログラムに移行する予定であると聞いています。このような国際的な臨床検査室認定の動きは、客観的な検査データによって患者様の診療を行う近代的医療においては必要不可欠なものです。すなわち、診察する医師は提供される検査データを信頼して重要な医学的意思決定を行う。そして、その決定は検査データを提供する臨床検査室の能力に全面的に依存しているからです。検査部としても認定を機会に、さらなる良質な検査データの提供と最終顧客である患者様にとってリスクマネジメントを含め,より良いサービスを提供して参ります。

以下は、本年度の品質方針・品質目標です。

品 質 方 針
精密で正確、迅速な検査をもって患者ケアの向上に貢献する。
患者様および依頼医師の検査に対する満足度を高め、九州大学病院の発展に寄与する。
臨床検査のオピニオンリーダーとして検査データの標準化を推進し、社会に貢献する。
国際規格ISO15189に基づく品質マネジメントシステムを維持し、これを遵守する。
全部員はこの方針と品質マニュアルを熟知し日常業務に反映させる。
品 質 目 標
臨床検査の品質マネジメントシステムの維持と品質向上を目指す。
 

JAB認定シンボルについて

財団法人日本適合性認定協会(JAB)のシンボルは、1993年に本協会が「財団法人日本品質システム審査登録認定協会」として設立された際に作られました。デザインは、Accreditation(認定)の"A"を基調としたものです。3本の横線は、組織(企業等)、認定対象となる審査登録機関など適合性評価機関及び認定機関としての本協会の3者の相互協力を示しています。また、基本色であるブルーは信頼・発展を表しています。
■正しい検体の採取から検査部まで ‐その20 ■ 濱崎直孝(現:長崎国際大学薬学部)

13年間お世話になった九州大学病院検査部を退任して、既に、2ヶ月が過ぎました。新しい大学にも徐々に慣れてきましたが、頻繁な出張は今も変わりませんので九大時代と感覚的にはあまり変わりがありません。ただ、非常に違うと感じることが一つあります。大学にいる時間に “考えたり論文を読んだりできる時間が随分と増えた” ということです。検査部にいるときは、検査部の皆様にだけ検査業務を押し付けて小生は何もしていないと忸怩たる思いがありましたが、このような状況を経験すると、案外そうでもなかったのだと、少しは気分的に許された気持ちになっております。さて、本題に入りましょう。今回(その20)と次回(その21)は凝固検査時の採血について注意点を述べます。

凝固検査用の採血(その1)

1.凝固検査用採血

プロトロンビン時間(PT)や活性化トロンボプラスチン時間(APTT)検査用採血は抗凝固剤の種類、その濃度、凝固剤と血液量比、採血方法などが検査結果に影響を与える。凝固検査用採血にはクエン酸採血が基本である。

2.抗凝固剤の濃度

0.105 mol/l(3.2%)、または、0.129 mol/l(3.8%)のクエン酸濃度が通常用いられる。PTやAPTT の検査には pH 7.1-7.35 の狭い範囲で行わねばならない。抗凝固剤として使用するクエン酸のpH を5.5 に調整しておく必要がある。pHを5.5に調整した抗凝固剤と血液を正しい比率(下記参照)で混合するとその検体のpHを7.1-7.35 の範囲に保つことができる。pH を調節してないクエン酸を凝固検査用採血に用いてはならない。

3.抗凝固剤と血液の比率

クエン酸と血液の混和する比率は1:9 である。クエン酸の量比が増えるとAPTT 値がのびる。混和比が少しはずれても構わないが、混合比が1:7 以下になってはいけない。血漿量に対して添加するクエン酸が多すぎると、カルシウムと結合していないクエン酸が増え、PT やAPTT 測定用に添加するカルシウムともクエン酸が結合しカルシウム不足になり凝固時間がのびる。それ故に、クエン酸と採血量との混合比に注意しなければならない。抗凝固剤と血液との混合比を正しく守らないと、凝固検査を正しく行うことができない。

