6:血清と血漿 − その1
血清か血漿かどちらを測定するのか?
血液(全血)を凝固させ血小板や凝固因子を除いたものが血清 (serum) です。血清成分は凝固の諸因子が除かれており、血小板の細胞成分や代謝物が増加しています。一方、抗凝固剤入りの容器に採血した血液を遠心分離して細胞成分(赤血球、白血球、血小板)を除いたものが血漿 (plasma) です。血清を用いて測定した時と血漿を用いて測定した場合で、いくつかの検査項目では明らかに違いがでてきます。表1と図1にまとめておりますが、カリウム、無機リン酸、乳酸、アンモニアなどは血清が有意に高くなります。これは、血小板などの細胞成分に含まれているこれらの成分が凝固反応過程に血清中へ漏出するからです。
図2には、血清中と血漿中のカリウムの差(血清中が高い)が血液中の血小板数に比例している結果を示します。酸性ホスファターゼ、ニューロン特異性エノラーゼ、ドーパミンやセロトニンなど血小板に多く含まれている項目は血清では正しく測定できません。
血清 (serum) と血漿 (plasma) の違い
●凝固反応過程で消費されるもの:フィブリノーゲン、血小板、グルコース
●凝固反応過程で細胞から遊離してくるもの:カリウム、乳酸脱水素酵素(LDH)、無機リン酸、アンモニア、乳酸
●  抗凝固剤が測定を阻害するものや抗凝固剤からの混入:γ-GTP、リチウム(炎光分光光度計で定量した場合)
●測定方法が原因で差がでるもの
●フィブリノーゲンが原因となるもの:免疫反応
血漿が血清より都合がよい点
●測定までの時間の節約:凝血する(通常、室温で30分間)まで待たずに遠心することで直ちに検体を得ることができる。
●検体の収量が増える:血漿の方が血清より約15ー20%多く検体を取れる。
●血清だと血清分離後に凝固反応が続いている場合がある。
●血漿の方がより生体内の状態を反映している。
●溶血や血小板が壊れている程度が少ない:健常人で血漿の遊離ヘモグロビン濃度は血清の約10分の1であり、血漿では血小板の破壊が原因の異常な高カリウム値を得ることはない(血清では偽高カリウム血症がでることがある)。
血漿が血清よりも不都合な点
●蛋白質の電気泳動分画像が変化する。フィブリノゲンがγ-グロブリン領域にピークを形成しM-蛋白血症の診断を紛らわしくする。
●抗凝固剤が測定の障害になることがある:抗凝固剤はキレート剤である種(アルカリフォスファターゼなど)の酵素活性を阻害する場合があるし、又、幾つかの測定法を阻害することがある。それ故に、用いる測定方法に対する抗凝固剤の影響を調べておく必要がある(EDTA、クエン酸、ヘパリンの影響など)。
陽イオンの混入:ヘパリンはリチウム塩やアンモニウム塩としても市販されているので、このようなヘパリン塩中へ採血した血漿はリチウムやアンモニウム測定に適していない。