【日本神経免疫学会を主催して(2005年3月22日)】

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写真1:全員懇親会でHauser教授のスピーチ

  2005年3月3日、4日と第17回日本神経免疫学会学術集会を九州大学医学部百年講堂で主催しました。3月5日にはエルガーラホールにて神経免疫疾患の最近の研究の進歩について市民公開講座を開きました。(写真1、写真2、写真3、写真4、写真5、写真6、写真7)
  日本神経免疫学会の学術集会は、これまで神経免疫班会議に引き続いて東京で行われてきたという経緯があります。このため、班会議の付属的な立場で長年経過し、単体の学会としての歴史が浅い面があり、学会としてのスタイルも十分には確立していませんでした。第15回を国立療養所川棚病院(当時)の澁谷院長先生が長崎で主催されたのが、東京以外で開かれたものとしては初めてですが、このときは国立精神・神経センターのCOE国際シンポジウムとの共催で、多数の外国人研究者の来日講演もあり、350名を越える参加者がありました。第16回は東京で神経免疫班会議に引き続いてありましたので、参加者も多かったのですが、今回は文字通り地方で神経免疫学会単独で開催する初めての学術集会でした。神経免疫学会は歴史も新しく、そんなに会員数も多いわけではありませんので、単独の地方開催で大勢の参加者があるか危ぶまれておりました。しかし、実際には110題にのぼる一般演題の応募があり、学会参加者も301名でした。演題数は過去最多で、100演題を越えたのは今回が初めてです。外国人研究者も3人の著名な研究者をお呼びすることができ、すばらしい講演をいただくことができました。参加者には大変好評でした。

写真2
写真2:Hauser教授の特別講演

  特別講演、モーニングセミナー、シンポジウム、パネルディスカッション、イブニングセミナー、ワークショップと様々な形式で学会らしい内容を盛り込みました。さらに、今回から日本神経免疫学会賞が設けられ、また若手に対してYoung Neuroimmunologist Awardが、症例報告に対してBest Case Study Awardが授与されました。教室からは、Young Neuroimmunologist Awardに小副川学君と留学生の孫暁嘉さんが選ばれました。小副川君は、多発性硬化症(MS)の2004年全国臨床疫学調査とMSの遺伝子多型(PAF およびPAF受容体)の2題が、孫さんは実験的自己免疫性脳脊髄炎のrho kinase inhibitorによる治療が選ばれました。両人ともども喜びを分かちあいたいと思います。このような学会での受賞が若手研究者の励みになることを祈ってやみません。いたらなかった点、反省すべき点も多々ありますが、当初意図したことについて一定の成功は得られたと思っています。


写真3
写真3:会長招宴にてHauser教授と

  今後、この方面の研究者が増え、学会として発展していくためには、臨床の方にもっと多く入っていただけるような学会にすることと、神経免疫学の新たな領域を切り拓いていくことが必要でしょう。臨床に関しては、現在、神経免疫疾患の治療法はもっとも研究開発が進展しつつあるところであり、さまざまな免疫療法が臨床に取り入れられつつあります。したがって、臨床の方に神経免疫学の最新の進歩をわかりやすく説明する教育セミナーを充実させていくことでより多くの方の参加が望めると思います。一方、新たな領域を開拓することも不可欠です。この意味で、神経変性・神経細胞死への免疫・炎症機転の関与をワークショップのテーマとして取り上げ、また九大大学院歯学研究院の中西博教授にミクログリアについて講演していただきました。

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写真4:全員懇親会で村井講師所属のオーケストラのメンバーによる演奏

  中枢神経系は、神経細胞(ニューロン) とグリア細胞により構成されていますが、ニューロン対グリアの比は、蛭では10対1、ネズミでは1対1、ヒトでは1対10と、脳が高度に進化するほどグリアの比率が高くなります。このことは、人間の高次の脳機能の発現にグリア細胞が不可欠であることを強く示唆しています。ミクログリアはグリアのなかでは、様々な免疫・炎症機能を担っているもので、骨髄から絶えず新生されているようです。アストログリアもニューロンの機能維持に不可欠であるばかりでなく、様々なサイトカイン・ケモカイン、成長因子の産生を介して免疫系と神経系をつなぐ働きがあります。グリアを研究テーマにした演題が多く寄せられたのも本学会の大きな特徴でした。今後、神経免疫学と神経生物学はグリアのバイオロジーを介してますます近接してくると思われます。現在、中西研究室で当教室の大学院生の山崎亮君がミクログリアの研究を行っており本学術集会でも、すばらしい研究成果を発表しました。今後、私たちの九大神経内科の神経免疫研究グループも、グリアを介した免疫系と神経系の相互作用、グリアとニューロンの相互作用の解析と、それらの異常による神経細胞死の研究に力をいれていきたいと考えています。

写真5
写真5:Barnett博士のランチョンセミナー

  また学会翌日の市民公開講座には約220名の市民の皆さんの参加があり、4時間以上にわたって講演と質疑応答がありました。神経免疫疾患というあまり一般になじみのない病気をテーマにとりあげましたので、出席者が少ないのではないかと心配していましたが、杞憂に終わりました。市民の皆さんの神経免疫疾患への関心の高さに驚いた次第です。
  全員懇親会では九州の酒、焼酎をたくさん用意し(これは酒に大変詳しい病院の事務の方がとてもおいしいものを用意してくれたのが大きかったです)、これも大変好評でした。従来、全員懇親会は出席率が低く盛り上がらないことが多いのですが、多くの方が最後まで参加してくれ終始とてもなごやかないい雰囲気でした。神経免疫領域の私の同世代は大酒飲みが多く、若いころから班会議や研究会での発表の後でいっしょによく飲んでおりました。この世代が全国で教授になって学会を活発に盛り上げているところです。持つべきものは各地の若いころからの酒飲み友達。
  最後に村井講師をはじめ学会の開催の裏方を務め学術集会を成功に導いてくれた教室員に深謝。

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写真6:会長招宴にて藤原先生とBarnett博士

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写真7:Kaminski教授のランチョンセミナー