【国立病院機構大牟田病院神経筋センターの紹介】

(国立病院機構大牟田病院 神経筋センター長 藤井 直樹)

  国立病院機構大牟田病院神経内科は、入院の対象疾患を神経難病と認知症関連疾患および筋ジストロフィーにほぼ限定しています。
 最近のトピックは、2011年11月に当院が福岡県認知症医療センターに指定されたことです。これに伴いスタッフの充実を図ることができるようになり、認知症に関する診療と研究の飛躍が期待されます。
診療、研究、研修の面に分け紹介します。

1.診療
 常勤医師は神経内科医7名(神経学会専門医5名、うち2名は認知症学会専門医)。病床数は、「神経難病」病棟(障害者施設等入院基本料10:1)が3病棟100床、「筋ジストロフィー」病棟(障害者自立支援法に基づく療養介護病棟)が2病棟80床、計180床です。日本神経学会認定施設、日本認知症学会教育施設となっています。
 今般の高齢者人口の増加に伴い認知症患者数も増加傾向にあり、認知症診療の重要性が指摘されています。そのような中、神経内科医が認知症診療にもっと積極的にかかわる必要性があると考えています。九大病院が早くから認知症診療の重要性に注目し、神経内科と精神科が共同して診療体制を構築し、2009年福岡市(政令市)の認知症疾患医療センターとなられたのは誠に吉良教授の慧眼であったと思います。我々も2006年から物忘れ外来を始め、徐々に認知症診療に力を入れてきていました。福岡県から認知症疾患医療センター開設の募集があり、応募したところ2011年11月指定5施設の一つに選ばれ、南筑後地区を担当することになりました。2012年4月現在、全国に認知症疾患医療センター(福岡県のみ「認知症医療センター」と称す)が175ヶ所指定されています。基幹型センターは5ヶ所のみで、その他は地域型のものです。地域型の9割以上は精神科単科の病院がセンターとなっており、当院のように常勤の精神科医がおらず神経内科主体で運営するセンターは非常に珍しい形態となっています。運営面の至難さが危惧される一方、神経内科主導の認知症診療・ケアに取り組めると考え、やりがいのあることでもあると気をひきしめています。認知症学会専門医2名、臨床心理士2名、精神保健福祉士1名を擁し地域の認知症診療・ケアの要となり、認知症患者・家族の安全・安心に寄与し、また医療機関・介護施設の認知症対応能力のレベルアップに寄与したいと考えています。
 神経難病の診療に関しては、従来通り診断、治療方針の決定、短期リハビリ、レスパイトのほか、特定疾患患者の長期療養目的での入院を引き受けています。また死亡例についてはできる限り剖検を行う方針としており、九州大学神経病理学教室の協力を得ながら剖検を実施しています。2011年、1年間の剖検数は10例(ALS 3例、MSA 2例、レビー小体型認知症1例、パーキンソン病1例、HAM1例、筋ジストロフィー1例、静脈洞血栓症1例)でした。
 筋ジストロフィー病棟は県下唯一の専門病棟として、福岡県全域および佐賀県から筋ジストロフィー各病型の方が常時70名近く入院しておられます。2つある病棟はともに障害者自立支援法下での重症患者の長期入所施設としての療養介護病棟であります。最近では鼻マスク式の非侵襲的人工呼吸器を装着される方が増え、当院の筋ジストロフィー病棟入院患者中すでに半数以上の方が何らかの形で人工呼吸器を使用されています。一方、在宅療養をされている筋ジストロフィーの患者も多くおられるため、そのような方のために病状評価目的、呼吸器導入目的、レスパイト目的での短期の入院(筋ジス・ポートサービス)をひきうけています。また筋生検・遺伝子検査を含めた診断目的のための入院も行っています。

2.研究
 ベッドサイドの診療に根ざした臨床研究を重要なものと考え、これに積極的に取り組むようにしています。上記のような当科の特性から、対象を神経難病、認知症疾患および筋ジストロフィーに限定した臨床研究を行っています。現在、厚生労働科研費補助金班研究の研究班(「スモンに関する調査研究班」「重症薬疹研究班」)に所属し臨床研究を行っています。また臨床研究部では、分子遺伝学的リサーチを中心に、実地臨床に根ざした臨床研究を推進しています。

3.研修
 当院神経内科では後期臨床研修医を目指す医師を対象に「神経内科専門医コース」のプログラム(詳しくは当院のホームページ参照)を用意し、受け入れ体制を整えています。
 また本年より、福岡県認知症医療センターの仕事として、医師向けの研修会、介護・行政関係者向けの研修会や事例検討会、一般大衆向けの認知症啓発プログラムなどを主催するようになりました。

「国立病院機構大牟田病院」ホームページアドレス:
http://www.omuta-hp.jp/