【入局後の主な進路(平成21年6月版)  神経内科教授 吉良潤一】

 はじめに

   神経内科への入局後の進路の例を具体的に示します。これらは、あくまでも一例であって、入局してから適宜考えてもらってよいです。このような進路の希望ということは当初から言ってもらってもいいですし、入局後に変更してもらってもかまいません。進路や研究の分野は、当医局では本人の自由にさせております。質問のある方は遠慮なく医局長まで問い合わせてください。勤務先の病院の希望については、各病院の待遇・指導者・研修の状況などの資料を提供したうえで希望を聞いています(だいたい第1から第3希望までの病院に勤務できるよう配慮しています、女性医師については夫の勤務地などを配慮するようにしております)。


 (1)神経内科の臨床を幅広く総合的に行なう医師を目指したい場合:

 1) 総合神経内科医(General Neurologist)
  入局1年目は九大神経内科で医員の立場で病棟医をします。病棟主治医として患者を受け持ち、神経内科診察、診断の考え方、治療、一般的な検査などを、研修を通して学びます。さらに、スタッフの外来診療に付いて、神経内科疾患の外来診療についても学びます。この間に、脳波、針筋電図、末梢神経伝導検査、各種大脳誘発電位検査、頚部エコー検査などをローテートして検査手技を学びます。筋生検や末梢神経生検なども経験します。また、1年目に2ヵ月間、関連病院の国立病院機構大牟田病院神経内科で筋ジストロフィー病棟・神経難病病棟に勤務し、大学病院や急性期病院ではあまり経験できない筋ジストロフィー症や神経筋難病の療養について研修します。
  入局2年目、3年目は、急性期病院・総合病院の神経内科でレジデントまたは常勤医の立場で、脳卒中をはじめとする急性期神経内科疾患の診療を主に病棟医として学びます。また、外来にも主治医・担当医として出て、神経内科外来診療についての経験を積みます。
  4年目以降は、臨床神経内科医としての勤務を継続したい場合は、できるだけ希望の関連病院で神経内科常勤医として勤務し、外来・病棟での臨床の研鑽を積みます。卒後6年をすぎると日本神経学会認定神経内科専門医試験の受験が可能になります。大学病院でさらに一定期間学びたい場合は、大学院生、研究生、医員などの立場で可能です。総合神経内科医をめざしたい場合でも、自分の希望する分野での研究を一時期行うことは可能です(総合的な臨床医になる場合でも、長い目で見ると研究の経験は、臨床の新しい論文を読んで新知見を科学的に評価して吸収する際などに有用です)。
  神経内科専門医となってからは、希望する関連病院の神経内科で常勤のスタッフとして勤務します。経験により医長、部長などになります。また、その後に開業して成功している同門の先輩医師もたくさんいます。


 (2)神経内科臨床のなかでもより専門的な分野に取り組みたい場合:

 神経内科の臨床は幅が広いので、その中でより専門的な分野に取り組みたいという場合には、例として以下のような専門家への道があります。これらは入局後に選択可能です。本人の希望の通りにさせております。  

 2) 脳卒中専門神経内科医(Stroke Neurologist)

 入局1年目は総合神経内科医コースと同じです。2年目、3年目は、主に急性期病院の神経内科でレジデントまたは常勤医の立場で、脳卒中をはじめとする神経内科救急診療について病棟医として学びます。3年目または4年目に、希望により国立循環器病センター内科脳血管部門(レジデントの採用試験があります)で脳卒中先般について研修(3年間)。この間に、神経内科専門医試験、脳卒中学会専門医試験を受けます。その後は、さらに脳血管内外科専門医資格の取得をめざす場合は、小倉記念病院脳神経外科、湘南鎌倉病院脳卒中科などに2年間ほど出向し、ステント留置、動脈瘤のコイリングなどの経験を積みます。
  これらの専門医資格を取得し、関連病院脳卒中センター神経内科で常勤医として勤務します。これには済生会福岡総合病院、福岡市民病院、飯塚病院などがあります。このような病院では神経内科医だけで6〜7名いますので、協力してレベルの高い神経内科急性期医療を実践できます。この間の臨床研究で学位を取得することも可能ですし、大学病院には大学院生、研究生、医員、教員として勤務し、脳卒中に関わる臨床・研究に従事することも可能です。

 

 3) 認知症専門神経内科医

 入局1〜3年目は総合神経内科医コースと同様です(関連病院では、九州労災病院神経内科など認知症診療や高次脳機能検査とリハビリテーションに実績の高い病院での研修が可能です)。
 入局3、4年目には大学病院に医員として勤務し、神経内科・精神科で共同で行なっている脳の健康クリニック(認知症外来)で、認知症患者の早期診断と治療を学びます。また大学院に進学し、神経内科学教室の神経性化学研究グループ(指導者は大八木保政准教授)でのアルツハイマー病の基礎研究や、臨床神経生理学教室(指導者は飛松省三教授)での脳機能研究に取り組みます。大学院在学中に、神経内科専門医、認知症専門医資格を受験します。大学院卒業時には、医学博士号とともに専門医資格の取得が可能です。
 その後は、研究を志向する場合は、大学で教員、医員、学術研究員などの立場で、臨床と研究を続け、さらに希望により海外に留学することになります。また、臨床を志向する場合は、大学病院の脳の健康クリニックや関連病院での認知症診療に従事することになります。