ヘマトクリットが高い患者(55%以上)の血漿量は少なくなるので、通常の混合比でクエン酸を加えると、上記の理由で凝固時間がのびる。このような患者の採血に当たっては、クエン酸量を調節する必要がある。0.129 mol/l のクエン酸を混合比 1:19 で混ぜると、貧血患者でも多血症の患者の採血でもあまり凝固検査結果に影響がないという報告がある。

 紙面の都合上、今回はここまでにしておきます。次回は“凝固検査用採血(その2)”として検体の採血、運搬、保存について述べます。長崎国際大学はハウステンボスと密接な連携があります。小生に一声かけていただくと、入場料は無料になります。ご来学大歓迎です。

ちょっと一息♪                      ペンネーム:白いかもめ
 検査部鉄分検査室より⑮

《宮地岳線今昔》

昭和44年(1969)或る青年がアンドレカンドレという名で<カンドレマンドレ>という自作の歌でデビューした。アンドレカンドレから井上陽水とあらためた後、昭和47年(1972)セカンド・アルバム<センチメンタル>を発表した。その中に収められている一曲。<東へ西へ>。鉄分を豊富に含んだ一曲である。

♪  電車は今日もすし詰め延びる線路が拍車をかける
         満員 いつも満員 床に倒れた老婆が笑う
         お情け無用のお祭り電車に呼吸も止められ
        身動き出来ずに 夢みる旅路へ
         だから ガンバレ みんな ガンバレ
         夢の電車は東へ西へ
         花見の駅で待ってる君にやっとの思いで逢えた
         満開 花は満開 君はうれしさあまって気がふれる
         空ではカラスも 負けないくらいによろこんでいるよ
         とまどう僕には なんにも出来ない
         だから ガンバレ みんな ガンバレ
         黒いカラスは東へ西へ

この<東へ西へ>の中に登場する花見の駅は、西鉄宮地岳線にある。井上陽水ファンの聖地の一つとなっているらしい。

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 当院最寄り駅の福岡市地下鉄2号線・箱崎線馬出九大病院前駅から貝塚行きに乗り、終点の貝塚駅の改札を出るとすぐ西鉄宮地岳線貝塚駅の改札が待っている。
 宮地岳線は、貝塚―津屋崎間20.9kmを走る全線単線の路線である。

 宮地岳線の歴史は、西日本鉄道の前身の一つである博多湾鉄道汽船が、新博多(後の千鳥橋)-和白間を大正13年(1924)5月23日に開業したことに始まる。翌大正14年(1925)7月1日に和白―宮地岳間が開業した。昭和4年(1929)に蒸気から電化された。昭和17年(1942)他社と合併し、西日本鉄道が誕生し、西鉄宮地岳線となった。
 宮地岳線の現在の一方の端の津屋崎駅の開業は、少し遅れ、昭和26年(1951)7月1日である。
 昭和29年(1954)新博多―西鉄多々良(現・貝塚)3.3kmが改軌され福岡市内線貝塚線と呼ばれるようになった。西鉄多々良駅は、競輪場前駅と改称された。市内貝塚線の電停は、以下の通り。
 
 千鳥橋- 馬出三丁目(まいだしさんちょうめ) - 浜松町(はままつちょう) - 箱崎浜(はこざきはま) - 網屋立筋( あみやたてすじ) - 箱崎松原(はこざきまつばら) - 九大中門(きゅうだいなかもん) - 貝塚(かいづか)

 千鳥橋界隈は、市内電車が走っていた時期は、大渋滞をよく起こしていた。チューリップの<千鳥橋渋滞>は、その気分を含んでいる。
 尚、現在貝塚駅横にある貝塚公園は、競輪場の跡地である。昭和37年(1962)競輪場前駅が貝塚駅に改称となった。
 福岡市地下鉄建設のため市内に網の目に走っていた市内電車は、次々と廃止され、昭和54年(1979)2月11日最後まで残っていた福岡市内循環線と貝塚線が廃止された。昭和61年(1986)11月12日地下鉄2号線箱崎線が全通し、現行の貝塚での地下鉄・宮地岳線連絡の形ができた。

