九州大学病院検査部  2009年7月31日
検 査 だ よ り
第38号
■ミトコンドリア病とミトコンドリアDNAに関して最近の話題■
検査部長 康 東天
検査部ではミトコンドリアDNAに関連した種々の遺伝子検査をしています。今回は、多くの人にとってあまり馴染みのないミトコンドリアDNAにまつわる最近の話題を二つまとめてみました。
ミトコンドリアは脂質の代謝や細胞内Ca2+の制御、アポトーシスの制御など多くの機能を担っています。広義にはそのどの機能異常を原因としてもミトコンドリア病であると言えますが、一般的には、ミトコンドリアDNA異常による電子伝達系での酸素を使ったATP産生能の低下が原因で起こる疾患群を指すのが普通です。さて、ミトコンドリアDNA異常はミトコンドリアDNA変異に一次的原因がある場合と、ミトコンドリアDNA複製やその維持に関係する蛋白質の遺伝子(つまり、核でコードされている)の変異により、ミトコンドリアDNAに2次的に変異が生じる場合の二通りがあります。前者が最も狭義のミトコンドリア病であり、多くの場合はミトコンドリア脳筋症と呼ばれる種々の神経と筋肉の機能異常が組み合わさった症状を呈します。
ミトコンドリア病は決してまれな先天異常ではない
ミトコンドリアDNA変異が一次的原因であるミトコンドリア病は従来10万人から20万人に一人と非常にまれな疾患であると考えられていましたが、英国のニューキャッスル大学のグループが、その地域のミトコンドリア病を疑われる患者を徹底的に調査し、5千人に一人程度はいるであろうと報告して以来、最も狭義のミトコンドリア病でさえ、決してまれな疾患でないことが認知されるようになっています。近年の疫学的調査の結果では、ミトコンドリアDNAの3243番目の遺伝子配列がアデニンからグアニンに変異したA3243G変異だけで10万人に236人との報告もあり、5000人に一人すらはるかに過小評価ではないかとの議論もなされています。
ミトコンドリアDNA変異と癌
ミトコンドリアと癌細胞との関係は、古くはWarburgの“癌細胞は解糖系での嫌気的ATP産生に強く依存している”という発見にさかのぼります。1998年に、癌組織ではその周辺の正常組織では認められないミトコンドリアDNA変異が非常に高頻度に(数10%)認められるとの発表以来再度注目されようになっています。それら癌組織で見出されるミトコンドリアDNA変異にはアミノ酸が変わらないサイレント変異が多くあるため、ミトコンドリアDNA変異は単なる癌化の結果であるとの考えが根強くあります。しかしアミノ酸置換やストップコドンとなる変異も多くあり、それらは、癌化の過程そのものに関与している可能性が残されています。
ミトコンドリアDNAは多型が核DNAに比べ多いことが良く知られています。しかしほとんどの場合、細胞レベルでは呼吸能の低下が認められません。ところが、実際は多くの多型でその変異を持つ電子伝達系自身は機能の軽度低下をきたしており、そのことで電子伝達系からの活性酸素産生が増加し、その活性酸素増加によりミトコンドリアDNA量が増加するような代謝変化が起こり、結果として電子伝達系の量が増えたため機能低下が相殺されているということが分かりました。このことは、ミトコンドリアから産生される活性酸素が細胞内の代謝に大きな影響を与えていることをはっきり示した点でも重要です。2008年に筑波大学の林らのグループは、“ミトコンドリアDNAのND6領域のG13997Aと13885insC変異が活性酸素産生の増加をもたらし、それがHIF1αの活性化を通して、癌細胞に強い転移能を与えている”との報告をしています。転移能自身は直接的な癌化ではありませんが、癌の悪性化にミトコンドリアDNAの変異が重要な役割を果たしうることをはっきり示しています。日本医大の太田らは癌細胞の増殖能を増すような変異を報告しています。今後、癌化そのものにも関係している例が報告されるかもしれないと思われます。
将来、ミトコンドリアDNAの配列決定が次世代シークエンサーなどで、短時間に行われるようになると、周囲の正常組織とのミトコンドリアDNA配列の比較は、有力な癌診断検査になる可能性が大いにあると期待しています。
■検査の充実を目指して その14■     検査部技師長 栢森 裕三

