【臨床研修必修化と医師としての成熟について (2003年12月15日)】

  平成16年度より臨床研修が必修化され、すべての医師は特定の医局に入局せずに医学部卒業後2年間の間に幅広く内科、外科、救急、産婦人科、小児科、精神科など臨床各科をローテートすることになります。幅広く臨床各科を学べることは基本的には大変よいことと思います。ただ1〜4ヵ月ごとに各科を回りますので、よほど研修する当人がしっかりしていないと、学生時代のベッドサイドティーチングやクリニカルクラークシップを2回繰り返してやっただけで、後に長く残ることはあまり身に付かなかったということになりかねません。研修先にどこの病院を選ぶかということも含めて、研修医当人の自己責任が強く問われる時代になったといえましょう。2年間の初期研修を終えた段階で研修医の間で実力に大きな差がつくといった事態になるやもしれません。

  私どもの時代は、神経内科の専門的な勉強を始める前に1年間で二つのメジャー内科を6ヵ月ごとに回りました。6ヵ月ありますと、なかなか新しい環境にスムースに慣れないタイプの人でもどうにかこなしてやっていけておりました。私は口下手で順応力も高いほうではありませんでしたので、これくらいのペースが丁度よかったです。各科で大きく診療のスタイルも医局の雰囲気も異なりますから、これからは1〜4ヵ月で新しい環境にすぐ順応して、次々と診療をこなしていくタイプでないと落ちこぼれてしまいかねません。 最近のベッドサイドに回ってくる医学生を見ますと、いつの時代でもそうなのかもしれませんが、10日間のローテート中にしっかり勉強するすぐれものから全くやる気のない昔の偏差値だけでやっているようなものまで様々です。医者に本当に適しているなと感じるタイプから全然向いていないタイプまで千差万別です。このような様々な医学部卒業生を臨床研修必修化のなかでもれなく育てていくのは難問といえます。

  神経内科は脳卒中のみならず、神経難病など根治的な治療法のない患者さんを多く抱えていますから、根が優しい人が神経内科には入ってほしいと思っています。心優しいタイプでしたら、口下手であっても時間をかけてトレーニングを積んでいけば、医師としてだんだんと成長します。うちの医局でも脳外科をローテート中に不適応になってうつになり、その後神経内科の研修過程で立ち直って、今では第一線の救急病院の神経内科医長としてなくてはならない存在として活躍している者がおります。コミュニケーションが不得手なもののなかには、短期間のローテートではうまく立ちゆかない人もいると思います。臨床研修の必修化に際しては、このような場合も含めて研修医の研修中の様々な問題に速やかにバックアップできる体制作りも不可欠です。入局はなくなっても責任医局のような形で個々の研修医をフォローしていけるシステムが現実的かもしれません。

  医師としての成熟過程は一様ではありませんし、時間をかけて成熟していく方もいるでしょう。医師は生涯学習であって、研修を一生続けていく姿勢が大切です。私どもの神経内科としては、いろいろなタイプの医師を受け入れ、ともに学んでいきたいと思っております。