 

4) てんかん専門神経内科医(Epilepsy Neurologist)

 入局1〜3年目は総合神経内科医コースと同様です。入局3、4年目には大学病院に医員として勤務し、九大病院ブレインセンターでの様々な臨床神経生理学的検査を行うことで経験を深めていきます。併せて大学院に進学し、神経内科のてんかん研究グループ(指導者は重藤寛史講師)に入って、実験てんかん研究または脳磁図などを用いた臨床てんかん研究を行います。並行して神経内科のてんかん専門外来で主治医としててんかん患者の診療経験を積みます。大学院在学中に、神経内科専門医、てんかん専門医資格を受験します。大学院卒業時には、医学博士号とともに専門医資格の取得が可能です。
 その後は、研究を志向する場合は、大学で教員、医員、学術研究員などの立場で、臨床と研究を続け、さらに希望により海外に留学することになります。また、臨床を志向する場合は、大学病院や関連病院で主にてんかん診療に従事することになります。

 

5) 神経難病専門神経内科医

 入局1〜3年目は総合神経内科医コースと同様です。入局4年目には、大学病院の福岡県重症神経難病ネットワークの担当医師として、あるいは関連病院神経内科のうち、主に神経筋難病病棟や神経難病センターを運用している病院(国立病院機構大牟田病院、福岡市の栄光病院や村上華林堂病院など)で、常勤医として神経難病の治療とケアにあたります。もちろん、(3)に述べる大学院に進学しての研究に入局3、4年目に進むこともできます。大学院を終えてから神経難病を専門として治療とケアをめざす進路をとることも可能です。この間に神経内科専門医資格を取得することができます。さらに、関連病院で神経リハビリテーションを研修し、リハビリテーションでの専門医を目指すことも可能です。


 (3)神経内科疾患の研究に関心があり研究に取り組みたい場合:

6) 神経内科研究医(Research Neurologist)  

  研究を志向する場合でも、神経内科初期研修を一通り経験することは大切です。臨床の教室なので、神経疾患の臨床を全く知らないで研究をするのは、好ましくなく、神経内科疾患の臨床をある程度理解したうえで研究に取り組む方が、研究の意義の理解や研究への熱意といった面でより望ましいと考えています。このため、入局1年目は、大学病院での病棟医をする点は変わりません。ただ、初期研修中に大学病院の選択コースで神経内科を選択することができます(半年あるいは平成22年度の卒業生以降は1年間)。その分、早く大学病院での専門医研修を済ませることができます。神経内科を専門分野として医学部卒業時点で考えている方、特に研究に関心のある方は、初期研修中に神経内科をローテートし、より早くスタートした方が望ましいと考えます(より早く研究をスタートできるからです)。入局2年目は総合病院神経内科でレジデントまたは常勤医として幅広く神経内科臨床を経験します。
  入局3年目に大学院に進学します。九大の臨床大学院(神経内科学)が多いですが、他大学の基礎医学教室に進む場合もあります。また九大の臨床大学院(神経内科学)から、希望する大学や研究所に2年間ほど出向する場合もあります。これまでに、北海道医療大学、東北大学、東京大学、国立精神・神経センター神経研究所、京都大学、大阪大学、長崎大学などに行っております(本人の希望に任せています、現時点では、北海道医療大学、東北大学、大阪大学に行っております)。また、九大脳研の臨床神経生理学、神経病理学にも常時行っております。
  研究分野としては、当教室で行なわれている研究分野には、以下のようなものがあります。神経化学(Neurochemistry)、神経生物学(Neurobiology)、神経遺伝学(Neurogenetic)、神経免疫学(Neuroimmunology)、臨床神経生理学(Clinical Neurophysiology)、脳循環代謝学など。具体的な研究課題や研究の現状については、教室のホームページの他所(教授からの一言など)に詳しく書かれていますので、参考にしてください。九大神経内科では様々な分野の研究に取り組んでおり、脳研・ブレインセンターと連携したトランスレーショナルリサーチが可能です。広い分野のなかから希望する研究分野を選ぶことができます。なお、神経内科専門医試験は大学院在学中に受験し合格する場合が大部分です。学位と専門医資格と両方を大学院時代にあわせて取ることが可能です。院生の時期は、医局から非常勤医師の仕事を紹介し、生活に困らないようにしています(パートの勤務先はたくさんあります)。
  4年間の大学院終了後は、大学で教員、医員、学術研究員などの立場で、臨床と研究を続け、physician scientistあるいはclinical investigatorとして活動していきます。さらに希望により海外に留学することになります。その後は、主に大学での教員を続けながら、臨床と研究をしていくことになります。