 今年になって宮地岳線にとって二つの明暗を分ける大きな動きがあった。
 一つの路線ながら、両端側で異なった表情を持つ線のために起こった明暗である。
 一つは、西鉄宮地岳線香椎駅周辺連続立体交差事業により西鉄香椎周辺1.3kmが高架化され5月14日に香椎宮前駅と西鉄香椎駅が地上駅から高架駅に切り替わった事である。一昨年平成16年(2004)貝塚―香椎宮前間の高架化が既に行われており、貝塚から香椎にかけての沿線風景が一変した。それまでの市内電車を連想させるのどかな鉄道風景から高架線の都市近郊鉄道の鉄道風景に様変わりした。福岡市中心部寄りの線区沿線は、旧国鉄香椎操車場跡地再開発事業と一体化して高層ビル群が張り付きだしている。
 ところで、高架化により廃止となった地上駅の木造平屋の西鉄香椎駅舎は、松本清張の<点と線>の舞台となった駅舎であった。この推理小説に登場するブルートレイン<あさかぜ>や青函連絡船は既に廃止され現存する最後の小説に登場する鉄道関連のものであった。このため、最後の日には地元の人々ばかりではなく松本清張ファンも多数訪れていた。
 もう一つは、乗降客の落ち込みが大きい西鉄新宮―津屋崎間9.9kmを来年平成十九年(2007)3月いっぱいで廃止とすると西鉄が発表したことである。宮路岳線の一方の端の線区は、市街化の進む貝塚寄りの線区と異なり苦戦を強いられている。
 この廃止により、古賀ゴルフ場前、西鉄古賀、花見、西鉄福間、宮地岳、津屋崎の6駅が廃止となる。井上陽水ファンの聖地の一つの花見駅も含まれている。また、宮地岳線の線名の由来である宮地岳駅も廃止となる。宮地岳線に乗っても宮路岳には行けなくなり、鉄分高値の人には淋しいことになる。

 貝塚から津屋崎行き電車に乗り西鉄福間を過ぎると進行方向向かって右手に宮地嶽神社のある標高182.4mの宮地岳が車窓に広がる。宮地岳駅は、この宮地嶽神社参拝最寄駅である。
 宮地嶽神社の参道は、筥崎八幡宮参道と同じようにまっすぐ海に向かって伸びている。宮地岳駅は、宮地岳線と参道が交差する所に位置している。駅を降りて参道をまっすぐ歩くと境内に到る。参道には、太宰府天満宮参道に見られる梅ヶ枝餅と似た松ヶ枝餅が売られている。境内には、宮地嶽古墳があり、国宝の馬具や太刀が出土している。宮地嶽神社は、太宰府天満宮と並んで菖蒲の名所として知られている。6月には、菖蒲見物の人々で賑わいをみせる。
 宮地岳駅から反対方向の海側へ向かうと宮地浜にたどり着く。参道の延長線には相島が相対している。江戸期福岡藩は、朝鮮通信使一行をこの島で接待していた。通信使一行は、福博に寄らず相島を経由して玄海灘を渡り、海路瀬戸内海へと入っていった。天和二年(1682)の場合は、通信使一行約500人と対馬藩随行者約500人の接待を行った。
 宮地浜は大きく弧を描き、津屋崎浜につながっている。この付近一帯は、白砂の美しい海岸線を形成している。