臨床検査の自動化と第23回日本臨床検査自動化学会 
                  春季セミナー in 宇部  学会見聞録 

 夏の強烈な日差しが見え隠れする梅雨末期の気候は特に蒸し暑く、降ってくる雨も梅雨前線と太平洋高気圧のせめぎ合う汗のように感じられます。

 さて、今号の「検査の充実をめざして」は4月4日にメインテーマ「活躍する臨床検査」として、山口県宇部市で開催された第23回日本臨床検査自動化学会 春季セミナーについて述べることにします。

 第23回目を迎えた春季セミナーは、本会である日本臨床検査自動化学会が毎年、東京や大阪近辺 (近年は横浜と神戸が主開催地区) で開催されるのに対して、地方の啓蒙や卒後教育の意味もあって開催されてきました。この本会は今年で第41回を迎えますが、年々参加者数が増加し、近年では3000名近くを数えています。
 この学会の歴史は前身であるオートアナライザー研究会 (1961年)、その後の改称を経た臨床化学自動分析研究会 (1965年) 、臨床検査自動化研究会 (1969年) と団体名を改変し、発展的に継続開催されてきました。
 将にこの本会の歴史は日本の臨床検査自動化の歴史そのものであり、学会発表の内容と付属する機器展示は、その時代の臨床検査自動化の話題と検査に利用される自動分析装置の流行を顕著に現しています。
 検査の自動化は、「臨床化学自動分析研究会」を経ていることから分かるように臨床化学分野で先行していました。その前身であるオートアナライザー研究会のオートアナライザーとは、「自動分析装置 (auto analyzer)」とお考えの方々は多いかと思いますが、実はアメリカのTechnicon社が開発した連続流れ方式 (continuous flow) の単項目分析装置 Auto AnalyzerTM から名付けられています。
 この装置は1960年代に日本に輸入され、その後20項目を同時に測定することのできるcontinuous flowの集大成装置であるSMAC (sequential multiple analyzer plus computer) が開発されました。当検査部でも利用していましたので諸先輩の皆さんは記憶があろうかと思います。しかし、今や血液検査、免疫検査、凝固検査、細菌検査、輸血検査、そして尿一般検査というようにすべての臨床検査に及んでいます。

 さて、前置きはこれくらいにして「活躍する臨床検査」について述べることにします。

 特別講演1題 (「がんの分子機構と臨床検査」)、シンポジウム2題 (テーマ「検査値標準化の果たす役割」、「患者と向き合う臨床検査技師 -その苦労とやりがい-」)、機器・試薬セミナー15題から構成されていました。
この中のシンポジウムⅠ「検査値標準化の果たす役割」では、検査データの標準化を達成するための現状と問題点が発表されました。その概要は以下の通りです。
 ① 施設を越えた臨床検査データの互換性を確保するためのトレーサビリティーの理論的な根拠
 ② 臨床検査データの許容される測定値とその理論的背景
 ③ 施設間・地域間で共有することのできる基準範囲の条件
 ④ 臨床検査データ標準化活動の現状
 ⑤ 特定健診における検査データのデータベース化の現状と問題点について
 ⑥ がんスクリーニングの費用効果分析と臨床経済性からの評価

 今回のシンポジウムで、臨床検査データ標準化には新たな問題点や課題があることが分かりました。それはこの⑤に関することです。つまり、保険者からの臨床検査データを共通の尺度として比較し、データベース化するためには①から④のようなデータそのものの標準化のほかに、保険者から報告され蓄積するためのデータの受け渡しに関わるようなファイルの形式等の標準化も必要であることです。特定健診のみならず、医療機関において広まりつつある電子カルテ化を考えた場合には大変重要な問題提起であったと思います。
 何気なく普段利用している医療情報システムでも、部門システム間の形式が異なると接続性に大きなコストも発生します。これは情報を受け渡すファイル形式やシステム間の接続性等が標準化されていないことに起因するようです。
 臨床検査データと同様に利便性を高めるためにデータベース化の「標準化」が必要なのだと感じたシンポジウムでした。
 このシステムの「標準化」の興味は高まりますが、次年度の第24回春季セミナーでは当検査部の康部長が大会長としてこの医療の、そして臨床検査のシステム接続性の課題について取り上げる予定にしています。
■鉄分検査室■   
しろいかもめ

第22回 《光のショー》       

門司港地区は近年<門司港レトロ地区>として独特の佇まいの人気の観光地となっている。この地区に新たな観光資源のトロッコ列車が4月26日誕生した。
 それは、平成筑豊鉄道門司港レトロ観光線(やまぎんレトロライン)の開業である。

