九州大学皮膚科学教室 ムラージュコレクション

先天梅毒

53.

現在の病名
せんてんばいどく
先天梅毒
Congenital syphilis
2654_7218

 乳児の腹部であろうか。静脈が怒張してくっきりと観察される。先天梅毒によって肝臓や脾臓の腫大が生じ、門脈圧が亢進するために腹壁の静脈が怒張しているものと推測する。この乳児は梅毒に感染している母親の子宮内で感染したのである。我が国に梅毒が伝播したのは1500年代初期とされる。梅毒は江戸から明治時代に大流行した後、第2次世界大戦後に再流行した。1950年では10万人当たりの年間罹患率は91であったが、1997年には0.4に激減している。しかし、近年、再興の兆しがある。フレミングによって1929年に発見されたペニシリンは、1942年よりベンジルペニシリンとして実用化されたが、梅毒にもきわめて効果が高い。ペニシリンに代表される抗生物質の開発によって、現在では梅毒を早期に治療することが可能である。ラベルのLuesとはドイツ語で梅毒のことである。

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