 終点の津屋崎は、江戸期福岡藩の重要な港町の一つであった。かつては、津屋崎千軒と呼ばれ繁栄していた。江戸期の福岡藩の港町等の支配は、町奉行や郡奉行とは独立した浦奉行によって行われていた。浦独特な義務は水夫役(かこやく)である。江戸期、福岡藩は佐賀藩と共に隔年で天領の長崎警備の役に就いていた。この警備のためや、参勤交代の際に動員されていた。
 津屋崎には、こうした歴史的な背景も関与しているのか福岡水産高校がある。ここでは男子のシンクロナイズドスイミングが文化祭で披露されている。この水産高校の生徒達も通学の重要な足である宮地岳線一部廃止で大きな影響を受けそうだ。
 
 ところで、歴史のある津屋崎の名は自治体名としては消滅してしまっている。平成の大合併の一つとして平成17年(2005)1月24日福間町と津屋崎町が合併し、それぞれの頭をとって福津市となった。来春津屋崎駅も廃止となると津屋崎という名の存在感がいっそう希薄になりそうだ。

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 西鉄の宮地岳線一部廃止の発表を受けて、沿線住民による廃止反対の動きが始まっている。この運動の成功を期待したいが、乗降客の減少に歯止めをかけ増加に転じさせる見通しが立ちにくい状況で存続させる手立てを見つけ出すのは至難の技である。
 JR西日本富山港線が、今年平成18年(2006)4月29日より第三セクターの富山ライトレールとなり、日本で初の本廃止予定区間の車窓風景で、将来の複線化を見越したとみられる用地確保が行われている様子が見られる。鉄分の高い人にとっては惜しまれる光景である。
 
 廃止を来春に控え、宮地岳線の散歩はいかがであろう。
 宮地岳線の電車に乗ると到着放送時に、オルゴールでチューリップの<サボテンの花>や<心の旅>のメロディーが流される。
 チューリップは、昭和46年(1971)に結成され、翌年<魔法の黄色い靴>でデビューした。リーダの財津和夫は香椎高校出身で沿線出身に因んで車内放送にこれらの曲が採用されたものである。

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 7月15日早朝に行われる追い山笠が終わると梅雨明けとなり、博多は夏本番となる。この博多祇園山笠の影響を受けた祭りが北部九州に広がっている。いわば博多文化圏とでもいえる。津屋崎にも山笠がある。津屋崎祇園山笠は、正徳二年(1712)波折神社境内に祇園社を勧進して始められた。一時期途絶えていたが、昭和50年(1975)に復活し岡流・新町流、北流の三流れが波折神社を出発点として7月第3日曜日に追い山笠を行っている。博多で山笠を見逃しても津屋崎で山笠を見る事ができる。宮地岳線に揺られて山笠見物はいかがであろう。


* 「鉄分」高値とは、鉄道趣味の程度が高い事の意。

外注検査新規項目のお知らせ

2006年4月からの保険診療費の改定に伴い、オーダリングに以下の項目を追加しました。2006年6月1日よりオーダー可能となっております。

bcr/abl遺伝子検査は、院内では以前よりRT-PCR法で検査しております。院内検査はPh-PCR骨髄(液)またはPh-PCR末梢(血)でbcr/abl遺伝子検査のオーダーが可能で、数日で結果報告しています。TMA-HPA法を選択される場合は外注検査でオーダーしてください。

抗IA-2抗体(膵β細胞成分であるチロシンリン酸化酵素蛋白に対する自己抗体)は1型糖尿病患者血清中に高率に存在し、1型糖尿病の診断予知に有用です。抗IA-2抗体精密測定は、すでに糖尿病の診断が確定し、かつ、抗GAD抗体価精密測定の結果、陰性が確認された30歳未満の患者に対し、インスリン依存型糖尿病(IDDM)の診断に用いた場合に算定できます。GADとは、グルタミン酸脱炭酸酵素(Gulitamic Acid Decarboxylase) でその自己抗体の存在が、1型糖尿病の病態を予知するのではないかといわれているものです。

HIVジェノタイプ薬剤耐性遺伝子、オリゴクロナルバンド、MBP(ミエリン塩基性蛋白)、IgG-インデックス、シスタチンCなどの保険診療新設項目は、既に4月1日よりオーダー可能になっております。