 鹿児島本線始点の門司港駅は、関門トンネル開通前までは、関門連絡船が発着する駅で、九州と本州を連絡する九州の玄関口として栄えた。
 起源は、九州鉄道の<門司駅>である。明治24年(1891)4月1日に開業した。現在の駅舎は、大正3年(1914)に2代目駅舎として建てられたもので、<門司港レトロ地区>の象徴的な存在となっている。ネオ・ルネッサンス様式の木造駅舎で、駅舎としては初めて重要文化財に指定されている。
 戦前建築の近代産業遺産として貴重な駅舎である近年の駅舎は、木造で作られることが殆どなくなり、木造の質感を味わえる数少ない駅舎の一つである。因みに九州内最古の木造駅舎は明治36年(1903)1月15日開業の肥薩線の嘉例川駅大隅横川駅である。機会があれば一度訪れる価値のある駅舎である。
 蒸気機関車時代は、鉄道乗車は炭で顔が汚れるものであった。このため主要駅には、乗降客向けの洗顔・手洗い用の設備があったが、そうしたものも門司港駅構内で目にすることができる。
 また、気をつけて構内を見回すと、かつての関門連絡船連絡通路の出入り口を発見することができる。関門連絡船は、関門トンネルの開通で廃止になったとつい思いがちだが戦後も運行を続けていた。
 関門トンネルは戦中の昭和17年(1942)7月1日に開業したが、それに先立ち同年4月1日から、<門司駅>から現在名の門司港駅に改称となった。関門トンネル開通で九州の玄関の駅が移ったためのもので、<大里駅>が改称して現在の門司駅となった。
 鉄道トンネルに遅れて昭和33年(1958)3月9日に関門国道トンネルが開通し、これがきっかけとなって、昭和39年(1964)
11月1日に関門連絡船は廃止となった。
  交通の変遷で都市の盛衰が起こる例でもある。

この門司港駅からするすると貨物線の臨港線がかつて海峡沿い田浦港に伸びていた。貨物列車の運用も休止となった後、レールだけが赤くさびたまま取り残された。残されたレールを利用して運行を始めたのが、平成筑豊鉄道門司港レトロ観光線(やまぎんレトロライン)である。
 始発駅は、門司港駅そばの九州鉄道記念館駅。門司港駅に隣接した地に赤煉瓦の建物が目に入るが、これが九州鉄道記念館である。もとは、九州鉄道本社社屋であり、九州の鉄道史にとって貴重な建物が内部を改装されて九州鉄道記念館として蘇ったものである。道理で門司港駅に近いはず!
 トロッコ列車<潮風号>は、九州鉄道記念館を出発するとトコトコと門司港レトロ地区を走り、出光美術館前駅、ノーフォーク広場(レストラン「ら・むゑっと」入口)駅と走りぬけ関門橋の下をトンネルで抜けて約2.1kmの終点の関門海峡めかり駅に到着する。
 トロッコ列車は各地に走っているものの、海峡の景観を見られるトロッコ列車はもちろ国内ではここのみ。関門海峡の景観を愛でるばかりではなく、トンネルに入ると別の仕掛けも用意してある。トロッコ客車天井には、海峡に生息する魚やイカやタコの魚拓が描かれている。トンネルに入るとその魚拓が闇の中で光り出し、幻想的な光景を展開する。
 トロッコ車両は2両で、前後に2両のディーゼル機関車が挟むような編成でプッシュプル運行を行っている。ここで鉄分高値な人の活動電位が高まるのがこの車両群である。ディーゼル機関車は、南阿蘇鉄道のトロッコ列車を引っ張っていた機関車である。また、トロッコ客車は、昨年4月1日廃止となった島原鉄道南目線島原外港・加津佐間に伴って廃止になった<島鉄ハッピートレイン観光トロッコ列車>の客車である。
 終点の関門海峡めかり駅は、和布刈公園に隣接している。この公園に銀色の車体のEF30 1号機関車が静態保存されてる。山陽本線側は直流電化されたが、鹿児島本線は交流電化されたため、関門トンネル用に交直両様電気機関車としてEF30型が開発された。1号機がその試作車で、2号機以降が量産車として製造された。世界初の量産交直両様機関車である。
 関門海峡めかり駅正面には、海峡越しに火の山が望める。駅から少し歩くと関門トンネル人道門司側出入り口がある。トロッコ列車乗車後は、この人道で下関を回り、海響館見物をし、関門渡船で門司に戻ってくる経路がお勧め。人道トンネルの途中には福岡県と山口県の県境も印されてあり、誰でも思わず県境に跨いで立ってみたくなるものである。面白いことに人道トンネル内でジョギングしている人も見かける。なるほど天候にかかわらずジョギングを楽しめるという次第。福博からの夏休みの日帰りの行楽候補にお勧めである。
 なお、トロッコ列車は指定席が発売されていて、事前に指定券入手しておくことを!!

