九州大学皮膚科学教室 ムラージュコレクション

先天梅毒

43.

現在の病名
せんてんばいどく
先天梅毒
Congenital syphilis
2450_7311

 乳児の胸であろうか。紅い大きな浸潤を伴う局面を認める。先天梅毒の皮疹を診ることは現在では皆無に等しい。そのような意味でこの精巧にできあがっているムラージュはきわめて重要である。この乳児は梅毒に感染している母親の子宮内で感染したのである。我が国に梅毒が伝播したのは1500年代初期とされる。梅毒は江戸から明治時代に大流行した後、第2次世界大戦後に再流行した。1950年では10万人当たりの年間罹患率は91であったが、1997年には0.4に激減している。しかし、近年、再興の兆しがある。フレミングによって1929年に発見されたペニシリンは、1942年よりベンジルペニシリンとして実用化されたが、梅毒にもきわめて効果が高い。ペニシリンに代表される抗生物質の開発によって、現在では梅毒を早期に治療することが可能である。ラベルのLuesとはドイツ語で梅毒のことである。

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