            文責:検体検査室外注検査責任者 豊福

■お知らせ■

HBs抗原定量検査 検査試薬改良に伴うお知らせ

 平成18年6月1日よりHBs抗原定量 検査試薬「ルミパルスⅡHBsAg」を改良品に変更しました。この変更に伴い、C.O.I 50以下の検体では従来試薬とほぼ同等の報告値ですがC.O.I 50以上の検体では30%ほど高値の報告値となります。

 HBs抗原定量陽性で経過観察中の患者様に於いては61日以降の報告値に注意していただきますようお願いいたします。                                                搬送 堀田 連絡先(内線5756

院内検査になりました。

 平成18年6月1日より外部委託の一部の項目( MMP-3intact-PTHコルチゾールBNP )が院内検査になり迅 速に検査結果をお返しすることができるようになりました。

MMP-3 (マトリックスメタロプロテイナーゼ-3)

関節リウマチ(RA)の滑膜増殖に伴い滑膜細胞で産生され、マトリックス分解作用により関節破壊に関与。  早期RAの滑膜増殖と間節破壊の予後予測の指標となる可能性がある。

intact-PTH (副甲状腺ホルモン)

  副甲状腺で産生されインタクトの形で分泌され標的器官に作用し、腎尿細管からの再吸収や骨からの動員促進により血中カルシウム値を増大させる。副甲状腺機能評価に有用。

コルチゾール 

  糖質コルチコイド。副腎皮質機能を反映するので副腎皮質機能不全やクッシング症候群の診断指標として有用。

BNP (ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド)

血管拡張作用、利尿作用、交感神経系及びレニン・アンギオテンシン系の抑制作用を有し心不全の病態を改善させる働きがある。心不全の病態把握に有用。

提出場所、提出時間は従来と同じです。

依頼方法は基準範囲等は検査部ホームページをご覧下さい。

                                                       ご不明な点の問合せ先       搬送 堀田 連絡先(内線5756)

 

新人紹介

大竹沙矢香

今年の春に山口大学を卒業し、検査部に勤務することになりました大竹沙矢香です。
まだまだ戸惑うことばかりですが、自分なりに一生懸命頑張りたいと思っています。これからたくさんのことを吸収して、どんな時でも冷静に行動できるようになりたいと思います。
 今後もご迷惑をおかけすることが多々あると思いますが、ご指導の程よろしくお願い致します。

感染制御のために(7)       検査部助手  内田勇二郎

マイコプラズマ肺炎は増えている?! 

マイコプラズマは、動物の粘膜に生息し、細胞壁を欠く細菌である。また、無細胞性培地に生える自己増殖能のある最小の微生物群でもある。現在、約200種のマイコプラズマが分離されているが、ヒトから分離されるものは十数種であり、その中でも臨床上重要なのは肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)である1)。その他、尿路系や女性付属器に常在しているM. hominisが易感染患者に対して感染を起こす症例もある。

 マイコプラズマ肺炎の診断方法には、培養法と抗体検査法がある。培養法は、特殊な培地(PPLO培地)を必要とし、増殖するには5日以上と時間がかかるため、臨床的な有用性は低い。一般的に用いられているのは抗体検査法である。抗体検査を表1に示す。抗体は発病後7日頃に出現するが、ELSA法はIgM抗体を検出するため比較的早期に診断することができる。ただし、IgM抗体が出にくい再感染あるいは成人における感染では感度が低いとも指摘されている。PA法はCF法に比べ、IgM抗体も測定するためピークに達するのがやや早い特徴がある。寒冷凝集反応は非特異反応であり、伝染性単核球症、サイトメガロウイルス感染症、梅毒、白血病などでも上昇する。また、感度が低くマイコプラズマ肺炎の約50%のみが陽性との報告もある。