 
☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆ 

7月22日は皆既日食であった。この皆既食帯は、インドを横断し、ブータン、成都、重慶、武漢、上海を通って、東シナ海
にはいり、トカラ列島を通ってマーシャル諸島からキリバスにたっするものであった。
福岡は皆既食帯の北に位置し、最大食分は、0.987の見かけ上細い太陽を目にすることができた。
皆既食を見るには国内であれば、トカラ列島や屋久島、種子島南端、奄美大島北部ないしはその洋上にいかなければ見られなかった。ところがこうした島各への便が物理的に限りがあり、限られた人数しか入島できなかった。上海も皆既食帯が通っていたため、かえって空路上海に飛ぶ方が行きやすかったかもしれない。
生活しているところで皆既日食を見られるのはなかなか確率論的には可能性が少なく、皆既日食を見たい天文ファンは世界中に出かけている。皆既日食のときにだけ見られるのが、コロナである。こういう天文現象が見られるのは、地球から見て見かけの太陽の大きさと月の大きさがほぼ同じくらいという偶然に寄っている。ただし地球の公転面と月の公転面が同一の平面にないため両者が新月の時にぴたりと重なることはたまにしか起こらない。その時、月の見かけの大きさが太陽の見かけの大きさを上回っていると皆既日食となるが、逆の場合は、月が太陽を隠しきれず金環日食となる。
今回の皆既日食を、部分日食で見られた方も、金環日食を3年後に見られる機会がある。 平成24年(2012)5月21日に金環日食が見られる。この金環食帯は、九州南部を通り、四国南部、紀伊半島、東海、関東を通り抜ける。日本列島の人口稠密地帯を通る絶好の金環食である。東京では金環日食が5分4秒間継続する。福博は、金環食帯の北に位置し、またしても部分食となる!!しかしながら、この金環日食帯は、地べたを這って行けるところを走っているため、陸路で行きやすい。

現在博多駅ビル工事が佳境を迎え、何本もの大型クレーンが組み上がりつつある鉄骨の上に林立している。
平成23年(2011)春の九州新幹線博多乗り入れに備えて新博多駅ビルが次第に姿を現し始めている。九州新幹線ホームの床面も姿を見せている。
長崎本線を跨いだ交叉地点には、新鳥栖駅(仮称)が外観を見せ始めてもいる。久留米や熊本でも新幹線乗り入れに向けて大変身中で、新幹線を当て込んで駅前開発も進行中である。
当日の天候にもよるが、福博からは南下するのが最も便がいいのだが、場合によっては東へ向かい紀伊半島や東海、関東方面に快晴域を求めて移動も考えられる。
この金環日食は、九州新幹線全通後に起こるため、新幹線を利用して南下し、金環日食を見に行く客がかなりでそうである。

 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆ 
 
さて、昨年末の大きな話題の一つは、日本人のノーベル賞受賞者が一度に複数出たことである。中でも医学生物関係ではgreen fluorescent protein GFPが大きな話題となった。
GFPは、現在の生命科学関係ではなくてはならない道具となっている。高範囲にGFPは利用されている。発光生物からの大きな贈り物である。そのGFPの同定を行った下村脩博士がノーベル賞を受賞した。
佐世保駅前の通りの少し小高い所に三浦町カトリック教会という昭和6年(1931)建立のゴシック様式の教会が建っている。佐世保駅前は近年高層マンションが林立しているが、少し前までは高層の建物は少なく、この教会は駅前の目印になっていた。この教会に幼稚園が併設されていて、ノーベル賞受賞後お祝いの幕が掲げられた。というのも下村脩博士がこの幼稚園の卒園者であったからである。
GFPの研究は、戦後アメリカ留学の多くの人々が乗船した氷川丸の最後の航海で渡米した先で行ったもので、東海岸のAequorea victoriaオワンクラゲの発光器を大量に集め抽出に成功した。
受賞直後オワンクラゲを展示していた山形県鶴岡市賀茂水族館が注目を浴びた。近年巨大水槽の開発で大型水族館が全国各地に点在しているが、クラゲの展示は脚光をそれほど浴びるものではなかった。一気に注目の的となり入館者急増の由。
西海国立公園九十九島水族館<海きらら>が、7月18日開館した。下村脩博士が佐世保にも所縁があることからクラゲが展示の目玉の一つとなっている。九十九島海域には約100種のクラゲが生息しているが展示しているクラゲは10数種。今後他のクラゲも展示していく予定である。
GFPで研究、検査、臨床に関与している方は、ぜひオワンクラゲへの表敬訪問をお願いしたい。


平成24年(2012)年5月21日  金環日食

■研究室の雑感 その4 ■ ―テニスの一考―    杏李

 この2週間はNHK深夜番組が熱い (6月22日~7月5日)。学生時代からこの2週間は寝不足が続く毎日であった。さらに雨が降ると映像は雨と緑の芝が永遠に続く。そう、この番組はウインブルドン選手権、「The championships」である。テニスの聖地ウインブルドンで開かれてすでに100年以上が過ぎた。
 日本人選手では今年はクルム伊達が推薦で出場した、13年前1996年のシュテフィ グラフとの死闘は昨日のことのように思われる。女子単準決勝 伊達リードで迎えた最終セット雨天延期となり翌日逆転を許して敗退。あのまま試合を続けていればどうなったか?見ている私たちも悔やまれる試合であった。しかし、天候も試合の一部なのだとつくづく考えさせられた試合でもあった。ウインブルドンで思い出されるのはビリー・キング夫人、クリスエバートとナブラチロアの死闘、沢村和子&アン清村の女子ダブルス優勝(1975年) 沢村和子さんは日本人女子初のテニス4大大会優勝者である。当時小学生だった私はこのニュースを聞いて興奮したことを思い出す。このころのウインブルドンの映像は私がテニスに興味をもつ一因になった。さらに、男子では松岡修三選手、ベスト8を決めた試合で勝利の瞬間、コートに寝そべり、涙している映像が印象的であった。

 話は変わるが、小学生のころ「エースをねらえ」のアニメがブームになっていた。ヒロイン岡ひろみが宗方コーチの厳しい指導に戸惑いながらも成長していく青春、スポ根アニメである。ライバルにはお蝶夫人(高校生がなぜ夫人なのかいまだにわからない?)、音羽京子、麗華、蘭子など多彩な人物がいた。そのおかげで当時中学校の部活の女子人気No.1はテニス部であった。中学に入り驚いたのは、テニスコートは一面しかないのに、部員が20名ぐらいいて、1年生はただボール拾いと素振りをするだけの部活であった。今では考えられない光景であるが、放課後なぜかテニスコートを教室の窓から眺めていた記憶がある(青春だな)。この光景が忘れられず、大学に入り私がテニスを始めた理由である。
 当時のテレビアニメはタイガーマスク、巨人の星などスポ根アニメが盛んであった。小学生のころ、少年野球に夢中であったが、炎天下の日中一滴も水を飲まずに練習をしていたことが思い出される。今では非常識な「根性論」がまかり通っていた時代である。これで倒れる人がでなかったのが不思議なくらいである。きつい練習の後帰宅し突然血尿がでて、慌てふためいた思い出がある。明らかな赤い尿であった。病院にいき、温厚な医者に診てもらい「大したことはないよ」と言われたのが思い出される。診断は今にして思えば、たぶん特発性腎出血であろう、激しい運動の後などにみられる。この出来事は私が医者になるきっかけになった遠因であるとは言えなかった。

 趣味の一つに将棋鑑賞がある。テニスは一対一の戦いである、ネットを挟み、お互いの心理戦が延々とつづく。将棋は将棋盤を挟み、駒を動かしながら対戦する。
ここで羽生四冠(現在名人、棋聖、王将、王座)の著書から一節

「テニスはトータルのゲームでポイントで勝っても、試合に負けることがある。サービスゲームを交互に したり、一人で流れを変える努力をするのもすごく将棋に似ているし、役に立つ。それに実力差がないときに、どうやって差をつけるかも似ている。将棋の世界でもトップの棋士たちの実力差はほとんどない。その、ない差をどうやってつけていくのか一番大きな、みんなが考えている課題である。その微差のなかに、勝負の恐ろしさ、面白さ、そして奥深さが秘められているのだ。」   
                        『決断力』 著 羽生善治