 マイコプラズマ肺炎は5類感染症定点把握疾患に定められており、全国約500カ所の基幹定点から毎週報告がなされている。感染症情報センターの報告によると、マイコプラズマ肺炎の件数が増加していることがわかる(表2)。当院においてもPA法による抗体検査において、陽性率は明らかな変動は認められないが、陽性検体数は徐々に増加傾向を示している。(表3)。呼吸器系検体の培養からも2005年6月からの1年間にマイコプラズマが8件分離された(表4)。増加の原因として、診断する側がマイコプラズマ感染症を疑い、積極的に検査をするようになった可能性があるが、別の原因として、薬剤耐性肺炎マイコプラズマの存在が考えられる。2000年から2003年までに分離された84株の13株(15.5%)がマクロライド耐性株であったと神奈川県衛生研究所は報告いる。また、23SrRNA遺伝子の変異と耐性化との関係も指摘されている2)。肺炎マイコプラズマ感染症に対するマクロライド系抗菌薬使用において、マクロライド感受性株と比較した場合、耐性株に感染している症例は有熱期間が長くなり(8日vs 5日)、無効による抗菌薬の変更の割合も増加する(63.6% vs 3.8%)3)。

現在のところ、マイコプラズマは臨床検査上の感受性検査法が確立していないため、当検査部では感受性検査を施行していない。しかし、今後分離株数や耐性菌株数が増加してくるようであれば、感受性検査も考慮しなくてはならないであろう。

PPLO:pleuropneumonia-like organism、ELISA:enzyme-linked immunosorbent assay、PA:paticle agglutination、HDPA:high density particle agglutination、CF:complement fixation

【参考文献】

1) Fukushima K, et al. Diagnostic tests: Mycoplasma pneumoniae. Nippon Rinsho. 2005 Jul;63 Suppl 7:227-30.

2) Morozumi M, et al. Emergence of macrolide-resistant Mycoplasma pneumoniae with a 23S rRNA gene mutation. Antimicrob Agents Chemother. 2005 Jun;49(6):2302-6.

3) Suzuki S, et al. Clinical evaluation of macrolide-resistant Mycoplasma pneumoniae. Antimicrob Agents Chemother. 2006 Feb;50(2):709-12.

編 集 後 記

北棟への引越しに伴う慌ただしさも落ち着き、検査部もようやく日常のことがまさに日常的に過ぎて行く様になって来ました。今回も技師長が再度取り上げている国際規格ISO15189の取得は、決して取得へ向けて泥縄に準備して得られるものではなく、これまでの長期間にわたる技師たちの誠実な努力の蓄積があればこそであり、私たちとしては大いに誇るべきことであると考えています。しかし辛口に言うと、現在は資格ばやりで、この種の認定が能力の証明として幅を利かせています。この種のものはマニュアルが規定に従い詳しく記載されていることと、そのマニュアルが求める手技をこなす技術水準が備わっていることを認められたに過ぎないことも認識しています。規格合致の認定は創造能力の認定ではありえません。規格遵守に固執するとむしろ創造の芽が失われることもありえるでしょう。状況が落ち着いてきた今が、検査のオーダーを忠実にこなす能力があればいいのかを自問するよい時と考えています。今後病院の中で、検査部が果たすべき役割とあるべき姿を模索しているところでもあります。皆様の辛口のご意見もいつでも大歓迎です。さて、いつも楽しい「鉄分検査室」は宮路岳線がテーマです。普段は自転車通勤の私も雨が降ると地下鉄と宮路岳線をよく乗り継いでいます。そういえばこの10年宮地岳線で香椎を越えたことがない事に気づきました。香椎まででもあまり乗客はいない感じですが、その先はもっと少ないのかと思い至りました。また、前部長のシリーズ「正しい検体の採取と検査部まで」は当面続けていただけることになっています。検体の取り扱い時のちょっとした疑問の解消に今後も大いに役立ってくれるのではと期待しています。            (康)