 テニスの試合をして思うことは、テニスに必要なものは体力、気力はもちろん重要だが、実力差がない時に必要なのは心理戦かなと思うときがある。将棋もテニスも1対1の戦いであり、いろいろな駆け引きがなされる。心理戦を制しての戦いは非常に面白いものであると痛感している。
テニスの一考についてのお話でした。

■感染制御のために(16) ■     検査部助手  内田勇二郎

血液培養のススメ

細菌感染症の診断・治療において最も重要な検査とも言えるのが血液培養である。菌血症はいろいろな感染症で認められ、髄膜炎患者の50~80%、肺炎の5~30%、化膿性関節炎の20~70%、骨髄炎の30~50%で菌血症が起こると報告されている。また、腹腔内などの膿瘍がある場合、間欠的な菌血症がしばしば起こり、不明熱の原因の一つともなる。一方、血管内留置カテーテル関連感染症などの医原性に起こる菌血症の診断にも血液培養検査は重要である。

 九州大学病院における血液培養の提出検体数は2008年で4243件と10年前に比べて2.2倍増加しており、すべての検体に占める割合も8.4%から14.6%に増えている。この点では、血液培養の重要性が認識されてきているとして評価できる。しかし、アメリカの文献によっては、1000患者日数あたりの血液培養検体数は、103から188件としているものもある。当院の病床稼動率を88.5%(平成19年度)とした場合、2008年で10.3件/1000患者日数となり、まだまだ血液培養検査を提出する必要がありそうである。血液培養陽性率については、高過ぎたら検体の採取方法に問題があるし、低過ぎても採取する時期が悪いとも評価され、5~15%ぐらいが理想とされている。当院では、ここ10年間、約10%を推移しており適切に採取されていると思われる。

 血液培養から分離される菌を10年前と比べるとグラム陽性菌の比率は約60%強であまり変化していないが、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)の割合が11%から31%と増加している。皮膚常在菌であるため汚染菌として考えられやすいが、感染例も多くあり、特に血管内留置カテーテルを使用しているときや人工物を体内に入れているときなどその部位に定着し治療困難になるため注意が必要である。黄色ブドウ球菌の比率に変化はあまり認められないがその中に占めるMRSA率は50%から58%へ増加しており、しかも、MRSAが分離される株数は2倍近く増加している点は注目すべきであろう。グラム陰性菌については、基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌の増加に伴い、ESBL産生大腸菌が分離されるようになり、Enterobacter 属の割合も増加してる点から考えると耐性傾向の強いグラム陰性桿菌が血液から分離されるようになってきているとも考えられる。緑膿菌の分離頻度は変化ないが分離数は増えている。Candida 属については、分離率はやや下がっているものの2008年にはTrichosporon (Fungusに含む)が分離されている。Trichosporon 属は易感染宿主に発症する致死的な日和見感染症の起因真菌の一つであり、治療の難治化も推測される。

 繰り返しになるが、血液培養検査は細菌感染症の診断・治療に重要であり、検体提出数の点では低いことが考えられるため、感染症を鑑別する必要があるときはまず血液培養検査を考慮していただきたい。

【参考文献】
Cumitech 1C: Blood Culture Ⅳ、 2005、 ASM press
Jpn. J. Med. Mycol. 2003; 44: 181-186
表2. 血液培養からの分離菌比較
 
■新人紹介■
【研究室】
神吉 智丈  
 4月から検査部に戻ってきました。2005年10月に留学し、コロンビア大学、ミシガン大学と合計3年半過ごしてきました。その間に、研究テーマも変化していき、今ではミトコンドリアのオートファジー(mitophagy)の研究をしています。今後は、私が発見した新規mitophagy関連遺伝子ATG32を中心に、ミトコンドリアの質のコントロールが如何にして行われ、その制御が老化や神経変性疾患にどのように関わっているかを解明していく予定です。

佐方 功明  
 マウス個体を用いた行動学的解析、中枢神経系の組織切片を用いた免疫組織染色や電気生理学的解析など、遺伝子改変マウスの表現型解析に携わってきた。哺乳類中枢神経系に興味あり。趣味は手品と折り紙…らしい。
 
宮本 麗香  
 北里大学獣医畜産学部動物資源科学科 細胞分子機能学研究室に所属していました。大学では乳酸菌による牛ウイルス性下痢・粘膜病ウイルス感染抑制効果について研究していました。宜しくお願いします。
 
中島 萌子  
 今年度4月から、テクニカルスタッフとして検査部でお世話になっております中嶋萌子と申します。マイトファジーの研究をしています。学生時代は生物学を専攻しておりました。今後ともどうぞよろしくお願い致します。

丸田 幸恵 
 5月から技術補佐員としてお世話になっております、丸田幸恵です。以前は耳鼻科外来でクラークをしていました。趣味は映画鑑賞と一年前から始めたヨガです。まだまだ失敗も多くご迷惑をお掛けすることがあると思いますが、よろしくお願いします。
【検査部(別府先進医療センター)】
阿部 有香里
 本年4月より別府の検査室で勤務しています。担当は一般検査と病理組織検査ですが、バックアップとして生理検査なども担当します。患者さんと接する機会が多いので笑顔を絶やさず適切な対応をするよう心がけています。趣味は料理、洗車、カラオケです。みんなでワイワイすることが大好きです。
まだまだ未熟なので、自信を持って正しいデータを出せるよう努力していきたいです。よろしくお願いします。

吉弘 苑子
 社会人としての第一歩を九州大学病院別府先進医療センターで踏み出し、先輩技師の方達に叱咤激励されながら内容の濃い日々を送らせてもらっています。主に血液の分野を担当しており、検査技師としての基本となる正確さと迅速さを自分のものにできるよう鍛錬していきます。まだまだ反省ばかりしていますが、一日一日を大切にして将来の自分に繋げていきたいと思っています。よろしくお願いします。
【検査部】
萩尾 渚
  九州大学医学部保健学科を卒業し、4月から検体検査部門でお世話になっています、萩尾渚です。4~5月は血液、6~7月は輸血、8月以降は化学とスーパーローテーション中で、覚えることが多く、毎日オーバーヒート状態です。お酒は弱くて全然飲めませんが、社会人になりましたので、これから徐々に慣らしていこうと思います。日々ご迷惑をおかけしていますが、要領の悪さは努力でカバーをモットーに頑張りますので御指導の程よろしくお願いします。

木部 泰志
今年の春に九州大学を卒業し、4月から化学・免疫部門でお世話になっています、木部泰志と申します。趣味は野球観戦で、ホークスについて一緒に語り合ってくれる方を募集中です。そして実は巨人ファンでもあるのですが、こちらは賛同してくれる方が少ないので巨人について語り合ってくれる方も大募集中です。また、見かけによらず食べることが好きで、かなり食べます。まだ慣れない部分も多くありますが、毎日の仕事を通して日々成長し、九州大学病院検査部の発展に貢献できるよう頑張りますのでよろしくお願い致します。

石垣 卓也
初めまして、現在、検査部化学部門で働いている石垣卓也です。最近、キーボードの練習を始めましたが、練習できるのが休日だけと、左手が全く動かないため、悪戦苦闘している状態です。検査の世界にはまだまだ慣れていないため、皆様に迷惑をかけることが多々あると思います。しかし、日々の業務、勉強などを積み重ね、一人前の技師になれるよう努力していきますのでよろしくお願い致します。目標は根拠を持ってきちんと説明していける、EBM(evidence based medicine)な技師です。

眞嵜 志津佳
初めまして。眞嵜志津佳と申します。九州大学の大学院を卒業し、4月から検体検査部門でお世話になっています。これといった趣味もなく、ごろごろしながら小説を読むのが好きなインドア派ですが、誰か外に連れ出してください。きちんとした知識、技術を身につけ、九州大学病院の掲げる『患者さんに満足され、医療人も満足する医療の提供ができる病院』の理念を体現できるような検査技師を目指していきたいと思います。どうぞ御指導の程、よろしくお願いします。

吉居 真由
今年、九州大学を卒業して4月から生理検査室でお世話になっています、吉居真由です。
辛い食べ物が大好きで、家にはタバスコと一味唐辛子が常備されています。激辛料理のおいしい店を知っている方、ぜひ教えてください。社会人になって3ヶ月経ちましたが、まだまだ日々の仕事では勉強することばかりです。今は周りの先輩方にご迷惑をおかけすることが多いのですが、これからたくさんのことを学んで成長していきたいと思いますので宜しくお願い致します。

■検査部からのお知らせ■
【外来検査室】

  新外来棟開院に伴い、外来検査室が新外来採血室の隣りに移転します。
  2009年9月24日(木)、25日(金)は移転準備のため、尿定性・尿沈渣検査をすることができません。
  9月28日(月)からの尿定性検査、便潜血検査の検体は新外来棟に提出してください。

 尿の定性検査・尿沈渣検査があるときは30mLほど提出してください
 尿沈渣検査には蓄尿は不適なので、早朝尿か随時尿で提出してください。
                                  連絡先 外来検査室(5742)
【外注検査のお知らせ】

 2009年7月1日より、新規項目の受託開始、採取容器の変更、および受託中止になる項目があります。

  新規項目
  1.銅(部分尿) 
   従来からの項目、銅(尿中)は蓄尿(単位:μg/day)でしたが、部分尿でもオーダー可能と
   なりました。これに伴い、銅(尿中)を銅(蓄尿)と名称を変更します。
     中分類:生化学尿検査
     単位:μg/dL
     採取容器:金属用Z(酸性洗浄スピッツ)

  2.ミトコンドリアAST(m‐AST)
    m-ASTはミトコンドリア膜に包まれているため、強い細胞障害や壊死を伴う場合に血中に認められます。
     中分類:生化学検査Ⅱ
     単位:U/L
     採取容器:茶栓分離剤入り試験管

  採取容器の変更
    HBV-DNA定量の採取容器がP3(紫ゴム栓9mL管)からP1(赤栓分離剤入り5mL管)に変更になりました。

  採取ラベルの変更
    グルカゴン、HANP、PTHrP採取ラベルの名称がSRLトラジDでしたが、試験管の表示が
  (D)2Naアプロチニンとなりましたので、SRLアプロDに変更します。名称は変わりますが、
   中身は同じものです。

受託中止項目
  ウイルス抗体検査の中に、2009年6月30日をもって受託中止となる項目がありますので、検査
通報でご確認ください。Doオーダーの際、エラーになりますので項目選択画面に戻って代替
項目を選択してください。また診療科セットにある場合は、2009年7月1日採血分より
代替項目(EIA法)に変更をお願いいたします。
                             連絡先 検体検査室受付(5771)
【化学・免疫血清検査室】

PIVKAⅡとKL-6 の測定機器を変更しました!

 即日、検査結果を報告出来るようになりました。
 また、PIVKAⅡはAFPと同じ採血管からの検査としましたので採血本数を減らすことができました。


 梅毒検査が変わりました!

  従来の梅毒定性はTPLA定性 + RPR定性を、梅毒定量はTPLA定量 + RPR定量を選んでください。
 TPLAは従来のTPHAより高感度であり、より早期の感染を捕らえることが出来るようになりました。
 但し、RPRは従来と抗体が異なるため、旧法と新法との陽性一致率は64%、陰性一致率は91%です。
 2009年4月1日前後の陽性患者様の時系列解釈にはご注意ください。

                                 連絡先 化学検査室(5756)
■編 集 後 記■      
2009年度がスタートして早3ヶ月が経ちました。みなさん、皆既日食はご覧になりましたか?日本中が騒然とした一日でした。業務中で日食を眺められなかった人も多いかと思います。さて、本年度も新人が多く、別府も含め検査技師7名、研究室には5名のフレッシュな顔ぶれが揃いました。新人のコメントにも意気込みが感じられ、また、多彩な趣味をもつ人ばかりです。「鉄は熱いうちに打て」ではないですが新人教育も初期の教育が非常に大事だと言われています。検査部一同で新人教育に努めていく所存です。研究室ではミドリムシ?じゃなくてミトコンドリアの研究をしています。非常に奥が深く、神秘的な細胞小器官です。ミトコンドリアを眺めてみたい人はいつでもお越しください。神秘の世界にご案内します。検査の標準化、データベースの標準化は急務の課題ですが、九大検査部は率先してこの問題に取り組んでいます。
 トロッコ列車に乗ったことはありますか?門司港駅は何度か訪れ、ノーフォーク広場まで足を延ばしたことがありますが、下から見る関門橋には圧倒された思い出があります。北九州市の姉妹都市ノーフォーク市(バージニア州)を訪れたことがありますが世界最大の海軍基地に圧倒され、ここからペリーが来たのかと思うと幕末に思いは巡ります。
 杏李さんはテニスと将棋が好きな様ですね。確かに昔は根性論がまかり通る時代でしたね。理論はさておきの時代です。今では逆に理論がまかり通る時代です。確かに精確な検査には理論、手順書が必要ですが、なんとなく書類が多くなった気がします。これも時代の流れですかね。                              
内海 健